娯楽
想像とは至高の苦痛
娯楽とは至高の快楽
故に物創りこそが至高の叡智なり
Q.あなたにとって、「娯楽」とは?
A.人間が持つ、現実から背くための本能のこと。だと、思います。
By,作者不明
Q.あなたにとって、「娯楽」とは?
A.「生きること」
By,Vector104
ーーーー最後まで、お楽しみください。
-0-
娯楽【ごらく】
人を楽しませ、なぐさめること。また、楽しむこと。
-広辞苑より抜粋
-1-
ーー1
チャイムが鳴る。
担任の口から
「転入生を紹介する。」
なんて声が上がった。周りはザワザワと騒ぎ始めている。耳を澄ませばどうやは今回の転入生は女子らしい。そうかそうか。女子か。転入生は可愛い女子と相場が決まっている。
ガラリ。
と教室のドアが開くと、そこから入ってきたのは淡い赤紫色を帯びた白髪の少女だった。
「紹介しよう」なんて教師の声を遮って彼女はこう言った。
「私の名前は『明日持結寿』。よろしくね。」
ーー2
彼女は、元気いっぱいの笑顔と共に悠々と僕の目の前まで歩いてきた。彼女が手に持ってるポーチに手を突っ込むと、そこから現れたのは拳銃だった。
「やぁ、凍琉くん。久しぶりだね。」
目の前で砲炎が煌めく。
避けるつもりも避けないつもりもなかった。突然のことすぎて何が起きたかもわからない状態だから。
弾丸は眉間を通って両方の眼球の側面を少し抉って頭蓋骨に当たった。回転と進撃を繰り返す弾丸はゴリッと音を立てて骨を砕き通す。脳みそをぐちゃぐちゃにかき回して弾道を少し歪ませたまま頭蓋骨のだいたい反対側で出口を求めるように再び弾丸は炸裂する。後方では突き破ってでてきた弾丸と、砕かれた骨、かき回された脳みそと溢れ出る血と脳漿。ベチャベチャと音を立てて床に落ちてはカラリと乾いた金属音が聞こえてくる。
1乙。
時が逆流したように砕かれた骨、かき回された脳みそと溢れ出る血と脳漿が生み出される。皮膚が蓋をして僕は弾丸を食らう以前の状態に戻る。
ーー3
「う、うわぁぁぁぁぁああああぁぁああぁあぁぁ!!!」
「きゃぁぁぁぁああぁあああぁぁあぁあぁあぁぁ!!!」
「あああぁぁぁああぁあぁあぁぁぁぁぁああああ!!!」
「いやぁあああぁぁぁあぁぁぁああぁあぁああぁ!!!」
各々が各々の通り各々の口から絶叫する。僕もそれに紛れて叫んでいた。涙が滝のように流れた。
結寿は容赦なく、僕の額に弾丸を浴びせる。
1発。
2乙。
1発。
3乙。
1発。
4乙。
「ぐがァ・・・」
1回の弾丸で打たれ意識が遠く。死んだと思った次の瞬間、また1回の弾丸で叩き起される。1回の弾丸で気絶。また起こされる。
「うわぁ!」
打たれた時の衝撃で椅子が倒れてしまった。今更、恐怖で立ち上がることも出来ない。そのまま頭を打ったが、こんな痛み、さっき味やった痛みに比べれば、かゆいものだ。
周りはどうかと言われると、もう意味がわからなって教室中がパニック。クラスの皆はもう外に逃げてしまった。先生もその中の一人に含まれている。避難訓練なんて意味がなかった。
「はぁ・・・」
震えながら、地を這って教室の外に出る。
どっ。
と、後ろにからまた打たれる。心臓を貫いた弾丸が僕の目の前で廊下の床を穿つ。それ相応の痛みを感じる。しかしどこか心地いい。
