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僕らは痛みと共にある  作者: 藍ねず
第三章 盤上のしがらみ編
123/194

遂行

兵士もまた、駒だから。

――――――――――

2020/03/15 改稿

 


 ――アミー、命令だ。海堂麟之介、紫門大琥、綿済譲を殺してきて。あの戦士はもういらない。規則通り縛れなかった君達ディアス軍の落ち度だね。同じ兵士の尻拭いは兵士である君達の仕事だ。その仕事を君に任命する


 アミーの頭では中立者の命令が回っていた。


 回って、巡って、吐きそうになる。


 彼は見ていた。ずっと見ていた。氷雨達とグレモリー達が交戦するのも、兵士達がメタトロンの意に反して戦士を逃がす姿も。特性を紫翠が抜き取る前にメタトロンがフォカロルの首をねたのも。


 彼はずっと見ていた。


 見て、歯痒くて、両手を握り、命令通りに特例として氷雨と梵の前に姿を現した。兎の被り物を取ろうと決めたのは、掛け替えのない友人の姿が浮かんだからだ。


 兎は大事な友人の心の象徴。友の残影。それを纏ったまま戦士を殺すなど、アミーには出来なかった。


 今日、何度も死にかけた氷雨を見下ろす。彼女が死ななかったのは判断力と信頼のおける仲間があっての功績だ。


 それを叱る気はアミーにはなかった。


 無事でいてくれた、それだけでよかった。もう無茶しないでと、もう一度だけ後で伝えようと決めていた。


 まさか氷雨が自分達兵士の明日を考えてくれるだなんて予想打にしていなかったアミー。けれども、それこそが心配性の彼女らしいと思った兵士はぎこちなく笑ったのだ。


 (あぁ……まだ、上手く笑えないな)


