15.あれ? 任務完了したはずだよね?
「お待たせ致しました。本日出荷の明日着予定になります。申し訳ございません。指定は出来かねます。はい。では明記になりますが。有り難うございました」
カタカタ
肩に挟んでいた受話器を置きながらも画面から目を放すことなく次の画面を出していく。
時計を見れば…ギリギリ間に合うか。言い切った手前なんとか明日着にしたい。
「あ、先に使います」
仕入れ先宛てに印刷した先行手配書をファックスの前に陣取っていた営業に圧をかけ割り込みをし送信ボタンを押し、急いで席に戻り受話器を掴む。
「はい。ありがとうございます。午後に正規の注文書を手配済みで流しますので」
先行手配書が届いたかを仕入先に確認をし、どうやら希望納期に間に合いそうだ。
いつもと変わらない日常。
あの数日間は夢だったのか。
「でも、これがあるのがなぁ」
お昼にかかってしまったので別室に移動も億劫でデスクにコンビニで買ったパンと珈琲をひろげながらちらりと視界に入る右手のひら。
「なんで最初気持ち悪いって思ったんだろう」
その印は、よく見ると鳥とアイビーの葉の柄で、同僚に見られたらと焦っていたのに、周囲の人間には見えていないらしい。しつこく聞いたせいで逆に不審がられて困った。
「消してもらえばよかった」
お昼休みで空っぽの社内なせいもあり、気が緩んでいた私は、愚痴を言葉にのせていく。
回転式の椅子に寄りかかり、その右手のひらの模様を左手でなんとなくなぞりながら、つい漏れた。
「…リードのバーカ」
私の初キス奪ってさ。
酷いよね。
「…え? 光って、あつっ!」
右手のひらの模様が光り始めた。それは強い光になり熱さも増していき、思わず目をつぶれば。
「誰がバカだと?」
聞きなれた声に恐る恐る目を開くと。
「よぉ、ナツ」
ヤンキー座りしたイケメンが至近距離にいた。