その2
葬儀が終わったその日の夜、俺は、紗由ばあちゃんの夢を見た。
夢の中の俺はまだ3つで、ばあちゃんの腕に抱かれるのが大好きだった。
「ばあちゃん、いいにおい」
「じゃあ、もっとばあちゃんの匂いがするものをミコトにあげるわ」
ばあちゃんがニッコリ笑うと、その横に翔太じいちゃんが現れ、俺に向かってニィッと笑い、二人はすーっと遠くへ消えていった。
そして翌朝一番、俺宛てにその荷物は届いた。差出人の名前は西園寺紗由。ばあちゃんの旧姓だ。中に入っていたのは海賊の宝箱のような箱だった。銀で縁取られた木製のもので、大きさは80センチほど。銀の部分は龍、虎、鳳凰、亀の、いわゆる四神の彫り物が施されている。
“何だ、これ…?”
宝箱をあちらこちらから眺めていると、底に文字があるのが見えた。「西園寺華織」と書かれている。
“彼女の持ち物だったのかな?”
何故かはわからないが、俺は幼い頃に知りたがっていた西園寺一族の不思議な力についての答えが、この宝箱の中にあるような気がしていた。だが届いた荷物は箱だけで、その鍵穴に入れると思しき鍵が見当たらない。
“どうしたもんかな…。そういえば祭にも荷物が届いていたようだから、鍵はそっちなのかな”
ひとしきり宝箱をいじり終えると、俺は妹の祭に内線した。
「あのさ、おまえに今朝届いた荷物って誰から? 何だった?」
「鈴露のおじいさまからよ。スーパーセブンという石だけど」
鈴露というのは俺の大学の同級生で、祭とも顔なじみだ。彼の祖父である一条凜氏のお使いで、清流旅館にも、よく足を運んでいたからだ。
鈴露の祖父、というか、一条家は元々、輝石類の販売を営んでいる。
清流旅館では、その守り神である青龍への供物として、時折パワーストーン的な石を購入し、神棚へ供えていた。祭が言うスーパーセブンとやらも、そういった石なんだろうと俺は理解した。
「それって鍵の形してたりするか?」
「ううん。普通の原石。何で?」
「ん。いや、俺宛ての荷物の箱を空ける鍵が見当たらなくてさ。差出人は西園寺紗由になってるし…」
「ばあちゃんから…?」
「どうした。黙り込んでさ」
「そっちに行くわ。じゃあね」
祭は俺の返事を待たずに電話を切った。
* * *
ミコトからの電話を切り、祭がリビングを出ようとすると、父親の駆が祭の腕を取り制止した。
「待て。彼から伝言がある」
「彼から?」
祭が母親の深潮を見ると、深潮は自分の両耳を手でふさぎ、その手で祭の両耳をふさいだ。
「青龍さまが眠りから覚めそうってこと…?」
「当分、おまえをミコトとは二人にさせるなということのようだ」
「次は一ヶ月先…真大祭一週間前のはずだったのに…」駆の妻の深潮が眉間にしわを寄せる。
「青龍さま的に何かが起きたということかしら」祭も不安げだ。
「ミコトに届いた荷物のせいかもしれん。帳場から見ていただけでも、“ぴかぴか”がすごかったからな。とにかくミコトの部屋へ行こう。深潮は龍おじさんたちに知らせてきてくれ」
「わかりました」
3人は素早く部屋を出て、左右に分かれた。