5乙。
そう言えば人は死ぬ瞬間、死ぬというストレスを緩和するためにアドレナリンやらなんやら、興奮物質が大量に分泌されて『気持ちがいい』んだっけか。なんて、思いながら僕も廊下を走る。下り階段はダメなようだ。人で溢れ返っている。もう、上るしかない。妙に冴えた頭をまた、弾丸が貫いた。
ーー4
6乙。
「うわぁぁぁぁぁ!」
流れ弾が誰かに当たったのかもしれない。ここでどうにかしていても、流れ弾でほかの人に迷惑がかかる。急いで、特に考えもなしに屋上へ向かった。
「はっ!はっ!はっ!はっ!」
息を切らして、震える足を叩きながら階段を駆け上がる。
「くそっ!やっぱり!」
ガチャガチャガチャ。
屋上なんて来たことないからもしかしたらなんてことも考えたけど開いてなんか居なかった。とたとた。と、結寿が階段を上がる音がする。
「おんどりゃァ!」
少し助走をつけて思いっ切り窓ガラスを割った。曇りガラスはパリンと割れて僕の手を何ヶ所か切った。割った窓から屋上に出た。
ズドドドドドン。
「屋上に出たからって何かなるの?」
さっき僕が苦労して割った曇りガラスのドアは彼女の持っているマシンガンによって破壊された。今度はそれか。
「私が・・・。私がどれだけ探したか・・・。寝れないほどあなたを思ってるの・・・。あなたを・・・。あなたをぉ!」
結寿はマシンガンの銃口を僕に向けるとフルオートで容赦なく蜂の巣にしてきた。数多の弾丸は僕を貫いて、貫いて、貫いて。しまいには僕を屋上の外にまで追いやった。そう。外にまで。
-2-
7乙。
「ああああああ!」
マシンガンの雨が終われば体はまた元に戻っていく。ただ戻った時、僕は地面に足をつけていなかった。
浮遊感。
ごきり。
8乙。
無様に頭から落ちた僕は頭がどうにかなって意識を取り戻していた。ここは校庭前。誰もいなかった。多分みんな学校外に逃げてしまったのだろう。僕も逃げなくしちゃだな。
「が!」
9乙。
元に戻った首で屋上を見ると、長いスナイパーライフルを持った結寿がこちらを見ている。
ズドン。
10乙。
慌てて校舎の中に逃げ込む。
この校舎は4階建て。屋上から1階まで降りるなら時間がかかるはずだ。少し休んで、近くの民家を経由して逃げよう。
どごん。
どごん。
どごん。
どごん。
どごん。
どごん。
「ん?」
11乙。
次の瞬間、僕は瓦礫の中にいた。
ーー1
どぉぉん。
瓦礫の中で僕は意識を取り戻していた。
なんなんだ。一体何が起きているって言うんだ。
話を整理しよう。今日、転校生が来た。転校生が僕に向かって拳銃を打ってきた。そのあと逃げながら、屋上に行って蜂の巣にされて、それで今ここどこだ。
「あぁ。そうか、ここ校舎の中だ。」
正確には校舎だったもの。だとするとあとどごんという音はグレネードランチャーとかそこら辺?
じゃあ結寿も死んだんじゃ・・・。
「それ以上に自分の体のことだな。」
僕は今、何回だ?10何回か死んでいる。が、生きている。確実に死んでいるはずなのに。不死身の能力を手に入れたって考えでいいのかな。欠点は痛み。というものを感じることか。右腕を見やる。そこには屋上で着いたはずの傷が残っていた。
「傷が・・・残っている?」
「ここか。」
!?