 アミ―は実感しながら氷雨と梵に釘を打ち、メタトロンの元へ転移した。


 彼の登場に目を見開いた帳は、海堂と共に最もメタトロンに近い位置にいた。


「アミーか、なんだ、今日は被り物をしていないのか」


「はい、まぁ、気分で」


「……アミー?」


 メタトロンがアミーの頭を叩くように撫でる。それに無表情に頷いた兵士は、自分の名前を復唱した帳を見た。


 オリアスが愛している駒。少年の頬や腕からは血が出ており、ヴァラクとストラスが愛する駒も息が切れ切れになっていた。


 折られた数本の手裏剣、メタトロンに踏み潰された植物と漆黒の羽根。特性の宝石を戻せない譲と大琥は戦力外であり、麟之介の力にかかるほどメタトロンは甘くない。


 アミーは誰も見ずに言っていた。


「メタトロン様、命を受け、アミー、参上致しました」


「頼むぞ。お前の炎なら問題ない」


「何、言ってるの」


 祈の顔が信じられないものを見るように青ざめていく。その翼は震え、アミーは左腕を少し摩った。


「海堂麟之介、紫門大琥、綿済譲。三人の戦士を僕は殺しに来た」


 アミーは淀みなく呟き、音央が鋭く伸ばしたリフカを青い業火で灰に()す。音央は目を丸くし、メタトロンは笑っていた。


「止めておけ、アミーは炎の化身。植物とではどちらが優位かなどわざわざ教えることもないだろ?」


 音央が歯ぎしりする音を聞いてもアミーは表情を変えない。青い目は麟之介を捉え、大琥と譲を背に隠すようにする彼に兵士は賞賛を送りたかった。


「グレモリー達が助けようとした命、僕が預かるね」


「何、言って、」


 麟之介が呟いた時、アミーの姿が消える。


 突如として彼が消えたことに驚愕した一同は瞼を反射的に下ろし、開けた時には――重たい液体が吐き出される音を聞いていた。


「ぇ……」


 譲の声が、言葉になっていない母音が、零れ落ちる。


 少女の頬には生暖かい赤が飛び散っており、それは――目の前にいてくれた男のものだ。


 麟之介の鳩尾に埋まった、炎を纏うアミーの右手。


 その場にいるメタトロン以外全員の思考が停止し、麟之介の口から塊となって吐き出された血液がアミーの腕を汚した。


 アミーは右腕を抜く。


 左目は、体を大きく震わせて顔を白くした大琥と譲を見ていた。


「麟之介君ッ!! いや、いやだッ!!」


「ッ、あぁぁ!!」


 麟之介に抱き着いて傷口を必死に押さえる譲。大琥は足元にあった紫翠の折れた手裏剣を手に取り、アミーに向かって鋭いきっさきを振り抜いた。


 それをアミーの左手が受け流し、炎を纏った右手が大琥の鳩尾を貫く。


 少年は歯を食いしばりながら血を口の端から流し、それでも両手はアミーの右手を握っていた。


 アミーは腕を抜こうとするが大琥は渾身の力で抑えている。兵士は炎を左手にも纏い、その恐るべき温度によって大琥の眼鏡にヒビが入った。


「お前達に、なんか、世界を統治、出来る、わけ、ない……!!」


 濁った声で大琥はアミーに叫ぶ。炎を纏った兵士は表情を変えず、喋れなくなっていく大琥を見ていた。


「こんな、理不尽、な、こと、しか、出来ない……仲間、を、殺す……お前、ら、なん、か、ッ!!」


「うん、うん、そっか」


 アミーは否定せず穏やかに頷いている。目を虚ろにして力が完全に抜けた大琥の体を、アミ―は炎を消した左腕で抱えた。右腕が少年の体から引き抜かれる。


 アミーは目を伏せ、自分の顔を横から殴った拳には驚いてしまうのだ。


 大琥を離して横に跳躍するアミー。


 見れば腹部を押さえた麟之介が倒れずに足を踏み込み、拳を握っていた。


 譲が大粒の涙を零しながら大琥を抱えている。


