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18.私は、正気よね

カシュ


「んー! やっぱりこのお酒は缶から出して氷入れたほうが美味しいわ」


ベッドの縁によりかかり部屋を見渡した。伯母の所有している賃貸アパートをずっと借りていた。


今は、壁にはったカレンダーもささやかながら置いていた観葉植物もない。


「これで夢だったら、本当のアホよね」


リードに啖呵きって、すぐに会社に退職届けを出した。


『あなた、引き継ぎはどうするのよ!』


『ファイルにまとめてあります。今いる人にも教えておきますし。体調不良の為、申し訳ございません』


「あの社長の顔! まさか私が辞めると思っていなかったんだろうな」


長くいれば陰口を言われ、かといっていざ辞めると紙を出せばまた文句。


「年休、有給すべてとる子は私が初めてらしいし。ちょっとスッキリした」


『もう沢ちゃんもそんな歳か~そろそろ考えないとじゃない~?』


喚ばれた日、営業のベテランに言われた何気ない言葉。悪気はないのは理解していても小さなトゲとなる。


「ムカつく台詞まで思い出したじゃない。そりゃあ、好みの人と出会いとかあればいいわよ。したくても相手いないんだもの。あ、もう人妻か?」


そう。好みの奴はいた。


「でも、まさかの異世界にとはね」


手には変わらず綺麗な模様。これだけが、唯一現実だと、私が正気なんだと教えてくれる。


「心は決まっている。けれど」


おつまみのナッツを口に放り込み、残りのお酒をグラスに注ぎ一気に飲んだ。


「ふー、弱気になるなよ私。あっ」


足元が急に光り出した。眩しすぎて目を閉じればあの気持ち悪い浮遊感。


「いたっ」


「よぉ、ナツ」


お尻を床にもろにぶつけ、その痛さに涙目になりながら主を見上げた。


「もっと優しく喚べないわけ?」


「充分配慮しているつもりだが」


憎たらしいくらいに自信に満ちている顔がある。

でも、悔しいかな。安心する自分がいた。




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