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どうしてこうなった?

おはようございます。

 今日も更新します。


 世の中いろいろな形があるものの、ごく一般論で言うならば、マミーは母親を意味するはずで、たいていの場合の女性だ。


 そして、ここにいる女性はルイとミミィ。


 ミミィが自分で自分のことをマミーとは呼ばないだろうから、そういすると残るはルイだけ。


 しかも、そのルイ。


 さっきからなんとなく気まずそうで、ちっとも目を合わせようともしない。


「すまん、ルイ。もう1つだけ説明してくれ」


「………………………………この当時――10年くらい前のことだけど、この戦艦島で流行していたのがファーストの遺伝子を利用して、ファースト以上の能力を引き出すという実験で、だからコンペの父親は自分の息子の遺伝子と、ファーストの遺伝子を使って、そこにドーベルマンの遺伝子を切り貼りしてミミィを作成したの」


 しばらく沈黙した後、ルイは困惑したような声で話した。


 つまりミミィは10年前の最新の流行だったわけだ。


 結果、僕は高校1年生で父親だと?


 クソ親父が、なんてことしてくれたんだ! と何度目になるかわからない怒声を心の中だけで浴びせた。


「いや、ちょっと待てよ。10年くらい前に流行ったということは……ミミィはいまいくつだ?」


「8歳」


 小学生で1児の父になってました……いやいや、ちょっと待て。


 さっきから待ってばかりだが、クロックアップした脳でも処理能力が追いつかないからしかたない。


 ここまでルイが運転してきたキューマルの荷台にはファーストになれなかった初期の遺伝子強化体とか、その後ファースト以上の遺伝子強化体を製作しようとして失敗した実験で生まれた個体が乗っていると言っていたはず。


「ちょっとミミィに訊きたいんだけど、兄弟姉妹は何人?」


「いっぱいいるよ」


「いっぱい? いっぱいなのか!」


「おにぃも、おねぇも、いもうとも、おとうともいるよ」


「お兄さんは何人いるかな?」


「いっぱい」


「お姉さんは?」


「いっぱい」


「弟は?」


「いっぱい」


「妹は?」


「いっぱい」




 うがー!




 ミミィがニコニコと嬉しそうな顔をする分、僕の心に渋くて苦いものが広がっていく。


 お勉強ができるバカほど手に負えないものはない。


 しかも仕事が大好きで、やたら勤勉な奴。


 それが自分の父親なのだから嫌になる。


 まったく働きもせず昼間から安焼酎で酔っ払ったり、稼ぎを全部パチンコにつぎこむような親父に憧れるぜ!


 しかし、そこに救いの手がのびた。ルイである。


「さっきも言ったようにファーストの遺伝子を使った研究は大流行したことあるし、現在は下火といっても、まったくなくなったわけでもないから。いまこの瞬間にも新規の斬新なアプローチを思いついたとか、なんとか言い出す人が現れて、研究班ができたり、予算がついたり――だけど、それはあくまでファーストの遺伝子を使ったもので、コンペじゃない」


「まあ、僕の親父じゃない限り僕の遺伝子を使おうとなんか考えないだろうな」


「そうね、特別優秀というわけでもないコンペの遺伝子を使う必然性ないから」


「……まあね」


「世界一優秀な頭脳というわけじゃないし」


「……まあね」


「運動神経抜群といわけじゃないし」


「……まあね」


「そんなイケメンというわけじゃないし」


「……まあね」


「遺伝的に優れた形質が1つくらいあったら、ちょっと違った展開になったかもしれないけど」


 しかし、ルイの説明してくれる内容はちょっと悲しい。


 別に僕の遺伝子をどんどん使ってもらいたい、という訳ではないけれど。


「……そうだよね。しかし、世界一ってハードル高くない?」


「この戦艦島なら遺伝子でも、なんでも必要なものは全部揃うし、ないなら合法的に入手するか、それが無理なら超法規的に奪取するだけ」


「超法規って、ぶっちゃけ違法ということだよね。それで奪取って強盗だろ?」


「この戦艦島には法律は存在しないし、八島グループにとって他国の法律なんてどうでもいいから」


「まあ、金になるかどうかだけが重要なんだしね」


「そうなると儲かりそうにないコンペの遺伝子よりは超一流のスポーツ選手とか、武道の達人の遺伝子を使ったほうが性能がいい子供を生産できる可能性が高いし、売り込む場合にも顧客に対して説得力が違ってくる」


「売る?」


「まだ年齢的に若すぎて、実際の販売実績はないみたいだけど、どこかに専用の訓練所があるという噂ね……ジブンの劣化コピーにすぎない個体ばかりだし、遺伝子的には優秀でも、その形質がどこまで発現するかわからないから、本当に売れるのかどうか、売れたとしてベストセラーになるような長期にわたって安定して需要が見込める優良商材になるかは今後の話になるんだけど」


「どんどんいもうとやいもうとをつくるのだ!」


 不気味なことをミミィが明るい、嬉しそうな口調で言う。


「でもねぇ、ミミィはダディーとマミーのおとうととかいもうともほしいなー」


 いや、そんな期待するような顔を向けられても返事できません。


 ルイよ、なんとか言ってやれよ、母親なんだし。


 いや、それを言ったら僕は父親なんだけど、いきなりできた娘に教育すればいいのか嘆願すればいいのか説教すればいいのか、そのあたりでもう僕にはわからないんだから。


「いつ? いつ?」


 すごい期待してますってキラキラした瞳を向けられても返事に困るんだが。


「きょう? あした?」


チラッとルイのほうを見たら、むこうも僕の様子が気になるらしく、ちょうどこっちに視線を向けたところだったから、バッチリ目が合って、お互い気まずい。



ブクマいただきました、ありがとうございます!

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