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ミミィと朝ごはん




 他の生徒に目撃されて噂にでもなったら面倒だから、ミミィと一緒に早めに登校し、飼育小屋まで彼女を連れていった。


 僕と朝食をとれたので満足したのか、特にもめることもなく建物の中へと消える――別に僕としたら毎朝の恒例行事にする予定はまったくなかったのだが、翌朝も、その翌朝も勝手にミミィが押しかけてきて、朝食をとることになった。


 これがクラスメイトだったら、たかられたように感じられるだろうが、娘なのだからそういうことにもならない。


 ジョギングにもつきあってくれるし。


 というか、大喜びでついてくる。


 お散歩大好きみたいです。


 それに体を動かした後の食事は美味い!


 しかし、ミミィはよく食べるんだ……わんこのオヤツは一度で懲りたので新人訓練が終わった後、スーパーで安売りの冷凍肉をキロ単位で買ったのだが。


 同時に僕のほうも飼育委員室の地下にある訓練所で毎日しごかれているから腹ぺこだ。


 新人訓練所と聞いていたので各委員会の新人を集めてやるのだと思っていたが、セキュリティー上、他の人員の顔や名前は秘密ということでルイが教官を務めている。






 訂正。


 鬼教官を務めている。


 10キロ走からはじまる素敵すぎる放課後で野球部やサッカー部なんか問題にならないほどのハードな訓練の日々なので、しっかり栄養をとらないと死んでしまうし、死ぬ気で食べないと体重がどんどん減ってしまう。


 体重が落ちれば体力も落ちて、ますます訓練が辛くなる。


 僕とミミィは白米をたっぷり盛ったドンブリを持つ。


 それは山盛りという領域を超えて、カキ氷かよ! という感じだ。


 2人の間には肉を超ギガ盛りにした大皿がある。


 それを競争するかのように口に押し込めるだけ押し込んでいく。


「しょうぶ、しょうぶ!」


 いったい食事をするのに、なんの勝負だと思うが、まあ、ミミィが楽しそうならいいんじゃないかと思う……いや、駄目だ。


 山盛り御飯の山頂にガブリと噛みついて盆地にして、そこに大皿の肉を補充って、それは……それは……いいのか?


 ありなのか?


 許されるのか?


 ちゃんと箸使えよ!


 負けない!


 僕は負けない……って、いつの間にかこっちまで勝負モードになっている。


 しかし、たっぷり新人訓練所でしごかれてるんだから、最低限消費した分のカロリーは確保しないと。


 ミミィの真似をして山盛り御飯の山頂をガブガブガブと口の中に押し込んでスペースを稼ぎ出すと箸の中ほどまで使ってつかめるだけの肉をつかむ。


 乗せた瞬間、頭突きでもするかのようにミミィが突撃してきた大きく口を開けて僕が茶碗の上に取り分けたばかりの肉をさらっていった。


「おい、肉をとるなら皿からとれ」


「ふぁんぞく……むぐっ」


「口の中に食べ物を詰めたまましゃべるな」


「ごっくん……はんそくだからいいの」


「はんそく?」


「わるいこと、ずるした」


「反則か? なんでだ!」


「ダディー! ぺなるてってしってる? わるいことするとぺなるてなの」


「ぺなるて? なんだ、それ……ペナルティーか、いったいダディーはどんな反則でペナルティーなんだ?」


「にくもりすぎー」


「それはミミィもだろ」


 僕の箸は素早くミミィの茶碗から奪われたのとだいたい同じ量の肉をつかんだ。


「だめー」


 またしてもミミィが大きく口を開けて箸を狙う。


 とっさに上に回避して、避けたところで僕の口へ。


 残念ながらミミィほどには大きくないので半分がやっとだが、噛み締めるたびに肉汁の美味が舌から食道に流れ込み、さらに胃袋を満たして幸せな気持ちになった。


 安物の冷凍肉でも、肉は肉。


 充分美味い。


 仕返しとばかりにミミィが茶碗に噛みつくような勢いで御飯をさらっていく。


 この際、御飯なんてどうでもいい。


 スペースが空いたなら大皿の肉の移送だ。


 肉だ、肉。


 僕は大皿に箸を伸ばして肉をどんどん確保していった。


 ミミィが文句を言うが、そんなのは知らない。


 全部をとったわけではなく、まだ何切れか残してあげたんだし。


「ずるい、ずるい!」


「ずるくない」


「ぺなるて」


「ミミィだって肉いっぱいとっただろう」


「とってない!」


「とっただろう」


「とってない、おなかすいた」


「まだ皿に残ってるだろ」


「のこってない」


「嘘つくな」


「うそちがう」


 そう言い捨ててミミィは大皿をつかんで、口の上で一気に傾けて残った肉を流し込んだ。


 残ってないという発言が嘘でないことにしたのである。


「あっ、それこそズルい。ミミィのほうがペナルティーだぞ」


「いいの、せーふ! せーふ!」


「いーや、アウトだね。絶対アウト!」


「ミミィはいいの。ダディーはだめなの」


「えっ、僕だけ駄目?」


「そう」


 確信をもって断言する。


 知らない間にミミィだけが有利になるようなルール改正が勝手におこなわれたらしい。


 しかし、普通に盛られた御飯やおかずを食べるより、相手の皿から奪って食べたほうが10倍は美味いのはなんでだろう?


 食事というより、半分は遊びになってるけど。


 その後は片付け。僕が食器を洗って、ミミィが拭く。








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