ズドン。
12乙。
そこには拳銃を持つ結寿が。
ーー2
あった。
「死んでない!」
「あぁ。アスモデウスさんの術式を借りて回復した。」
ズドン。
13乙。
「足の骨くらいなら一瞬で治る。」
ズドン。
14乙。
「それより凍琉くん。」
ズドン。
15乙。
「何回死ねば」
ズドン。
16乙。
「気が」
ズドン。
17乙。
「済む」
ズドン。
18乙。
「のっ!?」
ズドン。
19乙。
「はっ!」
歯を食いしばって痛みに耐える。この6回死んだうちの2回は気絶してる。彼女の拳銃を手に取って動きを封じる。
「よっ。」
が、弾かれた。彼女はアサルトライフルに銃を切り替えてフルオートした。
ガガガガガガガガガガガ。
20乙。
「お前こそ・・・。僕を・・・。」
かちゃり。
ガガガガガガガガガガガ。
21乙。
「何回殺せば気が済むんだ・・・。」
「気が済むまでよ。」
ーー3
どごん。
今度はグレランだった。さすがに結寿はバックステップをとりながらだった。もちろん僕はそんなことはしてない。グレランをまともに食らった僕は多分体を真っ二つにされただろう。たが意識が戻った頃には体は元に戻っている。ただ、僕自身は吹っ飛んで数百メートル先に転がっていた。
何はともあれ距離を置くことができた。体育館に逃げ込むことにした。ていうか僕はこれ以上逃げて意味があるのだろうか。
がらり。
と、体育館のドアを開けると。
「こっち来い。」
ボサボサで伸ばしっぱなしの黒髪を色んなところでとめてる年は同じくらの女の子がいた。顔立ちは東洋人と西洋人のあいだ。ぶかぶかなパーカーを来ており、裾を余らせている。
「面倒臭いから。」
「・・・。あなたは誰ですか?」
「名乗る必要ある?」
「ある・・・んじゃないですか?」
「とりあえず入れ。」
「あっ、はい・・・。」
中は汚いに尽きるようだった。有り余る物、物、物。ぬいぐるみや人形なんかが山のように積み上げられている。中央付近にはテレビのようなディスプレイが大きく場所を取っていた。配線の先は分からないが、多分このゲーム機に繋がっているのだろう。ゴミはゴミ袋に入れられているだけマシ。そのゴミ袋はまた、山となって部屋を散らかす要因になっているようだった。
かろうじて見える壁、天井、床はコンクリート打ちっぱなしで、今はエアコンをガンガン効かせた部屋になっているので、涼しいっちゃ涼しいが、エアコン特有の頭痛がしてきた。
汚い・・・。まるでこりゃあ・・・。
怠惰だ。
と、ボサボサ頭の彼女は僕をこの部屋に入れて、足で床に散らばるぬいぐるみやらゴミ袋やらを踏んで、平にした。もう、どかす気は無いらしい。そして
「現七つの大罪がひとつ。『怠惰』を統べる悪魔、ベルフェゴールよ。それでいてあなたの主。よろしくね。『娯楽』の眷属。」
-3-
「・・・は?眷属・・・?」
「そのままの意味よ。分からない?私があんたがこの世界で初めて泣く前からあなたは私の眷属なの。さ、座って。」
「僕がまだ胎児だった頃の話しですか・・・。」
と、頷きながら座る。床に敷かれているぬいぐるみはふわふわだった。座布団はいらないようだった。いや、むしろぬいぐるみが座布団・・・?
