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お金がない!



 いつものようにミミィと半分遊びの朝食をすませる。


「学校いくぞ」


 始業時間からすると1時間以上も早いが、ミミィを連れて登校するのなら他の生徒に見られたくない。


 帽子で犬耳を隠しているから簡単に正体を感づかれる心配は少ないが、大勢の生徒の前で私服の女の子と並んで歩いているところを目撃されるのはどうかと思う。


 変な噂になっても嫌だし。


 目立つのは困る。


 それに夜は訓練所で激しいトレーニングを受けているせいで部屋に帰ると眠くて眠くて。


 ついてこられない奴はさっさと退学してね、というポリシーの八島高校には宿題はないが、自主的に予習復習くらいはやっておきたいから早めの登校は都合がよかった。


 ていうか、僕は現在のところ学年最下位なんだよな。目的としては父親探しで、就職や進学はその後というか、クソオヤジを見つけてからでないと、その先はないんだから学校の成績なんて、かなりどうでもいいんだけど、さすがに退学になるくらい悪いのでは困る。


 学年最下位は退学の一歩手前くらいのポジションだよね、間違いなく。


 そう考えると始業時間前に登校して、ざっと予習復習する程度はやっておかないとマズい。


 ミミィは赤い毛糸のワッチキャップを深くかぶって外に出た。


 4月になると暖かい日も多くなってくるから毛糸では暑苦しいかもしれない。


 夏向きの帽子を買ってあげようかな?


 女の子のファッションはよくわからないが最初に思いつくのは麦藁帽子だった。


 でも、服はいつものようにCWU―45/Pだ。


 それなら、いっそ飛行帽か?


 しかし、年代が合わないか。


 CWU―45/Pに合わせるならバイザーつきのヘルメットで、いまどき飛行帽にゴーグルはありえないし。


「なにみてる?」


「ミミィはかわいいな、と思って」


「かわいいんだぞう!」


 顔が近づいてきて、いきなりペロッと右目の端を舐められる。


「舐めるの禁止」


「ミミィはいいの」


 この件も確信をもって断言されてしまった。


 知らない間にミミィだけが特別になるようなルール改正が勝手におこなわれたらしい。


「ミミィとマミーはダディーをすきなだけなめていいし、ダディーもミミィとマミーをすきなだけなめていいの。というか、たまにはダディーもなめなさい」


 どうやらミミィだけでなく、僕にも有利なルール改正らしい。


 しかし、ミミィは喜ぶかもしれないが、マミーはどうだろう?


 僕がルイをペロリと舐めたらものすごく怒られそうだけど。


 一瞬ビクッとして、いまなにが起きたのという顔をされて、信じられないという目で見られたあげく、非常に冷静にどういうつもりなのか質問してきて、納得するまで質問がエンドレスで続く、そんなイメージ。


 リアルに想像できて嫌だ。


 しかし、娘に命令されてしまったしな。


 ルイはともかく。


 本当は犬耳をもふもふしたいんだけど、周囲に人影はないが誰の視線があるかわからない公道でミミィの耳をさらすわけにはいかない。 

 かわりにちょっと舌先で顎のあたりを舐めてみた。


 きやー、とミミィは悲鳴を上げたが、嬉しくてたまらないという雰囲気だ。


 なにこいつ、変態? キモいし、殺していい、と普通の女の子ならひっぱたかれるところだが。


 だが、次の瞬間、太くて鋭い犬歯が向かってきて、反射的にかわす。


 ガチンといままで頭のあった場所で大変に危険そうな音がした。


「わう」


 吠えながらじゃれてくる――ミミィは遊びで甘噛みしたつもりでも、こっちは最低でも身体の部分欠損レベルの危険がある。


 だから、興奮させてはいけないのだが、なにがスイッチになるかまだ完全に把握できてない。


「わう」


 しかし、逃げるわけにはいかない。


 お父さんが娘に負けるわけにはいかないのだ!


 と思った瞬間、タックルされて押し倒されて(抱きつかれただけだが、その勢いが強すぎて転倒して)顔中ぺろぺろ舐められた。


「こらこら、やりすぎ禁止!」


「もうちょっとだけ」


 もうちょっとだけ舐められた。


「もういいだろう。別に美味しいわけじゃないし」


「おいしいもの、いっぱいたべたー」


「よかったな……しかし、ここで残念なお知らせがある」


「ざんねん?」


「この間の件で稼いだ報酬が残り少ない。まあ、だいたい3日が限度だ」


「なんで?」


 不思議そうな顔をしてミミィが僕のほうを見る――が、どこに不思議なところがあるんだ?




 初日はコンビニで散財した。


 特にわんこのおやつが大きかった。




 その夜、スーパーに寄って一番安い冷凍肉をキロ単位で仕入れておいたのだが、それもどんどんなくなっている。


 だいたいルイと最初に顔を合わせたのだって、ゴミとして捨てられているイスがあったら拾おうとしたのがきっかけだったわけだし、もともと萎びていた僕の財布は一時的には丸々と太っても、基本はペラペラでスカスカ。


 生徒手帳のついている電子マネー機能しか使わないから財布云々は比喩的表現でしかないけど、その電子マネーの残高がしょぼい状態なのは事実。











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