狩りの時間
おはようございます。
今日も更新します。
土曜の訓練は夕方で終わり、そのあと街へ出ると、すぐにミミィは走りはじめた。
うわぉー、とか歓声を上げながら、ぐんぐんスピードを上げていく。
待って、と声をかけると、しばらくは走るのをやめて歩いたり、止まったりするのだが、すぐにまた走り出そうとする。
「ダディー、はやく! はやく!」
「早過ぎるよ。そんなに急がなくてもいいだろ」
「ミミィとダディーのえものをよこどりされるよ」
「どこの誰に横取りされるんだよ。そこらへんに獲物がいるわけでもないだろうし」
何度か待て待てと制止して、やっとミミィに追いつく。
ドーベルマンの遺伝子スゴイ。
完全に命令に服従するというわけでもないが、いちおう僕の言ったことは聞いてくれるのは助かる。
僕たちがやってきたのは学校の近くのコンビニ前だ。
始業前、昼休み、授業後だけが繁盛する店だが、それでも律儀に24時間365日営業している。
「なにも買わないぞ。賞金をもらった後なら好きなものを買ってやるが」
「えものをつかまえたら、にくー」
「つかまえたら肉な」
「にくー」
店員さんがゴミ箱を片づけていた。
満杯になったゴミ袋を引っ張り出して、新品のゴミ袋に交換している。
その店員にミミィが襲いかかる。
一気に押し倒して体の上に乗って身動きできないようにした。
ひょっとしてゴミ袋の中においしいもの――世間では残飯でもミミィにとってはおいしいと感じられるものが入っているのか?
ハンバーグとかカラアゲとか、弁当のおかずを食べきれずにゴミ箱に放り込んだ奴がいたとか?
「なんだ、なんだ……」
驚いて叫びながら手足をバタバタさせるが、ミミィは逃がさない。
肩まである長髪だが額が大きく禿げ上がって、落ち武者みたいなヘアースタイルのおっさんだ。
「こいつつかまえた」
僕はこんな奴、知らない。
「やめろ、やめろ……」
「つかまえた、つかまえた」
「捕まえるのは手配書にあった3人だけ」
「こいつも、こいつも」
ミミィは落ち武者スタイルの長髪を無造作につかむと、簡単に引き剥がした――動作としてはシンプルに引いただけだが、そのときメリメリと音がして店員が悲鳴を上げたから、実際には強く固定されていたみたいだが。
さらに眼鏡をつかんでポイ。
そして、現われた顔はなんとなく記憶にある。
「長野吉弘!」
手配書にあった顔だ。
あまりにも個性的なヘアスタイルに目がいってしまい気づかなかった。
それに禿げてると、すごく老けた外見になるみたいだ。
また古臭いデザインの銀縁眼鏡も年齢をごまかすのに有効だったようで、いままで40はいってそうなオッサンだったのが、変装をとくと僕たちと同世代になっていた。
「賞金10万円!」
「じゅうまんえん!」
2人でガッツポーズだ。
ポケットから太いタイラップを取り出すと、それで手首と足首を拘束する。
表向き飼育委員は僕とルイの2人だけ。
ミミィは隠し戦力で、絶対に秘密にしろと約束させられているので、ミミィにはコンビニの中にいるように頼んだ。
そして、八島警備保障に電話して、手配犯を回収するよう連絡した。
やってきた警備員が子供の賞金稼ぎか? と変な顔をしたので「飼育委員会です」と生徒手帳を見せながら名乗ると簡単に納得してくれた。
僕はともかく、ファーストと呼ばれているルイは有名だろうし。
手配犯発見から僕の銀行口座に賞金が入金されるまで、およそ15分。
「やったね!」
「やったね!」
八島警備保障のパトカーがいってしまうと、僕もコンビニの店内でミミィと合流して、お互いに拳をコツンとぶつけ合う。
レジ横のホットケースの一番高い商品は……MEGAジューシー鶏串だ。
「すみません、コレ、2つください」
コンビニの自動ドアから出るのを待ち切れなかったかのように紙袋からMEGAジューシー鶏串を取り出して口の中へ。
「MEGAってのがいいな」
「いいな……で、ダディー、めがってなんだ?」
「まあ、だいたい大盛りという意味でいいんじゃないかな」
「うん。おおもりはいいものだ」
「ジューシーというのも素晴らしいな」
「らしいな……で、ダディー、じゆしーってなんだ?」
「脂は素敵ということさ。手がベタベタになるけどな」
串から垂れてきた脂をペロリ。
隣のミミィも右手をペロリ。
「あぶらはせいぎ!」
割り箸サイズの太くて長い串はゴミ箱へ。
「美味かったな」
「あとね、みっつ……いつつあったら、いつつあったら……」
「次の手配犯を捕まえたらな」
「わかった。すぐにつかまえよう」
いきなりミミィが走り出す。
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