 アミーは熱くなった自分の頬に触れ、無表情のまま言うのだ。


「しぶといね」


「あたり、前、だろ……ッ!!」


 麟之介が足を踏み出す。それは鬼気迫るものがあり、動けないままの祈達は出来ることを探していた。


 麟之介は呼吸が上手く出来ない体に鞭打っている。


「俺の、せいだ、今の、この状態は、俺のせいなんだ!!」


「うん」


「だから、俺だけ、で、いいのに、なんで、大琥を、創を、殺すん、だよッ」


「そう言う規則だから」


「そんな、の、あんまり、だッ、自分達が、選んだ、駒、が、言うこと、聞かなか、た、ら、殺す、なん、て、な……ッ、は、ぁッ!」


「もう喋らない方がいいよ、しんどいでしょ。君の体の中は」


「うるさいッ!!」


 大琥が落とした手裏剣を拾い、アミーに向かって勢いよく投げる麟之介。その足はもう動かすことが出来ず、アミーは睫毛を揺らしながら目を伏せた。


 アミーの左手が顔の前に出て、刃が掌を貫いていく。


 自分の血を顔に浴びたアミーはそれでも表情を変えることがなく、突き刺さった赤と銀の鋒を見下ろしていた。


「なんだアミー、手を貸すか?」


 メタトロンが笑いながら聞く。倒れる麟之介を抱えた紫翠はアミーを見つめ、祈は黒い羽根の刃を覚悟を決めて打ち出した。


 その刃を届ける為に帳は風を起こし、アミーはそれを避けようとしない。


 刃を混ぜた竜巻がアミーに直撃した。


 帳と祈は動かない兵士を見つめ、茶髪の少年は空気の流れを止めていた。


 豪風が止む。その幕が晴れると身体中を切り刻まれたアミーが立っており、彼は地面に視線を向けていた。


「アミー」


 メタトロンが再び兵士を呼ぶ。アミーは視線を上げ、誰も見ないまま言っていた。


「問題ありません。この場は自分一人でどうにでも出来ます。安心して、メタトロン様はお戻りください」


 アミーは切れた頬の血を拭う。メタトロンは暫し沈黙した後、兵士の肩を叩いてきびすを返していた。


「信じるぞ、アミー」


「はい、ありがとうございます」


 その会話を最後にメタトロンは消える。同時に場を支配していた重圧は消えるも、緊張状態は抜け出せなかった。


 譲と紫翠は、抱いている大琥と麟之介を見る。二人の呼吸は集中しないと確認出来ないレベルではあるが、まだ細く細く続いていた。


「紫翠ちゃん、退いて」


 アミーが血を滴らせて歩く。紫翠は麟之介を抱き締めると、首を確かに横に振った。


「嫌よアミー、誰であろうと、目の前で殺させたりなんて出来ない」


 茶色の目は強い輝きを失っておらず、アミーは息を吐いた。


 麟之介の指先が動く。血を吐き出した彼を見る譲は、腕の中でか細い呼吸をする大琥とリーダーの無事を願うばかりだ。


「お願い、もう、もう、間違えないから、ちゃんと、生贄、捕まえるから……二人を、助けて……殺さないで……」


 譲の頬を大粒の涙が流れていく。少女は首を力なく横に振り、瞼の裏には、泣きながら息をしなくなった創が浮かんでいた。


 あのとき忠告に来たのは創の担当兵士であった。その兵士の様子に譲は気づいていた。気づいていながら見ないふりをしていた。


 殺しに来た筈なのに、泣いていた兵士の姿を。


 譲は、光りの粒になっていく創を抱き締めて泣いた麟之介の背中を思い出すのだ。


 ずっと自分達の前に立っていてくれた人。生きる道を探してくれていた人。争いが誰よりも嫌いな人。それでも戦うことを選べた人。


 麟之介に言わせれば、彼の力は他力本願の能力だ。その力を一番嫌っていたのは、誰でもない麟之介自身だ。


 これでは誰も守れないと。誰の為にもならないと。


