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突入開始!



 素早く三手に別れ、決められた突入ポイントで待機。


 僕の腕時計はルイのと比較して10秒進んでいたので20時55分10秒で万能キーを使って正面の通用口の開錠、ドアノブをつかんで、いよいよ突入と思った瞬間、ガーンと通用口の扉が激しく揺れた。


 ミミィがタイミングをしくじったのか? 


 手榴弾が暴発? 


 それとも、敵に気づかれてルイかミミィが攻撃を受けている?


 考えている場合でも、迷っている局面でもない。


 僕はドアノブをまわすと、室内に駆け込んだ――その瞬間、天井で爆発。


 ミミィが突入してきた。


 倉庫だと思っていた建物は、どうやら車庫だったようだ。


 かなり広いスペースなのに、ここまで乗ってきた07式小型トラックが止まっているだけ。


 コンテナもダンボールもなにもない。


 視界に入る限り、機械化改造体は1人。


 仲間はいないようだ。


 ルイと向かい合い、その隙をついて上からミミィが飛びかかっていた。


 僕はスタームルガーを抜いて07式のフロントガラスやドアを撃っていく。


 防弾ガラスに防弾鉄板だから22口径の豆鉄砲では貫通することはないが、まったくの無傷というわけにもいかない。


 弾かれたり、めり込んだり、1発も車内には届かなかったが、弾痕は残った。


 兵器工場や民間軍事会社ばかりの宇宙コロニーでも事故車はちゃんと修理する。


 ましてや凹みや傷ではなく弾痕をいくつもつけた車両がそこらへんを走っているわけがない。


 これで敵の足を封じた。


 弾痕だらけの07式では数分もしないうちに八島警備保障のパトカーに目をつけられるから、もし僕たちの包囲網を突破できたとしても自分の両足で走って逃げるしかない。


 その間、上からミミィが、側面からルイが機械化改造体に肉薄する。


 ルイは両手にマウンテンイーグルを握っている。


 2挺拳銃という奴だ。 


 遺伝子強化体で運動能力は人類の限界点といっても、やっぱり女の子なので手足のリーチが男性と比較して短い。フィジカルな面でマイナスがあるのはしかたないだろう。


 そのハンデを補うかのように機械化改造体の顔面にマウンテンイーグルの銃身を突き刺すように打撃を与えようとした。


 しかし、機械化改造体は身を後ろに反らして、その攻撃をかわす。


 マウンテンイーグルの銃身が少しだけ下がり、同時に発砲。


 自分の両手に拳銃の銃身を足しても届かない敵には銃弾でさらにカバーする。


 だが、機械化改造体はさらに身を大きく反らして銃弾を下を潜った。


 まるでリンボーダンスを踊っているかのような機械化改造体の胸を天井から飛び降りたミミィが両足で踏み潰す。


 床に叩きつけながらも機械化改造体は両腕を上げた。手首がズレて、銃身が見えた。


 ミミィがジャンプして射線から逃れる。


 同時にビシッと破裂音がした。


 ルイが編上長靴で機械化改造体の太腿に蹴ったのだ。


 この戦艦島で一番安価で簡単に入手できるのは安全靴だからルイの編上長靴の爪先にも鉄板が入っていた。


 普通なら骨が砕ける一撃だが、機械化改造体は脚部の骨か筋肉か、その両方か、強化改造されているようだ。


 僕が手を出せるレベルの戦いではない。


 2人にまかせて07式を調べようとしたが、後部のドアは鍵がかかっていた。


 ポケットから万能キーを出すと、ピッと開錠――した瞬間、中からなにかが飛び出してきた。




 3メートル近い身長。


 全身を硬そうな鱗に覆われ、手足には鋭い鉤爪が長く伸び、鰐のような口には大きな牙が並んでいた。


 突起のついたヘルメット状のものをかぶり、モトクロスのライダーが着ているプロテクターに似たものを身につけ、なにも装備していないところは青光りした鱗。


 顔も人間より怪獣に近い。


 トカゲ人間?


 恐竜の遺伝子で生物兵器を作ったという噂は本当だったのか?




