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故、罪となる  作者: 執筆:作者不明 考案:Vector・作者不明
3/4

狂愛

愛というものは家族を通じて繋がっている。

そんな愛のリレーのバトンは今君の手にあるのかもしれない。

そんな愛の如くありふれた話。


Q.あなたにとって愛とはなんですか。

A.人の始まり。だと思います。

By.作者不明。


Q.あなたにとって愛とはなんですか。

A.人の為に尽くすこと。

By.Vector104


ーーーー最後まで愛してくますか?

  ー0ー


 狂愛【きょうあい】


  常軌を逸するほど激しく人を愛すること。


  ーー日本国語大辞典より抜粋


 ー1ー


 ーー1


  そんなこんなで。

  僕は現在、ベルフェゴール宅にお邪魔している。


「ベルフェゴールさん、片付け、しませんか?」


「やだよ。めんどくさい。」


 ーー2


  悪魔であることが明かされ、流れるまま僕は結寿を眠らせた。その後は一酸化炭素中毒によって意識が遠のき、焼ける体育館の中からベルフェゴールが助けてくれたわけだ。ちなみにその助けている間に1乙してる。


  44乙。


  助けるとはなんだったのだろうか。


「zzz」


  隣では結寿が寝ている。

  溶けてしまいそうな白色の髪に、淡い柔らかな赤紫色の髪が混じっている。所々、火災によってちぢれてたり僕の血がついてたりと中々散々な髪になっている。

  この狭いコンクリートの箱の中央に置かれた申し訳程度のちゃぶ台の前で僕は正座で座る。

  ほとんど足に結寿当たるくらい近い。

  寝息が分かるくらい。

  髪の美しさに気づくぐらい。

  彼女の麗しさに酔ってしまうくらい。


「ねぇ、眷属。」


「はい。なんでしょう。」


「あれを説明してなかったからね。話しておかないと。」


「・・・?あれとは?」


「めんどくさいなぁ。あれはあれだよ。眷属が戦う理由。」


 あぁ。

 疲れで忘れてた。


「今私達は魔界戦争をしているわけ。遊びでね。」


「遊び・・・」


「暇なんだよ。悪魔は。ルシファーとかマモンは悪魔崇拝者サタニストから召喚されることが多いから忙しいけど。」


「マモン・・・?強欲の罪の?」


  ルシファーなら有名な悪魔だから悪魔崇拝者サタニストから呼ばれるのは分かるけど、あまり聞きなれない、『マモン』という言葉に、どうも引っ掛かりを覚えた。


「お。七つの大罪、知ってるの?良かった。めんどくさいからね。1から教えるのは。」


「他にはサタン、レヴィアタン、アスモデウス・・・、」


「そして私。ベルフェゴールよ。」


  そういえば結寿が「アスモデウスさんが・・・」なんて言ってたっけ。ベルフェゴールが続ける。


「その7人で魔界戦争してるわけ。何世紀も・・・もう10世紀近くやってるか。」


  さすが悪魔。スケールが違う。


「でも飽きちゃったわけ。ルシファーとサタン勢力が強すぎるんだよね。ルシファーはその信仰力が。サタンはその魔力が。」


「・・・。」


「だからリセットしよう。そしてそれぞれが直接戦ったら面白くないから眷属を作って、それで戦わせよう。ってなったわけ。」


「それで僕が選ばれたと・・・。」


「そ。怠惰に合う人間が眷属くらいしかいなくってねぇ。」


「結寿は『狂愛』の改罪なんて言ってましたけどそれはどの悪魔の眷属なんですか?」


「それはアスモデウスだよ。色欲の大罪。『内面上最強』。各々の強さだけで言うならトップ3くらいの強さはある。」


「トップ3・・・。」


「ちなみに言ってなかったけど、ここベルフェゴール領はアスモデウス領の中にあります。」


 !?


