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聖女と魔女  作者: 岩本凮
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白魔女

 聖女は教会という鳥かごに囚われていた。

いつからいるのかもう彼女には分からない。気が付いたら教会の離れの塔の一室に囚われていた。外に出ることは出来ず自由はない。頭は常にかすみ、時間の経過も分からない。

 毎日同じことの繰り返し、起きてお祈りをしてご飯を食べて寝る。お世話をするシスター以外の司祭や神官はどうも不快でいつも皺がよる。でもどうしてなのか自分がなぜ聖女と呼ばれているのか自分の名前さえも分からなかった。

 どこまでも続く日々に身体は石の様に動かなくなりつつあった。このまま石の様に動かなくなり終わりを迎えるのだろうと漠然と終わりを予見しながら生きていた。


 でもそうはならなかった。


 その日は久しぶりに人の顔を見た。いつも世話をするシスターたちは皆顔を布で覆い、個人が判別しないようにしていたからだ。その人は己を魔女と名乗り私を攫った。


 次に目が覚めると森に囲まれた小さな家にいた。彼女の家で治療を続けた私の石のような身体は徐々に動くようになり、森を散歩し薬草を摘み、木の実をすりつぶして生活するようになった。


 頭の霧も晴れ、時間の経過も分かるようになると長い時をあの塔に囚われていたが、以前は別の場所にいたことを朧気ながらに思い出した。


 魔女が私に付けたサツキという名前はどこか懐かしい響きだった。


 時折夜中に起きることがある。教会で受けた洗脳は完全には完治することはなく、時折私に幻覚と幻聴を見せてくる。

 そういう時私は家の外に出て、ベランダにある揺り椅子に座り、ゆらゆらと揺られながら朝を迎えるのを待つのだった。


 魔女は私に生活と生きる術を教えてくれた。森の恵みを糧に薬を作ってお金へと変える術を教えてくれた。

 私が一人で生活出来るようになると魔女は私に森と住処を明け渡し、平和に健やかに生きるように諭してくれた。

 近場の村と交流を細々と続けながら生活していると、いつしか彼らは私を白魔女と呼ぶようになっていた。

 

 去って行った魔女からは時折使い魔のフクロウから手紙が届く。彼女は転々と旅を続けながら、先々の冒険を書き綴っていく。私は細々とした生活の日々を書き綴り、彼女と文通を続けていた。

 時折、教会での監禁生活を思い出すと今でも震えが走るが、遠い過去の出来事として時が恐怖を薄れさせてくれる。

 

 今の生活を魔女に感謝しながら私は今日も細々と暮らしている。


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