「そ。眷属はいつでも作れるからね。早いうちにしといた方が、あとから楽かなーって思ってたけど。まさかあんたがここまで弱いというか防戦一方とはね。」
「そんな言ったってなんなんです?これ?戦う意味もわからないし、相手も意味がわからないし、何より自分自身が意味がわからない。」
「あーウザったらしい。めんどくさいなぁ。いい?1回しか言わないから真面目に聞いて?お前は私の眷属、『7つの改罪』がひとつ、『娯楽』の悪魔なのよ。」
ーー1
「はぁ、悪魔だったんですね僕。」
「ふん。意外と淡白な反応ね。・・・悪魔にはそれぞれ『術式』ってーやつを作ることが出来るの。私が勝手に作っといた。これよ。」
というか10何回も殺されてる僕からしたらもう、なにも驚かないと思う。
そう言ってベルフェゴールは立ち上がった。
「口開けて。はいあーん。」
僕はなんの抵抗もなく、口を開けた。そして、ベルフェゴールは口の中に手を突っ込んで、僕の舌を引き抜いた。
ぶつり。
「がぁ!」
ギギギ。と、脳みそで歯車が壊れる音がすると舌があった場所で、無いはずの感覚が暴走する。
そして、暴走した感覚は意識をどこか遠いところへと連れていく・・・。
ーーーー。
22乙。
ーー2
「・・・い。おーい。」
「はっ!?あぁ、今までは夢・・・」
「なわけないだろ。」
ペちペちと、ベルフェゴールは僕を叩いて起こしてくれた。このまま夢だったでは終わらせてくれないらしい。
ベルフェゴールは僕の舌を見せた。その舌の裏側には確かに魔法陣と思われるものが痛々しく刻まれていた。
「・・・気づかないもんですねー。」
「気づたら面倒だからな。気づかれないよう、ここに彫っておいた。この術式の内容は『死亡時、その死ぬ原因となる傷や病のみを完治させた状態で蘇る』ってー内容だ。二度と言わない。」
「・・・はー。」
「あとこれ」
と、ベルフェゴールはひとつの、ひとつの、鳥籠のようなストラップを渡した。中には紅色の輝く宝石のようなものが入っていた。ディスプレイの微かな光を反射してキラキラと光っている。
「フェニックスだ。」
「フェニックス・・・?。」
「お前の使い魔だ。眷属とは別だ・・・。呼び出せばいつでも出てくるよ。」
「はぁ・・・。」
「あと私の術式も教えといてやるよ。こうやってこう書くんだ。覚えただろ?」
「あぁ、ありがとうございます。どちらかと言うと嫌でも覚える・・・というか覚えてなくても日常生活でうっかり書いちゃいそうな形ですね。」
「めんどくさかったからな。じゃあ、そっちに戻すぞ。」
「え?ちょっ、ちょっと待ってください!」
「待たん。なんだ?聞きたいことがまだあったか?」
「ありますよそりゃあ!細かくいえば山のようにありますけど、要点のみなら二三、聞きたいことがあります!ていうかあちら側に戻りたくたいです!死にたくない・・・。」
「はん。死にたくなけりゃあ死なねぇ事だな。ま、弱いから無理か。それじゃあお娯しみを楽しんでこいよ。」
ベルフェゴールは笑いながら僕を扉の奥へと蹴り飛ばした。
ーー3
どて。
いきなりのことで受身も何もとっていない。半分涙目だ。
て、そこは体育館の中だった。扉の前にいたのは例の如く結寿だった。不機嫌そうに腕を組んで、仁王立ちで待っていた。
「・・・どこに行ってたの?もしかしてワープの術式を使ったの?」
「・・・は?い、意味がわからなっ!」
どずん。
ぼとん。
僕の左腕が落ちた。
キラリ。と、閃いたその光は結寿の右手に握るものの先端からだった。刀。だった。
ワンテンポ遅れて痛みがやってくる。形容のしようがない、ただ、『切り落とされた』という痛み。
「う、うわぁああぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!」
なんだこれは!
右手で左肩の根元・・・もとい、腕の断面を握る。触ったことのある、筋肉が温かみを帯びた血液とともに動く。
「はっ。そんなんで終わらないよ。これじゃあ、足りないの。」
ズブリ。
右の太ももに刀を突き立てた。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあ!!!」
「どうやら強力な回復能力ではないみたいね。じゃあこれからもっと痛めつけてあげましょうか。」
「がぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ーー。」
急に眠たくなる。襲いくる『じっくりと殺される』という恐怖。冷や汗なのか血なのか分からない液体が体中で蠢く。うじうじと。
がちゃり。
と、ポーチから取り出したのは五寸釘。なんてものじゃない。言うなれば十寸釘。人の手のひら二つ分はある、太く、長い、釘だった。
どずん。
「うぐぅ・・・」
どずん。
「がはぁ・・・」
どずん。
「ふぅぅ・・・」
3本。右手のひら、右足先、左足先。完全に体を封じ込められた。そんなことより、眠い。実は痛みはそう、感じていない。感覚が、麻痺、し始めている。瞼が、重い・・・。
「それじゃあ次はこれね。」
細めた、視界から見えるのは・・・なんだ、あれは・・・鋸?