「え?今なんと・・・?」


「だから、ここはアスモデウス領の中にあるビルの一室。なんだよ。」


「マジかよ・・・。もう僕たち劣勢スタートかよ・・・。」


「いや、アスモ領内に我らベルフェ領があるのは自らの意思。これも別に白旗上げたって意味じゃないからね。」


「なんだ」


「ただ、自分の領土を確保すんのがめんどくさかっただけ。」


「ある意味劣勢・・・。」


「じゃあ、行こうか。」


「どこへ?」


「彼女の、」


 ベルフェゴールは結寿に指さす。


「主の元だ。」


 ーー3


  場面は変わらない。強いて言うなら、ベルフェゴール・・・もとい、アスモデウス領内のビルの一室の出口に移動した。今からアスモデウスに会いに行く。

  『絶対的安静』は時間経過よって解除される。そして注ぎ込む魔力の量を調整することで、その時間も変えることも出来る。僕は『怠惰』の魔力との波長が合うが、元の魔力がなかったため、寝せれてもせいぜい数十分程度だ。


「彼女・・・まだ寝てるね。もしかしたら疲れでそのまま寝てるのかも。よし。めんどくさいことはさっさと済ませよう。引き伸ばしてもめんどくさいし。だから、眷属。起こしてきて。」


 ・・・。


「やです。」


「なぜ」


「彼女のこと・・・。話してなかったですね。」


「あぁ、そうだったね。何かしら、縁というか関わりを持っていた風に見受けられたけど。」


「そうです。結寿は僕と、切っても切れない関係があるんです。切っても切れない。といっても、切りたくとも切れない。忘れたくとも忘れられない関係です。」


「ほう。」


「今から1年ほど前のことです。僕は結構モテました。自分で言うのもなんですけど。運動も勉強もそこそこできるつもりです。告られたのも1度や2度じゃありません。」


「彼女が惚れたのか?」


「その通りです。ただ、その愛の量が尋常じゃなかった。」


「量・・・。」


「端的に言ってしまえば、ストーキングされました。ずっと、全ての移動を監視させられました。気づいたのはそれから1ヶ月経たないくらいでした。恥ずかしがり屋で、声をかけれないのかと思っていましたが、特に気にも止めず、無視していました。しかし、結寿は根気強く、僕を付け回し続けました。聞いた話によると、普段は内気な少女なのにいつも休み時間はどこにいるのか分からない。らしいです。そうです。結寿は休み時間、いつも僕のところにいたのです。影から。影のように。影と共に。」


「・・・。」


「ある日、友人が僕がストーキングされていることに気づき、注意してきました。このことについて知っていのか、このことについて知っているならなぜ注意しない。と、僕にも、結寿にも言ってくれたみたいです。自分も注意をしないと思い、その日の下校中結寿と話すことにしまいした。しかし、いるはずの、結寿はいなかったんです。いつもいるはずなのに。上手く隠れているわけでもなく、単にいないんです。本当に、跡形もなく。その日はその後、友人の注意が効いたのかなと思って帰りました。」


「・・・。」


「次の日、僕のクラスの教室では1人欠席していました。僕の友人は『何者かが背後から固いもので殴られ、現在意識不明の状態』で学校に来ませんでした。友人に命に別状はありませんでしたが、彼は・・・、二度と僕の目の前に、姿を現さなくなりました。こんな事があった後でも、結寿は僕を付け回しました。その日、注意しようと思い話をしましたが、全く効果がありませんでした。『私の愛を妨げるものに容赦はしない。それが例え凍琉君だとしても。』なんて。・・・こんなことがあと2度起きて、『僕の近くにいると、何者かに襲われる』という謎の噂が立ち始めました。それから僕は近くに友人すらいなくなり、引きこもるようになり、いくつもの県境を跨いで、この今通っている高校に転校してきたわけです。」


「お前の人生をめちゃくちゃにしたと・・・。」


「えぇ。だから、切っても切れない。切っても切りきれない。忘れたくとも忘れられない。そんな関係なんです。だから、この高校に来たのも本当に驚いたし、こんな性格になってるのも驚いきました。」


「力は人を狂わせる。そして愛もまた、力の一つだ。」


「全く、その通りなんですかね。」


「だからといって許すわけには行かないからね?」


 ベルフェゴールは笑った。目は輝きをなくしている。


「え?」


「起こせよ?眷属が。」


 ーー4


「ぐぅ・・・。」


「zzz・・・。」


 結寿は目の前で寝ている。気持ちよさそうに。これからこいつを起こさなくてはならない。起きたら・・・殺されるかもしれない・・・。


「起こしたくねぇー。」


「・・・ん?」

 ん?