 反射的にスタームルガーを撃つ。


 距離は数メートル。


 絶対に外す距離ではない――が、トカゲ人間はダメージを受けた様子がない。


「鱗、硬すぎる!」


 思わず叫んだ。ヘルメットやプロテクターには防弾性能があるかもしれない。一方で殺してしまっては情報もとれないから、わざわざ手首を狙ったのに、弾が当たるとバシッと火花が散るだけ。


 トカゲ人間の両手が僕の方に向かってくる。


「ミミィ、ダディーを守れ」


 ルイの声が響いた瞬間、ミミィがトカゲ人間に突貫した。


 だが、いつもなら体当たりで転がして喉に咬みつくところだが、トカゲ人間は倒れることなく耐えた――それどころか、体当たりしたミミィのほうが弾き飛ばされ、床に転がった。


「ミミィ、こいつは硬くて重い。普通の人間と戦うのと同じようにやったら駄目だ」


 僕とミミィでトカゲ人間を前後で挟んで包囲しているような形だが、ちっとも有利なイメージは湧かない。


 もっと威力のある銃か、斧や鉈のような頑丈な刃物でも用意できれば勝機もあるのだが。


 機械化改造体の方もルイ1人だけ相手にすればよくなり、急に動きが軽くなった。


 ロー、ロー、ロー、とルイのふくらはぎにキックを連発する。


 3連発目、ルイはジャンプしてキックをかわし、そのまま膝に飛び乗るような形で関節を破壊しようとした。


 だが、体重だけでは機械化改造体の関節は壊れない。


 ルイは膝に乗ったまま右足を太腿まで踏み込む。


 同時に胸の前で畳んでいた右腕を鞭のように機械化改造体の顔に叩きつけようとした。


 だが、また機械化改造体は体を反らしてかわす。


 それをルイは待っていたようだ。


 すでに左手のマウンテンイーグルは反らした頭がくるであろう位置を狙っていた。


 あとは――引金を引くだけの簡単なお仕事。


 パン、パンと連続して弾けるような発砲音がしたとき、機械化改造体はさらに体を反らした。


 ルイは右足を踏み締めて、左足を前へ進める。


 大股の1歩でスカートがふわっと舞う。


 そして、左足の編上長靴が倒れる寸前の機械化改造体の喉を踏みつけた。


「フンッ!」


 気合声とともに機械化改造体の喉を踏んでいる左足に全力を込めた。


 機械化改造体の後頭部が床に叩きつけられ、編上長靴で喉を潰す。


 だが、機械化改造体は頑丈だった。


 下半身を捻り、その勢いで上半身を無理にでも動かしてルイを振り落とした。


 飛び退りながらルイは左右のマウンテンイーグルの弾倉に残っていた合計20発の弾丸を起き上がろうとしている機械化改造体に撃ち込む。


 そのまま突っ込み、持ち上がった頭に銃身を突き出して打撃を加え、さらに膝を顔面に打ち込む。


 さすがの機械化改造体もグラリと体を揺らした。


 そのまま倒れて動かなくなる。


 しかし。





 こっちは苦戦中。


「きやっ」


 ミミィが悲鳴を上げる。


 殴ったら拳の方がダメージが高く、蹴っても安全靴をはいててさえ爪先が痛い。


 僕の両手両足でさえ真っ赤に腫れ上がっているのだから、筋力が強くてもっと強いパンチやキックを出せるミミィはもっとひどく手足を痛めているだろう。


 ルイが人間ミサイルのように頭からトカゲ人間の腹部に突っ込み、同時に両手で相手の両足をつかんで引っぱる。


 柔道でいうと双手刈だ。


 はじめてトカゲ人間を倒すことに成功した。


 腕をとって背中にねじり上げる。


 打撃系の技は効かないと判断して、投げ技と関節技で戦うことを選択したようだ。


 トカゲ人間は技という概念がないのか、ミミィと同じように見た目はともかく内面では幼くて経験が浅いのか、力任せに関節技から逃れようとした……が、これがなかなか有効なようだった。


 とんでもないパワーと、たぶん痛みに鈍感でもあるのだろう。


 完全に極まった関節技は無理に外そうとしても外れるようなものではないはずなのに、ルイはじわじわと押されていく。


 ひょっとして関節が人間と違うのか?




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