ざくり。
ーー。
ーーーー。
ーーーーーー。
ずずず。
23乙。
「はぁ・・・!」
「な、なんで・・・!」
「し、知らない・・・。し、失血死・・・なんじゃ、な、な、ないかな。」
「ちっ!」
多分それは僕を拷問できなかったという悔しさの舌打ちだろう。結寿は鋸をポーチにしまい、そのまま右手をポーチに入れてままにしている。戦闘準備体制だ。
「完全回復だ・・・。いくぞ!」
スパン。
ぼとり。
24乙。
思わず転んで後ずさる。何が起きたのか見当もつかない。右手は依然、魔法のポーチの中。
「居合抜きか・・・。」
しかもこの速度・・・。銃は習ったといえば分かるが、それなら居合までも習ったと言いきれるか・・・?もう既に5種類の銃を見かけている。それら全てを熟練していると考えると、あの歳じゃ不自然じゃあないか?
何はともあれ、近づかなくては。『魔法陣』を直接描けない・・・!
「は!」
すぱん。
ぼとん。
25乙。
ダメだ。近づけない。今は体育館のど真ん中。障害物・・・。あの刀から守れるだけの障害物が欲しい。盾になれるような・・・。あ、フェニックスがいる。こいつを飛ばはせば。
「いけ!」
ばさり。と、フェニックスは飛び立つと、僕が考えたとおり、結寿の方向に向かって飛んでいった。
結構驚いた。そのフェニックスは伝説上と同じ、雉がモチーフとなる、虹色の鳥だと思ってた。しかし、これは、違う。
ハシビロコウ。だった。
「ちっ!使い魔!いつの間にそんなものを・・・。」
まぁ、そんな言われたって召喚したのは今回が初めてなんたけどね。
ぶおん。と、刃を煌めかせるが、フェニックスには当たらない。フェニックスは炎そのものだから実態がないのだ。居合なんかの剣じゃ払えない。
どかん。
なんだか久しぶり受けた気がする。
26乙。
今度はスナイパーライフルだった。フェニックスを避けると距離を置かれ、刀の範囲内まで近づくのが面倒。かと言って避けずにいるとフェニックスの炎で焼かれてしまう。なら避けても近づかなくても殺せる武器を出せばいい。
ズドン。
27乙。
もう痛みには慣れたもんだ。痛いのは痛いが、気絶はしないと思う。多分。
ズドン。
28乙。
音よりも早く届くそれは、この至近距離じゃ打ったか打ってないかわかる前に弾丸が脳みそに届いてしまう。とにかく、どうにかしなければ。
「ギュギュッ、ギュゥオェェェエエエ」
・・・?