 まさかの1人で起きやがった。

目覚めはいい方なのか、周りを見渡して、すぐに僕を発見した。目を合わせると、飛びついてきやがった。


「凍琉君!」


ひょい。


「あ痛!」


「飛びつくな・・・。とりあえず僕はお前のことが大嫌いだから、1人で起きれるならこっちに来い。大嫌いだから。」


「・・・むー。すごく露骨に嫌うなー。」


そりゃ嫌いだから。起き上がって伸びをする結寿。


「ねぇ、私の狙撃どうだった?」


「どうもこうも、殺されてるのにいいも悪いもないだろう。」


「じゃあ体育館での拷問は?」


「お前は常識というものを知らないのか?」


「知ってるよ。」


「知ってるやつはこんなセリフ吐かねぇ。」


全く。


一見すればただの仲良し同士にもみてとれそうな会話だが、ほんとにホントの本当に僕はこいつのことが嫌いだ。

なんてったって、僕の人生をめちゃくちゃにした張本人なのだから。まぁ、事はもう終わったので、単なる私情の恨み怨みではあるのだが。


「ねぇ凍琉君。私のことどれくらい好き?」


「お前が僕のことを好きなくらい嫌いだよ。」


しかもそれ、付き合ってる奴同士でやる会話じゃないのか。付き合ったことないけどさ。


ー2ー


ーー1


それでは、アスモデウスに会いに行こう。


と、ベルフェゴールはぬいぐるみに埋もれたドアノブに手をかけた。がちゃり。と、普通のドアノブのようにそのドアノブは回った。ドアを開ければその先にあったのは--


椅子に座る男性だった。

机の前には色々な紙、古本、魔導書、が置いてある。

スキンヘッドの、髪、というより、毛ひとつもないような男性。緩い、引っ掛けただけのような和服っぽい服装。


「やぁ、ベルフェゴールくん。ひさしいね。」


柔らかい口調。脳が溶けそうだ。

というかこの人がアスモデウスとなると、あの部屋は直にアスモデウスの部屋とつながっているのかと、後ろを振り向くと、


「無い・・・。」


どうやらワープ魔法を使ったようだ。なんのエフェクトも、音も、光も出なかったが、


「ちょっと話をしたくてね。不本意ながら。うちの眷属がめんどくさくてね。」


「ちょっ--」


「でさ。その話ってのがさ、一つのお願い・・・みたいなものなの。同盟。同盟を組まないか。」


「ほう?同盟とな?不可侵条約は結んだはずだが?」


「それとは別。このうちの眷属に対して、アスモの眷属ちゃんを戦わせないで欲しい。『娯楽』の改罪と『狂愛』の改罪の同盟、『狂楽同盟』ってところ。」


「メリットは?」


「まぁまぁ、急ぐな。結論はゆっくりだらしなく辿り着くものだよ。・・・この同盟内容は簡単に言うと不可侵条約。『怠惰』の大罪と『色欲』の大罪のあいだで不可侵条約があるように、この『娯楽』の改罪と『狂愛』の改罪のあいだでの争いを極力抑えたい。」


「それで?」


「メリットは・・・。自慢に聞こえるが仕方がない。うちの眷属は無敵だ。無敵と言うよりは無敗。しかし、連戦無勝。されど、連戦無償。」


「なるほど。その連戦無償の敵が味方までとは言わなくとも敵には回らないと。それはそれは美しいな。」


「いや、味方になってもいい。だから『同盟』。なんだよ。」


「そうか・・・。戦力が未知数だな。なら少し、試験を。試練を与えていいか?」


「いいよ。ただ、戦力としては未知数なんかじゃない。ゼロだ。今のところ。アスモの眷属ちゃんを1とするならうちの眷属は、40いくらか死んでやっとアスモの眷属ちゃんを倒せるくらいだ。」


