戦艦島の経済事情について
この戦艦島の物価は基本的に高めだ。
生産しているのは武器を中心とした軍需関連製品ばかりで、それ以外の物品については地球から輸送しなければならない以上、どうしても物流コストの上乗せ分が大きく響いてしまう。
しかし、八島グループの関係者のみが住民だから商品については会社が一部補助していた。
例えば学校内に設置された自動販売機で売られている缶ジュースは一本100円。
売店のメロンパンやアンパンも1つ100円。
学食の日替わり定食なら300円で、ウドンやラーメン単品なら150円で食べられる。
むしろ日本本土より生活するだけなら物価は安いくらいだ。
ただし。
ただし、だ。
その会社からの補助率は品物によって変動する。
本屋の参考書などが数百円程度に抑えられているのは、頑張って勉強して将来は八島グループに貢献する人物になるように、という会社側のありがたい配慮による――が、かわりに漫画は古本でさえ1000円オーバーのものばかり。
おもしろいと評判の作品になればなるほど高額になり、日本では『戦艦島で高い作家ランキング』なんてものが作成され、1冊10万円を超える作品を書いた作家は伝説になれる。
もちろん、これは勉強の邪魔になるものは補助率を下げるどころか、むしろ法外な輸送費や利益を加えて、とんでもなく高い定価を設定しているわけで、ペーパーの本でなくてもダウンロード版だって高いし、宇宙空間の戦艦島でネットに接続するには八島グループのサーバーを経由するしかない。
もちろん、宇宙港という、コロニーで唯一品物が出入りする場所は八島グループのものだから誤魔化すのも難しい。
つまり生活必需品や勉強に関するものは安く、娯楽にカテゴライズされるものは高いのだ。
他にも変なローカルルールがあって、例えば赤い服は輸入禁止。
なにか事故があって、人が倒れているとして、赤い服を着ていると出血しているのか、していたとして量はどれほどなのか、服の色にまぎれて判断できなくなるから。
各種戦争グッズ、とりわけ武器の研究開発、試作、生産のための戦艦島だからと言って、コロニー内も戦時色に染めなくてもいいようなものだけど。
ちなみに服でいうと学生服とか、作業服とか、そんなのは安い。
おしゃれな服になればなるだけ高額になっていき、気合の入ったデートに着ていきたくなるようなものは法外な値段となる。
しかし、食品関係はたいてい安いはずだけど、と僕は頭の中で検索してわんこのおやつを調べてみた――ランクはS。
最高に高価なものの1つ。
「はっ?」
びっくりして理由を調べてみると、ペットの飼育は勉強や仕事をするはずの時間を大きく奪うし、次世代の育成にも当たらないのに、貴重な食料を無駄に消費するから、らしい。
だから、ペット用品は高額だが、これが普通のドックフードならまだ値段は抑え気味だったはずだ。
主食ではない、おやつということで、さらに値段は跳ね上がる。
さっき電話で黙って買ったらいい、僕に買えるならと言っていたが、クソッ、ルイの奴、高いって知ってたな?
部屋に帰り、お茶を淹れて2人でコンビに弁当を食べた。
わんこのおやつをわけてくれたので、1つ試しに食べてみると鶏肉の味がしたが基本的には薄味で、妙に歯ごたえがあり、あまり美味しいものではなかった。
おいしくはないけど食べられる――微妙だよね?
それなら普通に人間が食べるように調理されたカラアゲとか手羽先にすれば、何十倍も買えたわけだし。