 そんな彼は喧嘩だって強くないし、祈達に比べれば秀でた機転も考えもない。


 ただ生きたかった、生かしたかった。


 その想いだけで進む麟之介にすがったのは誰でもない自分達なのだと、譲は知っていた。縋って、崇拝して、ただ従順に付き従った。


 譲は、リフカの檻に閉じ込められたアミーを確認する。檻は一気に狭まり内部を圧縮するが青い業火には敵わない。


 音央は舌打ちし、紫翠は無事な手裏剣を勢いよく投げ放った。鋒は開かない。明らかな敵意を持ったそれをアミーは左腕で受け、また血が流れていった。


「……泣語音央君、君はルアス軍だ、もう離れていなよ」


 アミーは呟き、音央は指先を痙攣けいれんさせる。少年は唇を真一文字に結び、「もしくはさ」と続けるアミーの言葉を聞いていた。


「氷雨ちゃんと梵君を治してあげて。イーリウを持ってる君なら助けられる。麟之介君と大琥君はそれじゃ手遅れだけど」


 音央は目を丸くする。「メシア……」と呟いた彼は見るからに動揺しており、アミーは続けていた。


「メタトロン様がいたから動けなかったよね。でも今はいないから動けるよ。でもやっぱり君は、この場を捨てて走りされなかった」


「何……」


「崇拝する子の元に、何もかもを無視して走り出せなかった」


「やめろよ……」


「この場にいても何も出来ないのに、僕の相手に加担しようとした」


「やめろってッ!」


所詮しょせん、君の信仰心なんてそんなものさ」


 音央の足元から鋭く生えていたリフカが固まり、種に戻っていく。少年の顔は青白くなり肩は震えていた。


「違う、俺は、俺は、メシアが、メシア、が、」


「そう思うならここにいるべきじゃない」


 アミーに肩を押された音央は俯き、地面を見たまま氷雨と梵のいる泉へと走り出す。帳はその背中を見ながら空気を操り、アミーを強制的に移動させようと考えた。


 アミーの四肢を竜巻が拘束して体が持ち上がる。兵士は帳を一瞥すると、目を伏せながら指を鳴らした。


 帳の周囲の地面を炎が囲い、少年の集中が逸れる。その間に緩んだ拘束から抜け出したアミーは麟之介を抱いていた紫翠の襟元を持ち上げ、素早く祈に向かって少女を投げた。


「ぅわッ」


「ッ」


 紫翠を抱え切れず地面に倒れる祈。アミーは二人から視線をずらし、風を操ろうとする帳を見ていた。


「三人の命は僕が貰う」


 その言葉の終わりに、アミーの足に鋭い痛みが走る。そこには麟之介と大琥の前まで恐怖する足を引きずって移動した譲がいて、手には折れた手裏剣があった。


 その刃はアミーの足に刺されている。深く深く、抉るように。


 アミーはその姿を見下ろして、穏やかに瞼を閉じていた。


「頑張ったね、君達は。本当によく頑張った。その勇気を、僕は賞賛する」


 アミーのその言葉を皮切りに、譲、大琥、麟之介を囲う炎の円ができ、それは天へ続く柱の如く燃え盛った。


 三人の姿が炎に巻かれて見えなくなる。


 炎に巻かれて譲達の姿が見えなくなる瞬間。


 麟之介が少女を抱き締めて祈達に視線を向けた姿を、紫翠も祈も、帳も見たのだ。


 青年は笑う。


「――あり、がとう」


 消え入りそうで、それでも声は確かに紫翠達に届いていた。


 青い炎が戦士を包み込む。


 帳は反射的に空気を操って炎を消そうと、柄にもなく努力した。


 けれども炎の化身の火力に少年は勝てない。相手に触れなければ戦えない紫翠と、羽根を燃やされてしまう祈では何も出来ない。


 アミーは青の業火に入り込み、唇に右の人差し指を当てていた。その姿を祈は目に焼き付けて瞳を青く変える。アミーは炎柱に姿を消し、ほとりでは氷雨が兎の被り物を落としていた。