そこには花火を吐き出すフェニックスがいた。
もちろん、その花火というのは打ち上げ花火用の大きな火薬玉なんかではない。夏、家庭でもロウソクと安全用の水入りバケツを用意すれば簡単にできる、あれ。
手持ち花火だった。
ばずん。
29乙。
とは言っても結寿はいる。容赦なく、鷹を狩る目で僕を狙っては引き金を引いている。淀みなく。数えてもいない何本目かの首が伸びた。
僕はフェニックスが吐き出した花火を見る。やっと吐き出し終わったようだ。そこには山のように花火があった。無論、花火をこんなに集めて何ができるって話なんだけど。
ばずん。
30乙。
がさごそ。と、僕はその山の中からロケット花火を5本ほど手に取った。
「お前!フェニックス!火、付けられるか?」
「・・・。」
フェニックスが頷くと、ロケット花火から火花が散った。
火花が散ってから気づいたんだけど僕、ロケット花火の打ち方知らないんだよね・・・。
これどうするんだ?手を離すのか?それとも先っちょが飛んでいくのか?てか花火が熱いんだけど、
なんて考えていたら
ばしゅぅん。
ロケット花火は飛んでいった。運良く、結寿の方向に。
ー4ー
「きゃっ!」
可愛らしい声を出して結寿はロケット花火を右手で払ってしまった。しかし、ロケット花火は今や火のついた火薬。ロケット花火を触れば火傷するくらいの温度ではある。
「あちっ!」
「よし!いいぞ!フェニックス!ロケット花火を着火状態で吐き出せる?」
「・・・!」
フェニックスは口からロケット花火をいくつも吐き出した。
「ギュゥオェェェエエエ!オゥエエエエエ!」
ばしゅぅん。
ばしゅしゅしゅしゅしゅぅぅん。
と、遠のいていく火薬の焼ける音と匂いは結寿の方向へと飛んでいった。それを結寿は、
ズドン。
撃ち落としていた。
「それもダメなんか・・・」
ズドン。
31乙。
「熱いのだったらなんでもいいや!」
もう、山になった花火を好き勝手投げつけた。一応狙いは定めて。投げた花火をフェニックスが、火をつけていく。
しゅゅぅうおおおお。
火のついた花火はいろんな方向に火花を散らして結寿へと飛びかかった。結寿は素早く後ろに逃げようとしたが、逃げきれない。
「やっ!」
花火が直撃した結寿の右手は赤く、爛れて痛々しかった。しかし、そんなことを考えている余裕はない。
転げ落ちた花火は体育館の床に黒い煤をつけたり、最悪火をつけたりしている。あれ?これやばくね?
「はぁぁぁぁ!」
結寿が近寄ってきた。手はポーチの中に。居合抜きをする気だ。
そんな考えを巡らせている間にも結寿は僕との距離を縮め、ついに斬撃の届く範囲に入った。
「わぁぁぁああ!」
ビビって投げる予定だった火のついた花火を意味もなく振り回す。火のついた花火を結寿に向けても、結寿は怯むことなく花火を切り落とす。僕の手首ごと。
ぼとり。
そのまま結寿は僕の腕を輪切りにしていく。
「わぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」
その刃は手首を切り落としたあと、肘、肩、最後に首を切り落とした。
32乙。
突撃するしかない。これ以上死なないようにしたって、相手の方が力があるのは目に見えている。ここで守りきれもしない防戦をはって隙を探したってデス数が増えるのみだ。
だが僕には結寿の持たない『不死身』の能力を持っている。死んでも、死にきらない。死なないための防御なら、そもそも死なない僕に防御は必要ない。
必要なのは
ーー覚悟だ。
どすん。
目から脳にかけて刀を突き刺されて視界の半分を失う。
33乙。
がし。
突き刺された刃を抜いたそばから右手で握る。引いてしまえば僕の親指は地に落ちてしまうかもしれないが、結寿はそれをしなかった。
「結寿・・・!あなたが僕を殺す意味はわからない。僕も今、戦えと言われましたが、それをする意味すらわかりません・・・。でも、僕は・・・、これ以上死なないために!あなたを倒します!あなたを眠らせて・・・寝むらせます!」
「そうか。では殺すわ。」