数えてたんかい・・・。


「だから。過度の期待はしないほうが、」


いい。


と言い終えるまでも無く、僕はその声をききとることが出来なかった。


耳が消えていた。いや、耳ごと、頭も。

また始まるのか。


45乙。




ーー2




「がぁ!」


後ろにいた結寿に体当たりする形になって倒れた。

当然の如く、頭は生えてくる。


「ほう。面白いな。この術式は。」


アスモデウスはいつの間にか椅子から立ち上がっていた。机の前にいる。


46乙。


意味がわからない。


47乙。頭が裏手で吹き飛んだ。


48乙。心臓を拳で貫かれた。


49乙。蹴りで胸部が消えた。


50乙。手刀で右肩から左の横腹まで切り裂かれた。


51乙。足刀で真っ二つになった。


52乙。首を握りつぶされた。


53乙。頭を潰された。


54乙。頭を潰された。


56乙。四肢をもがれた。


合計。10回死んだ。


「回復・・・ではないようだな・・・。たしかに、ここで診療所の使用禁止を言い渡しても意味がなさそうだ。」


「となると?」


「いいだろう。同盟成立だ。ただし、一つだけこちらからも。」


「なんなりと。」


それは僕が言うセリフなのでは・・・。


「結寿と、『仲良く』なってもらう。」


「・・・はぁ!?」


「まぁ。」


「そんなんでいいのか?」


「1度戦ったことのある同士だからあれだけど、仲良いことにこしたことはない。友情は麗しい。愛情は美しいものだ。」


「・・・こいつと・・・仲良く・・・。」


「それじゃあ、遊園地行きましょ?凍琉君!」


「いやいや、仲良くなったからって遊園地にまで行くことではないだろ」


「女の子の要求は断らないのが普通だぞ?」


「そうだな。美しくない。」


えー。

上司から言われちゃあ仕方ない・・・。

と言っても行きたくねぇー。


ー3ー


ーー1


「アスモデウスさんがどっかからか見張ってるみたいだから逃げても無駄よ。じゃあ、楽しみましょうか!」

結寿はらんらんとした目でそう言った。



2時間前ーー。



あのあと僕はベルフェゴールの『絶対的安静』で睡眠を強制的にとり、その足で遊園地に向かった。もちろん寝たのはベルフェゴールのあの箱みたいな部屋。寝違えそうだけどぬいぐるみが柔くて助かった。よかった。ちなみに結寿はというと一時アスモデウスの元に戻り、休養を取ったらしい。


「なぁ、あのあと校舎はどうなったんだ?」


「あぁ、そういえば倒壊してたね。あれは術式でどうにかするよ。安心して。死んだ人間も少なくはないけどそういうヤツらの記憶も含めて全部改変させておくから。」


「怖・・・。」


「でも眷属友達いないんでしょ?」


「・・・。」



ーー現在。



そんなこんながあって、ワープを使って近くの遊園地に来た。ちなみに昨日は金曜日で、もう日をまたいで今日は土曜日らしい。


「わぁ!やっぱり都会の遊園地は違うわね!」


「まぁーな。って、こっちくんな!腕を組もうとするな!」


「なんで?アスモデウスさんが『仲良くしなさい』って言ってたでしょ?」


「別に恋人になれって言ってたわけじゃあないでしょ。」


「ちっ。バレたか。」


「バレないと思ってたのか。」


心外だな。


「ともあれ、どこから行きます?私は凍琉君とならどこに行ってもいいですよ!」


「よし。じゃあそれぞれ家に帰ろうか。」


「それじゃあ離れ離れに・・・あ、一緒に同じ家に住もうってことね!」


「いや、ポジティブ思考すぎるだろ。」


てかツッコミどころから違うわ。


「・・・仕方ないなぁ。」


「・・・?何が仕方ないんだ?」


「いえ、仕方ないので手を組むのはやめます。」


「代わりに手を繋ぎますとか言うなよ?」


「代わりに手を繋ぎます。」


「言っちゃったよ。」


「ほらほら!」


結寿は手を差し出す。この手を握れって・・・それ意味あんのか・・・。でもアスモデウスがどっかからか見ているって考えるとやっぱり手を繋いで仲良いアピールしとかないとな・・・。


