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お見舞いの品はトリ




 翌日は日の出とともに活動開始。


 いちおう僕には学校の授業がある。


 一方でルイの入院しているのは正月もお盆も夜も昼もないような研究所の施設だから、一般的な病院のように面会時間が決められているわけではない。


 夕方にしようとミミィと話し合う。


 そして授業後ルイの見舞いに向かったのだが、安くて喜ばれるお見舞いを探す必要はなくなった。


 2人で歩いていたら、急にミミィが前から歩いてきた男に飛びかかり、パクリと咥えてしまったのだ。


 驚いて、そいつの顔を見ると手配犯。


 目立ちすぎてしまったから、ほとぼりがさめるまで狩りはしないと決めたはずなのに……ミミィもわざとではなく、においで気づき、反射的に咥えてしまったみたいだから、責めるわけにもいかない。


 また、捕まえたのに逃すという選択肢もなかった。


 もしバレたら反逆罪? そんな罪状があるのか知らないが、八島重工とか生徒会から裏切り者だと烙印を押されると戦艦島では生きていけないし、飼育委員会の存続にもかかわる。


 ミミィをコンビニの店内で待つように指示して、八島警備保障を呼んだ。






「なあミミィ、なにを買おうか? 10万円もあるから、なんでも買えるぞ」


 僕たちが捕縛した手配犯は小物だったから賞金の金額は小さかったが、お見舞いの資金としてみると潤沢といえた。


 花屋で店中の花を買い占めるのは難しいかもしれないが、真っ赤なバラを100本とかなら問題ない――僕が100本のバラを贈るようなキャラでないところは問題だし、ルイが真っ赤なバラに包まれてうっとりするようなキャラでないところも問題だが。


 まあ、ここはミミィの言う通り、おいしいものでも持っていったほうがいいだろう。


 ただ、お見舞いだからミミィにとっておいしいものではなく、ルイにとっておいしいものでないと困るのだが。


 わんこのおやつはお見舞いの品物としてはどうかと思う。


「マミィの好物ってなんだ?」


「とり」


「とり?」


 反射的に問い返す。


 鳥だろうか?


 インコや九官鳥を飼いたがっているとか。


 飼育委員会にはハエのような昆虫から、テナガサルといった大型類人猿まで飼われているが、鳥類はほとんど見かけない。トリインフルエンザ・ウイルスを使って生物兵器を作るときなど、使い道がゼロというわけではないが限定的ではある。


 それに、飼育委員会で飼っている実験動物と愛玩用のペットは別だろうが……いや、やはりルイが愛玩目的に動物を飼いたいと考えるはずがない。


 ミミィをはじめ、員数外になった『家族』の保護で忙しくて、ペットを飼う余裕なんかないはずなのだから。


 だいたいミミィは「おいしいもの」と言っているのだから、ここは素直に鶏肉と解釈したほうがいいだろう。


 唐揚げとか、フライドチキンとか、そんなものがルイの好みだろうか?


「で、そのとりはどこで売ってるんだ?」


「そこらへん」


 ミミィが指したのはコンビニだった。


 戦艦島は地区ごとに工場があったり、事務所があったり、居住地区だったり、歓楽街だったりするのだが、コンビニだけはどの地区にも結構ある。


 常人には理解しがたい難しい研究をしている地区であっても、そこで働く人は弁当を食べることだってあるし、寝食を忘れて研究に没頭していたとしても、本当になにも食べずにいるわけではないのだから。


 日用品を売る店には困らないが、なにかの趣味の店みたいなものはまったくないというほうが正確だろうか? まあ、通販でたいてい買えるんだけどね。




 2人でコンビニに入ると、ミミィは缶詰の棚から見慣れない缶詰を取って、僕の持つカゴに2つ投げ込む。


 在庫全部が2つだけだったのだ。


 ということは、値段のほうもそれなりだろうと覚悟したが、陳列棚の表示によると『鶏頭水煮』という商品で、価格はたったの298円。


 隣のモモやパイナップルとかわらない値段で、缶のサイズからすると2倍はあるのだから、なかなかコスパの高い缶詰だ――が、コレ、なんの缶詰?


 しかし、ミミィにとっては馴染みのものなのだろう、カゴに入れた後、さっさと次の売り場に向かう。


 カップメンのところでチキンラーメンと、その隣のインスタントスープのコーナーでチキンスープを取った。


 本当に鶏尽くしだ。


 わんこのおやつとか、ぼったくり商品がないと戦艦島のコンビニでも100円もかからないんだな、と感動しつつ、ルイのお見舞いにいった。




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