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突入してみたものの

おはようございます!


 5階までいって、503号室の電子錠に支給品の万能キーを押し当てる。


 ピッと音がして、赤く光った。


 開錠できたはずだ。


 その瞬間――




 ドアが爆発した。




 逃げ出すにしても、時限爆弾くらい設置することができると、なぜ気づかなかった?


 あまりにも油断しすぎ。アルバイトといってもコンビニやハンバーガー屋とは違って、命がけの場面もあることはわかっていたはずなのに。


 自分に小一時間は説教したい気分だ。


 しかし、爆発するタイミングが早すぎたおかげで、僕は無傷だ。


 内側からの強い圧力で廊下に転がっている扉を踏みしめつつ、部屋の中の様子を窺う。


 コルダイト火薬の燃焼で生じる刺激臭だけしか感じられない。


 もし、この部屋にアルファが隠れていたとすれば爆発と当時に死んだんじゃないか?


 発見されたことに気づいて、覚悟の自殺。


 無理心中っぽい感じで、最期に突入してきた敵を道連れ、みたいな。


 隠れるところといっても、6畳1間だし、あとはユニットバスだけだが、どこも焼け焦げて爆発の一瞬はとうてい人間が生きていける状況になかったことを示唆していた。


 ベランダに出る。


 ルイと合流しようと思ったのだが、そこには縄梯子はなかった。


 ベランダのフェンスに固定して下まで降りて、それから回収した?


 どうやって? そんな構造にはなってないはず。


 すると?


 反射的に僕は伏せていた。


 銃弾が頭上を走る。


 僕が予想するより、ずっとアルファは頑丈だったのか、どこかに退避スペースがあるのか?


 体を捻って転がるが、爆破された残骸だけしかない狭い部屋に銃弾を防いでくれそうな障害物はどこにもなかった。


 チラリと銃弾が飛んでくる方向に目をやった。




 なにもない。






 しかし、気配はある。






 光学迷彩か。


 周囲の空気を屈折させて背景をこちらに見せているだけで、それ自体に防御力があるわけではない。


 機械化改造体って奴は想像していた以上にタフにできているらしい。


 爆発には耐えたとして、銃弾はどうだ?


 光学迷彩でも弾は通るはずだが、それで殺せるのか?


 飛び上がって左手1本で天井の梁をつかむ。


 僕が転がっていた床に4、5発の銃弾が命中した。


 すぐに銃口は跳ね上げられ、ぶら下がっている僕を狙う。


 アルファと目が合った瞬間、僕は梁から手を放し、着地と同時に距離を詰めて、右手の拳銃を掬い上げるように構えて発砲。


 当たったかもしれないし、外したかもしれない。


 確実なのはアルファが死んでないということだけ。


「ルイ、こっちの動きがバレてんじゃないのか? 待ち伏せされてて、ガチバトルに雪崩れ込み中って感じだけど」


「復唱する。非常事態レッドアラート。部屋の中でアルファは待ち伏せ攻撃アンブッシュ。ただいま近接戦闘クロスバトル中」


「そうそう、だいたいそんな感じ、たぶん」


了解コピー。すぐに支援する。交信終了アウト


 ここにくる前にルイから通信コードを渡されて、すぐに覚えろと言われたけど、どうやら無理だったみたい。


 相手がなにを言っているのか半分くらいわからないが、フィーリング的にはたぶん僕の通信内容が伝わっている、と思う。


 暗記は得意なほうだから覚えるだけは覚えたんだけど、こんな状況で覚えたての通信コードで自由に好きなことが喋るのは無理。


 そのときアルファが銃口をこっちに向けようとしているのが視線に入ってきた。


 とっさに床に体を投げ出す。背中の数十センチ上を銃弾が何発も通過していく。


 こっちも撃ち返した。


 撃ちながら突撃。


 アルファまでの距離を詰める。


 右足でローキック。


 この戦艦島ではもっとも安く買える安全靴が僕の愛用品だ。


 おしゃれでもないし、歩きやすいわけでもないが、とても頑丈で、鉄板が爪先に入っている。


 それをアルファの右膝に横からブチ込む。


 ガチンと金属音とともに激しい衝撃が響いてきた。


 一方は鉄板入りの安全靴だから理解できるが、蹴られたほうは人間の足だ――足のはず。


 両腕だけでなく、足まで機械化かよ! 


 皮膚か、筋肉か、骨か、その全部かわからないが。


 お返しとばかりにアルファが僕の踝を蹴ってきた。


 耐えられず、膝をつく。


 ほぼ同時に脇腹を蹴られ、膝どころか床を舐めることになった。


 頭を踏まれ、蹴られる。


 このままいくと僕は数分で殺されるだろう。




 死因は撲殺。




 最悪の死に方のひとつだと思う。


 だいたい僕は自分の両目だけでなく、周囲のカメラの画像を使って複数の角度から相手の動きを先読みして対応するのが得意で、この部屋もそうだし、飼育小屋も同じだが、防犯カメラが設置されていなくて、屋根のせいで飛行船や無人飛行体からの画像も参照できない環境でまともに戦えるわけがないのだ。


「がうっ!」


 ルイは間に合ってくれるのか、そんなことを重いながら耐えていると、その物体は吠えながら突っ込んできた。


 人間の動きというより、むしろミサイルに近い。


 まさか本当にミサイルみたいに地上から5階まで飛んで窓から侵入したわけないから、壁でもよじ登ってきたのだろうか?


 部屋の中に隠れていたことを連絡してから1分も経ってないのに。


 巨体がアルファを押し倒し、そのままの勢いでガツンと頭突きをかます。


 ボコンと重々しい音がしてアルファが完全停止した。


 安全靴よりヒドい音がしたぞ。


 額に鉄板でも内蔵してるの?





お読みいただきありがとうございます

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