結寿は刀を引くのではなく、押した。刃はそのまま流れるように親指をすり抜け、肩に当たり、斜め下へと切り裂いた。大量の血が溢れ出て、眠たくなる。
34乙。
周囲は僕とフェニックスが点けた花火の火が体育館中に広がっていた。ぱちぱちと。焦げた臭いとクラクラするプラスチックがやける臭いが鼻を殴る。
「『狂愛』の改罪、
明日持結寿。
愛に刃を、
刃に狂気を
狂気に華を
華に愛を。」
彼女は笑った。
「『娯楽』の改罪、
鈴笛凍琉。
こんな、お娯しみなんて、楽しめるかよ・・・!」
僕は震えていた。
これが武者震いなのか、それとも恐怖の震えなのか、もはやどうでもよかった。ただ、ただただ、早く震えが収まってほしいと願った。
ー5ー
彼女は左手に拳銃を持っていた。
ズドン。
頭に弾丸を食らう。
35乙。
進める足を緩めない。
倒れる時は前のめりに、だ。
ズドン。
ズドン。
ズドン。
ズドン。
ズドン。
36乙。
37乙。
39乙。
40乙。
41乙。
「がぁ!」
気が、痛い。
死に、至る。
息、絶えて。
生き、耐える。
すぱ、ぼと
42乙。
刀に持ち替えている。
すぱ、ぼと。
43乙。
ならば、
すぱ、がき。
「ふぅー・・・。」
僕は刃を腕で受け止めた。
もちろん、刀は骨を断ち切る程の切れ味はある。が、それは両手あってこその切れ味。今の結寿は利き手である右手を火傷している。こんな手で、しかも女性で、人の骨を断ち切るにはもっと、もっと勢いが必要だ。結寿自身、僕を切る時、手首や首など、関節など、骨の無いところを重点的に切って刺してを繰り返していた。
さぁ、仕上げだ。
僕はフェニックスに指示を出した。握りしめていたネズミ花火に火がつく。手のひらの上で高速回転するネズミ花火。熱や痛みなどもう、気にしない。それを結寿の腹に押し付ける。回転するネズミ花火は円を描く。その円は魔力を持つ。このネズミ花火はフェニックスの腹の中で生み出された下級の魔製道具だから。中央に点が生まれる。完成した。これが、ベルフェゴールの固有術式。
「『絶対的安静』」
特になんのエフェクトもない。これがベルフェゴールから聞いた僕の切り札。『絶対的安静』。魔法陣に触れたものを眠らせる術式だ。その魔法陣はなんと、まるかいてちょんで、いいのだ。
「・・・zzz」
目の前で涎をくって寝ている少女がいる。がらり。扉が開いた。なんだか僕も眠くなってきた。床に手をつく。力が入らない。失血はしていないはず。ならなんだ・・・。・・・そうだ。酸素だ。今僕は一酸化炭素中毒で倒れたんだ。
ばたり。
僕はここで意識を無くした。
糸が切れたように。
今日で、何度目だろう。
意識を失えるのが、
こんなにも嬉しいのか。
日本って快楽の国だよね。
どうも。執筆担当の不明です。
この度、「故、罪となる」をお読み頂き、ありがとうございます。下ともとれるようなグレーゾーンを突いたところで、まえがきの質問の回答理由を述べていきたいと思います。
自分は「本能」と、答えました。人には3大欲求があります。「睡眠欲」。「食欲」。「性欲」。自分は人が生きるために必要なものは、当然、この3つだと思います。
しかし、人はほかの動物と違って「生きるため」ではなく「人として」生きる能力があります。そのために人は3つのことを求めます。「娯楽欲」。「愛欲」。「支配欲」の3つです。
人と触れることで、「ストレス」を感じます。すると、人は「娯楽」を求めます。
人と触れることで、「恋愛対象」が生まれます。すると、人は「愛」を求めます。
人と触れることで、「支配欲」が湧き上がります。すると人は「権利」を求めます。
そんなところです。
Vector104です。代理執筆をしているのは不明です。私は「生きること」と答えました。その理由について述べたいところですが、ひとつ、読者に聞きたいことがあります。
皆さんは生きるために遊んでますか?
あとひとつ。まえがきの言葉はVector104が、あとがきの言葉は不明が書いております。
それでは。続きがあるなら続きを、無ければ出るまで、もしくは別シリーズを読んでお待ちください。
お読みいただきありがとうございます。
次回、狂愛。