 音央は今にも胃の中のものを全て吐き出しそうな心持ちで、傷ついた二人の元に辿り着く。


 氷雨は揺れる瞳で、震える唇で、自信がなくて笑うような声で音央に聞いた。


「泣語、さん……あれ、なんですか? 皆さん、ご無事です、よね?」


 音央は唇を噛み締めて、現実を見られていない氷雨を見つめる。


 少女は敏い。彼女が今の現状でどんなことが起こっているか分からないわけがないと、少年は知っていた。


 沈黙が流れ、音央はイーリウを咲かせる。


 沈黙こそが最大の答えだと知っている氷雨は立ち上がろうとし、けれども全身が痛んだ為に倒れ込んでしまうのだ。


「メシア! 駄目です、お願いです、もう動かないで!」


「なんで……なんで、ですか、アミーさん……」


 氷雨の鼓膜には音央の声が遠くに聞こえてしまう。梵は自分の治癒力を倍増化させながら骨折を治していき、今にも発狂しそうな氷雨を見つめていた。


 イーリウが氷雨の傷を吸っていく。咲かされたもう一輪の花は梵の元に投げられ、りずは一生懸命にらずと共に花を梵の傷に当てた。


「梵、梵、嘘だ、嘘だよな、こんなの嘘だ、嘘じゃなきゃいけねぇ、嘘でないと、じゃないと、さぁ……」


「……りず」


 梵は茶色い針鼠を見下ろし、大きく震える硝子の針鼠も確認する。


 らずの腹部には微かに亀裂が入り始めており、梵の耳の奥では甲高く硝子が砕ける音が木霊こだました。


 りずの針と体は一回り大きくなったように感じられる。ひぃの翼には全く力が入らなくなっていた。


「りず、らず、見るな、聞くな、もう、休もう、今は、もう」


「梵……梵ぃ……」


 りずとらずが同じような顔で泣いている。零れる涙は芝を濡らし、火柱が消える様を氷雨は網膜に焼き付けていた。


「……ッ、アミーさんッ!」


 傷んだ喉は苦しく兵士の名を呼び、片目のない兵士はそれを拾わなかった。


 青い火の粉が宙を舞う。


 そこには、その場には、いなければいけない者達がいない、何も無い。誰もいない。譲も、大琥も、麟之介も。


 三人がいた場所には黒く燃え跡の残った芝だけがあり、その跡を見下ろしているアミーは夕暮れの空を見上げていた。


「処分完了」


 その音を拾ったディアス軍の三人。


 服も、骨も、手裏剣も、盗んだ特性の宝石さえもその場には残っておらず、紫翠は膝から崩れ落ちた。


 少女は奥歯を噛み締めて、地面を強く強く殴っている。


「アミー!!」


 紫翠の声がアミーに当たる。兵士は自分に刺さった手裏剣を抜いて地面に放りながら、目を伏せた。決して少女の方は向かないまま。


「紫門と海堂の、言う通りよ……」


 紫翠の肩が震えている。祈は呆然と焼け跡を凝視しており、帳は自分の周りからも消えた炎を確認していた。


 少女は瞳孔を開き、酷い剣幕でアミーに叫ぶ。


「貴方達にアルフヘイムの統治なんて出来ないわ!! 勝手に戦士に選んで、勝手に生贄を集めろと言って、負けたら死ねと言われて!! 死んだ先では誰も彼もから忘れられるだなんてッ!! 祭壇を壊したから何!! 生贄を集めなかったからなんだって言うのよ!! こんな競走、貴方達が勝手にすればいいのに、わざわざ私達を巻き込んで!! 規則に従わなければ殺すなんてッ」


 紫翠は目に涙の膜を張っている。


「これじゃあ誰も、救われないじゃない……ッ、盾になった兵士達も、貴方達の明日を心配した氷雨も、体を張った梵も!!」


 少女はもう一度地面を殴り、ホルスターに残っていない手裏剣に歯ぎしりした。


「こんな競争に、救いなんてないじゃないッ!!」


「……そうだね」


 アミーは紫翠に相槌を打ち、自分を見上げている少女達の方を向く。祈は唇を噛み締めてアミーを見つめ、兵士はもう一度唇に人差し指を当てていた。


「ねぇ、みんな。何かを思っても、何かに気づいても、言っちゃ駄目だよ。言葉にすればこの世界では何処かで誰かに聞こえてしまうから。胸の内にグッと堪えて、吐き出すならタガトフルムでにするんだね。そうしないと長や中立者の耳に何か入って、麟之介君の二の舞になるからね」


「ッ、あんたねぇ!!」


「しー……」


 アミーは血の着いた手で紫翠の口を塞ぐ。少女は目を丸くし、凪いだ海のような目をするアミーを見上げていた。


「氷雨ちゃんを、よろしくね」


 そう言って微笑んだアミーは戦士達の前から姿を消す。


 目を焼く夕暮れの色は鮮やかで、紫翠は拳の皮が剥けるほど地面を殴っていた。


 祈とルタの同化が解ける。何も言えない一人と一羽は、お互いを抱き締めながらうずくまってしまった。


 帳は地面に崩れた二人を見下ろし、それぞれの後頭部を風で撫でてから宙を飛ぶ。


 風に乗った彼の(あばら)や足首は酷く傷んだが、それでも飛ばずにはいられなかった。


 畔で傷を癒している氷雨と梵を少年は空中から確認する。少女の近くには青い兎の被り物が転がっており、音央は縋るように小柄な少女を抱き締めていた。


 帳は空を見上げる。


 眩んでしまいそうな美しい世界は、子ども達には――あまりにも残酷だった。


信じていたよ。信じていたいよ。信じさせてよ。



ブックマークが増えていまして、嬉しい限りです。ありがとうございます。


明日は投稿お休み日。

明後日投稿、致します。


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