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ゴミ捨て場に女の子が捨てられていたよ

新作はじめます


 なお、この物語はフィクションであり、実在の人物や団体等とは一切関係ございません。同一または似たものがあったとしても偶然の一致にすぎません。

 


 ゴミ捨て場に転がっていた、錆びて、へこんで、汚れたスチール製のロッカーを開けたら女の子が詰まっていた。


 意味わからないよな? 


 僕にもわからない。


 更衣室なんかに置いてある縦長のロッカーだから、サイズ的には人間でも問題なく入れるけど、実際に人間が入っていたら問題だと思う。


 セーラ服を着て、スカートをはいていて、いまは夜だから暗い上に、うつぶせになっているので顔はまったくわからないけど、真っ白い髪が月明かりに輝いていた。


 ちょっと躊躇いつつも、頬のあたりを触ってみると暖かい。


 体温があるということはアパレル系ショップが捨てた古いマネキン人形でも、別の嫁ができたせいで飽きられた「オレの嫁」(等身大フィギュア)でもないのだろうし、どこかの研究所がなにかの実験で使い潰した死体モルモットを廃棄したということでもないようだ。


 もちろん、かくれんぼをしているわけでもないだろう。高校の校内ならともかく、夜のゴミ捨て場で女の子がかくれんぼをして遊んだりはしない……しないはずだよね?


 それとも僕が知らないだけで、最近の女子高生の間で夜中の1人かくれんぼが流行っているのか? たとえば、いまSNSで大人気の1人かくれんぼ。動画をあげたら一瞬でコメント100件! とか。


 いや、いや、いや、いや、いや。 


 それはちょっとありえないでしょ。


 ボッチの遊びにしても、1人かくれんぼはありえない。泣けるというより、引くし。


 ちょっとロッカーのほうに顔を寄せると、ちゃんと中から女の子のにおいがした――なんとなく変態っぽい台詞だが、別に僕は変態ではない、と思う。


 たぶん。


 人形は合成樹脂のにおいだし、男の娘はやっぱり男のにおいだし、女の子は女の子のにおいがするのは事実でしかない。それにスカートの中に顔を突っ込んでくんかくんかしたわけでもないのだから。


 僕は全面的に無罪!




 ところで!


 そんなことより!


 一番重要なのは!


 ゴミ捨て場に女の子が落ちてたら!


 もらっていいの?


 ここだよな?


 ここ!


 まあ、女の子といっても不要になって処分されたクローン体とかそんなものだろう。まだ死体になっていないというだけで、そう遠くない将来、コロッと死んでしまう可能性はあるものの、いらないのなら僕がもらってもいいはずだ。


 いいよね?


 誰も欲しがらなかったから捨てられたんだろうし。


 彼女だってゴミ捨て場に捨てられるより、僕に拾われるほうが少しはマシんじゃないかな? 例え実験動物モルモットにすぎなかったとしても、スクラップと共に永遠の眠りにつくのはきっと嫌だと思うし。




 いや。


 ここで訂正。


 どうやら彼女は大人気らしい。


 いつの間にか、僕たちは囲まれてるじゃないの。気配を悟られずに集団で隙のない包囲網を構築するのは簡単ではない。


 どちらしても単純にゴミとして捨てられたわけではないようだ。


 むしろ1人かくれんぼ説が急に説得力を帯びてくる。


 とっても怖い鬼に追いかけられて、こんなところに隠れたのかな?


「君、なにかやった? 怒らせてはいけない人を怒らせたとか。ゴミと一緒に廃棄処分する程度では許さない、と追手がかかるって普通じゃないよ」


 もちろん、気を失っている彼女は返事してくれない。


 5分……いや、3分前なら包囲網には隙間がいっぱいあって、どうにでもなっただろう。しかし、いまは会敵せずに突破するのは無理。


 もし彼女が全力疾走できる状態なら、2人で一気に脱出という方法もないわけではない。不意打ちで1人倒して、そのままダッシュする。


 追手がどんな連中か知らないが、こんな時間でも人通りがある繁華街までいくことができれば、強引なことはできなくなるだろう。


 どこかから逃げてきたのか? なにかやらかして追われているのか?


 あるいは、これは僕の歓迎会だろうか?


 八島高校に合格したので1週間前に戦艦島にやってきた佐藤玉さとうぎょくには物騒な連中に目をつけられる覚えはない。


 経歴は真っ白で、黒どころかグレーの部分さえ1つとしてないのだから……ネット通販で買った戸籍で入学したというところだけは、ちょっとしたトラブルになる可能性が微量あるような気がしなくもないけど。


 そういえば出かけにチェックした天気予報だと今夜の降水確率は5パーセント未満。


 しかしテロ警戒警報が出ているので雨に濡れるより、鉄砲で撃たれたり、爆弾で吹き飛ばされる可能性のほうが高いようだった。


 そんな夜に出かけるから、空から雨が降ってくるかわりに、横殴りに銃弾の雨が降ってくる?


 注意報ではなく、警報が出ているとしても、まさか! だ。


 さすがにゴミ捨て場を狙うテロリストはいないし、そこに捨ててある女の子を襲うテロリストだっているわけないし、ネット通販で買った架空の戸籍で高校に潜り込もうとしている僕がテロリストのターゲットにされる理由もない。


 それとも、たまたま不用品をこっそり捨てにきて、僕たちは偶然よくない場所にいるというだけかもしれない。


 しかし、正規のゴミとして出せないものを夜中にこっそり捨てにくるような連中がまともなはずもなく、結局のところ戦闘は不可避な気がしてくる。


 この戦艦島には死体を埋めるのに都合のいい山とかないし。


 ドラム缶に詰めて海に捨てるのも無理。


 比喩的な意味合いはともかく、海も山もないからね、戦艦島には。


 必然的に捨てたいものはここに搬入するしかないし、そんなところに目撃者がいたら一緒に始末してしまえ、ってなるよな。


 目撃者なんて存在していいことなんか1つもないのだから。


 逆に不都合なことはいっぱいありそうだし。


 僕は隣のロッカーを開けてみた。


 もう1人、別の女の子が入っていて、その隣にも別の女の子が入っていて……なんてハーレム展開ではなく、普通に清掃道具が入っていた。


 ロッカーもろとも、まとめて捨ててしまえ、という古びた箒や塵取りだが、いまこの瞬間なら2人目の女の子よりも毛先がチビたデッキブラシのほうが役に立つ。


 本当ならガンロッカーが落ちていて、猟銃と弾でもあればもっといいし、せめて金属バットとか、木刀とか、デッキブラシより頑丈そうで与ダメージの大きそうなものが欲しいところだけど、まあ、あまり贅沢を言ってみてもはじまらない。





 さあ、戦争の時間だ!




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