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まだルイは僕のことを信じてくれるのか?




 生徒会長との話し合いを終えて、廊下に出てて、しばらく歩くと――多少声が高くなっても聞こえない程度には遠く離れたところでルイに怒られる。


「なにを考えてるの?」


「ミミィが危なくなることをするわけない、というところは信じてもらいたいんだけど」


「そこは信じてる。でも……」


「とにかく……本当にミミィを使って引き渡すふりまでしなくていいと思うんだ。例えば中古のマネキン人形でもリサイクルショップで探して――あとは尾行に張り込み、でいいかな?」


「GPS発信機を埋め込んでおけば確実だけど……そんな賞金が欲しいの? それとも手柄を立てたい?」


「まあ、どっちもだね。今後どうなるか知らないが軍資金があって困ることはない。僕たちの評価が上がれば上がるだけミミィが処分される確率が低くなると言ったのはルイだし」


「言ったけど、ジブンのせいにするのは卑怯」


「そうだね、ごめん。ただね、一番の理由はミミィに危害をくわえようという奴は早急に排除したい。鈴木英子さんはミミィを狙っている。ここで僕が断って、それで諦めてくれるのならいいけど、そうでない場合、どんな計画を立ててくるか、まったく読めなくなってしまうからね」


「コンペのほうが過保護じゃないの!」


「そんなつもりはないけど……ミミィに関してなにかが起きているのなら、できるだけ自分でコントロールできるようにしておきたい。まあ、これはミミィに限らずルイについても同じだけど」


「……ジブンは別にいいわよ、コンペに助けてもらう必要ないから」


「いや、いちおう家族だし」


「それは初耳の情報ね、いつジブンとコンペが家族になったのかしら?」


「飼育委員長と飼育委員の関係だと思ったら、なにかよくわからんが娘がいて――僕が勝手に娘扱いしてるわけじゃないぜ、相手が娘だと主張して、僕のほうも、まあ、まったく心当たりがないわけじゃない」


 あの頭が派手に壊れている父親がやったことだ、心当たりどころか、確信しているね。


 お勉強ができるバカほど手に負えないものはない。


 人間として知っておかなければならない知識は皆無なのに、つまらないことばかり得意なのだ。


「それに、これは僕のせいで起きたことだと思う」


「コンペのせい?」


「だって、もう何年も以前からミミィはルイと一緒に暮らしているんだろう?」


「最初に会ったのはミミィが3歳のとき。ドーベルマンの混成体を100人作って、その時点で生き残っていたのが30人くらい。産まれる前に流れたり、産まれた直後に死んでしまったり、うまく育たなかったり、だいたい損耗率7割というところだったみたい。その生き残った30人にもいろいろあって、マダラのようにまったく懐いてくれない子もいたし、尻尾を振って寄ってくる子もいて、その中でも特にミミィは最初から異常なほど懐いてきたね」


「そのころは一緒に暮らしていたわけじゃないんだろ?」


「秘密を守れるか念押して、弱いふりをしろと命じたの。水準に達していなければ処分されるから。幸い……といっていいかわからないけど、バカなふりはしなくてよさそうだったし。同時に処分されたときに、ジブンがもらえるように手配してね。そのときにはコンペのお父さんに協力してもらった」


 結局、ミミィがルイのところにきたのは2年後。


 ミミィが5歳のときだったという。


「ジブンも中学生で飼育委員になって、そのまま高校に持ち上がって←いまココ」


「だいたい3年の間、ミミィは注目されなかった。失敗作と言ったらルイは怒るけど、戦艦島の公式見解では失敗作として処分。だけど、このところ僕が外にやたらと連れ出して、賞金稼ぎの真似事をやってせいで意外とミミィは使えると評価が変わったんじゃないか?」


「………………その可能性はあるにはあると思う。ただ、問題はミミィの評価が変化して、それなりの価値があるということになったら、ジブンのところに連絡がきて、試験みたいなものを受けろとか、なにか任務を押しつけられるとか、そんなことがあるはず」


「敵ばかり評価がいいという感じなのかな?」


「身柄拘束されたことは察知できても、それを誰がやったのかは公開されない情報」


「そうか、僕たちが賞金稼ぎの真似事をしていることまでは鈴木英子さんや、その仲間は普通なら知ることは出来ないんだ――いや、ちょっと待てよ。僕は八島警備保障にもミミィの姿を見せてないよ。秘密って言われてたから、僕だけが捕まえたことにした」


「コンペとミミィが実際に身柄拘束している動画でも見たのかも。これは、どこかで派手に水漏れしている予感」


「なんで問題が続くかなぁ。最初にルイと会ったときの、あの機械化改造体だって全員を捕まえたわけじゃないのに。むしろ、まだ野放しになっているほうが多いくらいなのに」


「この世界はサスペンス物の2時間ドラマじゃないんだから、残り15分になったら崖の上で犯人がぺらぺらと自白しはじめるなんてことは起きないし、そもそも戦艦島にはそんな都合のいい崖なんて存在しないから。結局は迷宮入りすることもあれば、事件が連続して発生していくこともある。いつもいつも、きれいに一件落着してから、次の事件がはじまるわけじゃない」


 むしろそうじゃないことのほうが多い、とルイは軽く肩をすくめる。


 あっさりした態度がいくつもの事件にかかわったベテランらしい。


「しかし、せめて水漏れだけは早急になんとかしておかないとマズいんじゃないか? ここ、とピンポイントで示せなかったとしても、だいたいこのあたりとか、そういうのはないの?」 


「さあ、ねぇ……どこでもおかしくない」


「これで上手く炙り出せるといいんだけど」


「場合によっては捕縛にならないかもしれない」


「どういうこと?」


「口を封じるほうがジブンたちにとって都合がいい、と判断することもありうる」


「そういうこと、ね」


 戦艦島や生徒会にとっては生かして情報を吐かせたいかもしれないが、僕たちはそれを聞かせたくない、そんの場面もあるという意味だろう。


 だから、人殺しの覚悟をしておけ、と。













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