「はぁ。結寿。後で覚えてろ?」


「決闘ならいつでも受けてたちますわ。」


そう言って結寿は遊園地の中へと僕を引っ張っていった。

さらっと流すなよ・・・。

なんだか、女の子と手を繋いでいるって言うのが初めてだからなのか、妙な冷汗をかいてしまった。


ーー2


普通、こういったイベントの時は何かしら僕と結寿、共通の脅威が現れて一緒に仲良くその脅威を排除するのが王道だ。でも


「ほんとに楽しんでるだけじゃん・・・。」


僕はレストランのテラス席で項垂れてた。


「そんな言わないで。はい。ソフトクリーム。」


「あれ?結寿の分は?」


「いえ、特に欲しくもなかったものですから。」


「じゃあいいや。結寿が食えよ。お前からものを貰いたくなんかない。」


「え・・・。(きゅん)」


なんか妙な音がした気がするが気のせいだろう。これだけのことを言っていれば、たとえ結寿の立場がぼくだとしても心に少なからず傷を負っていたであろう。


「凍琉君。優しい・・・。ありがたく、いただきます。」


どうやら愛は言語を間違った方法で翻訳するようだ。


かの夏目漱石も『今夜は月が綺麗だ。』を『I love you』としていたらしいし。全く、愛というものは分からないものだ。


ーー2


「そういやさ。」


「ん?」


ソフトクリームを舐める結寿に聞いてみた。


「お前どうやってここに来たの?親はどうした?」


「殺しました。」


「え・・・。」


嘘やろこいつ・・・。


「私はあの、あの事件が終わって、凍琉君が転校をした後、高校を中退していました。もちろん、その事件のことが原因や。」


「だろうな。」


「長いのではぶきますが、私はそのあとアスモデウスさんに出会って『狂愛の改罪』の悪魔となり、この『サキュバスのポーチ』を貰いました。これで両親を殺しました。」


「・・・。」


そう言って結寿はバッグからパーチを取りだした。綿でできた質素な可愛らしいポーチ。しかし、それは僕を40回と殺した武器が格納されている。正直見た時に心臓の鼓動が早くなった。


「『サキュバスのポーチ』は異性に最も有効なものを生み出すという術式が刻まれた『魔製道具アーティファクト』なのよ。普通の使い方で言うなら、異性が好きな匂いの香水や異性が好きな色のネイルセットだったり、とにかく、異性を『落とす』ものを生み出すの。でも、私は、私は愛の形が歪んでるみたいだったから、出てくるものがこんなものばっかりなの。


そう言って結寿は拳銃を取りだした。


「おいおいおいおい!間違ってもそれ出すな!人混みの中じゃあお前がモデルガン持ってるってことで大目に見てもらえるだろうけど、お前それ打つだろ!さっさとしまえ!」


「あら。そう?かわいいのに。」


いや、そこはかっこいいんじゃなくて?


やっぱりこいつは何かが違っている。歪んでいる。正しくない。


根本的なものの考え方というか、常識的な何かが。


「それを、『適正』って言うんだよ。」


「え?」


この声は結寿じゃない。と、顔を上げると、そこには結寿の隣。ベルフェゴールがいた。


ーー3


「ベルフェゴール・・・。どうしてここに?」


「様子見さ。というか、主の名を呼び捨てするな眷属。」


ポテ。と、ベルフェゴールが頭を殴った。結構強めに拳で。


「今更・・・じゃあ、なんと呼べば?ベルフェゴール様?」


「いや、ベルでいい。その方が気が楽。めんどくさいでしょ?ベルフェゴールだなんて長ったらしい名前。」


「えー・・・んー、いいや。遠慮なくそう呼ばせていただきます。」


「うむ。」


「まず、ベルのその見た目年齢で1人で遊園地って中々辛かったのでは?」


「ふん。そこは仕方ないことよ。こうやって眷属たちと待ち合わせをしてたって体でいけばいいでしょ。めんどくさい。」


「・・・そうですか。あと、その『適正』ってなんですか?」


「『適正』は『適正』よ。要は属性ってこと。」


と、代わりに結寿が答える。


「あらゆるものに『魔力』というものは存在していて、その『魔力』にもそれぞれ属性があるの。私は『色欲』の属性が強いけど、凍琉君は『怠惰』の属性が強かったのよ。」


「へー。その魔力次第・・・『適正』次第で性格とかが変わるのか?」


「あぁ。だからこの結寿ちゃんは歪んだ愛を持っているし、眷属は楽しい生き方をしてる。若干ここら辺は変わっているけどね。だから『色欲』じゃなくて『狂愛』だし、『怠惰』じゃなくて『娯楽』だし。」


