12.秘匿した罪は重いわよ
「へぇ~これが」
お城の屋上の一角にそれは在った。
大きな岩を横にスライスしたようなものがポツンと敷かれている。周りはまるでそれを護るかのように青々としたアイビーに似た蔦が埋め尽くしている。
膝をつき、石に触れると。ボゥと反応した。
「光るのね。これは文字なのかな?」
文字に触れると、その周辺の光はいっそう強さを増す。
「な、何をなさるおつもりですか?!」
案内役として連れてきた神官長は、リードの部下に腕をガッチリ拘束されている為もがく事すらできない。
「何って、こうするに決まっているじゃないですか」
私は光る文字盤の中央に立ち右手を空へと上げ目をつぶる。しばらくすると空の手にずっしりと来た。
「うーん。やっぱり私、優秀じゃない? ねぇ、リード先生?」
「気味悪い呼び方は止めろ」
曇っていた空からは、細かなひょうが降ってきて私以外の皆さんの体に音をたてて当たる。
コレになりそびれた物だろう。
「えいっ!」
「お止めくださいー!!」
私の手には、氷の杭のような物が日も出ていないのに白く輝く。神官長の悲壮な叫びを無視し、それを両手でおもいっきり盤に突き立てれば。
「なんという事を!」
盤はくだけちり、光る粉になり風にのって消えた。
「これで、もう人を喚ぶ事はできない。あーちょっとスッキリした」
モヤモヤとした気持ちが薄くなったなぁ。私は振り向き顔面蒼白の美しい男に追い討ちをかけるように尋ねた。
「あと、もう一ヶ所あるわよね?」
それに反応したのは、何故かリードだ。
「どういう事だ?」
その精悍な顔は、本当に知らないようだ。
「対なのよ。これ」
頭の回転の速い彼はそれだけで察したようだ。
「そう。リード先生の答えで正解」
私は、口にだした。
「喚び出す盤と送り出す盤は対になっている。すなわち帰る装置は存在する」
帰す手段は存在した。
──なんて最低な国なんでしょうね。
「神官長様、案内してくれます?」
私の口は笑った形をしているけれど、眼は違う。
睨み付けた私に、神官長は膝から崩れ落ちた。