表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/60

次の仕事(かなりうさんくさい)



 僕はエイト先輩に尋ねる。


「で、宅配便屋さんはなにを運ぶの? 覚醒剤アンフェタミン? ヘロイン? コカイン? LSD? 大麻マリファナ? 拳銃? 児童ポルノ? 偽札の原板? 死体?」


 放課後に生徒会に呼び出され、僕に名指しで仕事を頼みたいといわれたのだ、実際には紹介というか、仲介というか、エイト会長が僕にやってもらいたいことがあるわけではないらしい。


 どこかの誰かが荷物を運んでもらいたいとのこと。


 ゲームでいうところのお使い系のクエストということになるのだろうが、妙に報酬が高いところが不気味だ。


 一抱えもあるような巨大なトランクらしいが……戦艦島のどこかから別のどこかに運んで30万円って、いくら大きなトランクの運搬賃だとしてもありえない金額だろう。


「最初の5つは日本本土では違法だが、戦艦島ではそこらへんの薬局で普通に買える。拳銃は飼育委員会にもあるだろう。工場勤務なら作業着と安全靴が支給されるようなもんで、武器が必要な生徒には拳銃くらい支給される。エロいものならネットにいくらでも転がってるさ。戦艦島では生徒手帳や学生証や社員証に電子マネー機能がついてて現金はほとんど使えないから偽札なんて本当に紙屑でしかない。死体をもてあましているのなら事情も聞かずに買い取ってくれる研究所があるから、知りたかったら教えてやるよ」


「それなら中身はなんですか? 言えない系? やっぱり秘密ですよね、こういうとき」


「具体的な中身については、まあ、あんまり大きな声で言えないな。要するに秘密の資料一式といったところだ。コトの性質上、スマホで簡単登録みたいなアルバイト募集サイトで人手を集めるわけにはいかないし、生徒会のほうに信用できる生徒を紹介してもらいたいと声がかかったわけだ。ついでに言うと、トランクの運搬を頼まれているのはコンペ君だけじゃない。違う場所からスタートする何組かが同じトランクを任されて、それぞれ別々のゴールを目指すんだ」


 ということは本命は八島警備保障でも腕利きなんだけど外見が地味で目立たない奴の仕事になるわけで、どう考えてもコンペ君に振られた役割はダミーのトランクを運ぶだけの簡単なお仕事だろ、とエイト先輩は気軽なことを言う。


 しかし、それは同時に囮役デコイという意味でもあるはずだ。敵の目を本命からそらすため、いかにも本当の情報らしく僕の出発地点や運搬ルートについての詳細が漏れ出すはず。


 当然、敵は食いつく。偽情報かもと疑ったとしても、いちおう確認くらいはするだろう。僕が敵の立場でもそうする。特に相手が高校生なら殺すのも簡単だろうし、手間も時間もコストも大してかからないのだから。


 敵が追ってこなければ楽で稼げる最高のアルバイトなんだけど……考えれば考えるほと、その30万円という高額報酬がヤバそうな雰囲気だ。


「生徒会からコンペ君に名指しで出した依頼ってところをしっかり考えて前向きに検討してもらえたら助かるな」


 エイト先輩はジーッと僕の顔を見る。


 低価格なのにミミィも大満足の鶏頭水煮の存在を知った今、別に高額のアルバイトをする必要はかなり薄い。お金がそれほど必要ないとなると働くなんて面倒なこと、できれば避けたいのだけれど。


 別にニート志望というわけでもないが、特に防諜の仕事にそこまでやりがいを持っているわけではないのだ。


 そもそも、飼育委員になった経緯にしても自分で志願したわけでもないし、と思考が後ろ向きに流れていったのだが……意外と目力の強いエイト先輩の視線を浴びると、なかなか断るという選択肢は選びづらい。


 ふと、生徒会にも利益がある話ではないかと思いついた。


「その紹介相手の払う報酬が30万円なんですよね?」


「報奨金を稼ぎまくっているコンペ君にしても、半日ほどの仕事で確実に稼げるんだから、捕まえるチャンスがあるかどうかわからない手配犯を探して街中をうろつきまわるよりもいいんじゃないか?」


「で、エイト先輩が僕を指名したわけですが、その指名料がアルバイト代とは別に生徒会から出るとか、そういうことは?」


「半日で30万では不足で、さらに生徒会からも頂こう、と?」


 そう言ってエイト先輩は爆笑した。


 僕の想定では一番可能性が高いのが普通に断られる、二番が怒られる、最後が呆れられる。


 それ以外の反応があるとは思ってもみなかった。


 しかも、エイト先輩は片手を広げて見せた。


「プラス5万。そこがリミットだよ」


 相手のほうから断らせようとしたのに、これでは本当に受けるしかない。


 30万円の報酬でさえ働く気力が湧かないのに、それが35万円になったところで急に勤労少年として目覚めるわけがないのだが。


 しかし、あっさり5万円プラスになるということは、生徒会の紹介は有料で、それも結構な高額なのだろう。


 まさか紹介料の全額ということはないから、半分として10万円? ボッタクリ人材派遣ともいえるが、それだけの予算を組んででも確保したい人材がいるということで、当然仕事の難易度はかなり高いということだ。




 ますます、やる気がなくなるな。だけど、断る選択肢もない。やれやれ。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