代わりにベルが答えたので、僕はぶっきらぼうに答えた。


「そんな楽しんでないですよ・・・僕。」


「ふん。その意味ものちのち分かることさ。おい眷属。アイスクリーム買って。結寿ちゃんが食べてるの見たら食べたくなった。」


「主命令ってやつですか。めんどくさいですね。」


「あぁ、めんどくさいから眷属が買いに行くんだよ。めんどくさいなぁ。」


「・・・。」


仕方なく。僕はその席を立った。


ーー4


ところ変わって帰り道。と言ってもその帰り道は僕の帰り道ではない。


「ねぇ凍琉君。」


結寿の帰り道だ。


少し前にベルから


「女の子の帰り道くらい男がついてってやれ」


と言われ、またも強制的に帰らされている。


「私は全てを捨ててここに来ました。」


隣には結寿がいる。何故か手は繋いだまま。


「あなたについていくために。」


周りはもう暗い。顔は、よく見えない。


「親も殺してきました。」


少し、握られる手に力が入る。


「少し話をしましょう。私は中学の時、劣等生でした。赤点ばっかりで前通っていた高校に入れるかどうかも怪しいくらい。」


おいおい、前通っていた高校なんてかなり落ちこぼれ高校だぜ?そんな高校に入れないくてどうする。


「深くは・・・言いませんが、私はずっと前にあなたを見て一目惚れをしました。」


そんなことあったのか。


「凍琉君は知らないでしょう・・・。それから凍琉君の行きたい高校を調べて、一生懸命勉強して、勉強して、勉強して、勉強して、勉強して、勉強して、凍琉君のことを愛しました。」


なぜ愛す。


「無事、その高校に入学できました。当時学年では3位に入ることもできました。」


「そうか。結寿は勉強できてよかったな。僕は今の高校、進学校すぎてそうそうに留年しそうだよ。」


「その時は・・・私が教えてあげますよ。凍琉君。」


「その時は是が非でも断る。」


「そうですか。」


笑いながら言う。


「愛って言うのは努力なんですよ。」


顔を上げて結寿は言った。


「勉強のしすぎで、私は毎日勉強しなければ禁断症状が出るようになりました。勉強中毒です。」


「・・・。」


「凍琉君は私のこと、どれくらい好き?」


「・・・そりゃあ・・・--」


僕の返事を待たず、彼女は言った。



「私は諦めませんよ?」



街灯が結寿を照らす。光が淡い赤紫色を含んだ白髪に反射する。表情は見えない。


「私の家はここです。」


「お、そうか。」


「安心してください。凍琉君の家の位置は把握済みです。」


「なんで知ってんだよ。」


「禁断症状が出たら、すぐに凍琉君に会えるようにです。」


そう言って結寿は自分の部屋に帰っていった。


そういや、結寿ずっと笑ってたな。


ー3ー


ーー1


僕には毎朝する、いわゆる『ルーティン』と言うやつがある。それはゲームだ。朝、眠気混じりに太陽に光ではなく、ディスプレイからの光を浴びるのは格別だ。登校する2時間前に起きてそれから軽くワンプレイをする。朝食を取って、準備して、またワンプレイ。それから一人で登校。

今日も今日とてパソコンとスマホと睨めっこしていていると、


「凍琉~!お友達!」


母が呼んだ。

嫌な予感しかない。


「はいはい。」


ため息混じりに呟いて玄関へ向かう。

ドアの外で待っていたのは、


「ごきげんよう。凍琉君。さぁ、学校へ行きましょ。」


「断る。まだログインが終わってないんだ。」


また、終わらない日常が始まる。悪魔としてのちょっと日常が。

恋に恋するな。

愛を愛せ。


どうも。作者不明です。自分は人の始まりと答えました。愛というもので人は生まれます。それだけではありません。人が何かを始めるとなる時、そこに必ず愛があります。


どうも。Vector104の代理執筆をしている作者不明です。彼が言うに「こんな愛し方しか知らない」だそうです。重すぎる愛は身を滅ぼします。気をつけましょう。


途中までしか投稿できていなかったかとについて、深くお詫びします。今度から気をつけて参ろうと思います。


それでは。続きがあるなら続きを、無ければ出るまで、もしくは別シリーズを読んでお待ちください。


お読みいただきありがとうございます。


次回、欺瞞。

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