表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真実のメモリー  作者: おむらいす
病院生活
6/6

アルシオンの最期

異変にいち早く気づいたのはジャックだった。深夜2時、とても恐ろしい予感に囚われ目を覚ますと、奥で寝ている母親を起こした。


「母さん!大変だ!」


「...なに?どうしたの」


「嫌な予感がする!多分シオンだ!」


「...!?まさか...。早く行きましょう。あなたの勘はなぜかよく当たるからね...」


そういうと2人は外に出て、親方から借りている郵便配達用のバイクに乗った。二人乗り用ではないが、母親はしっかりジャックに捕まり、病院へ向かった。







病院で始めにアルシオンの異変に気付いたのはレイナだった。奥のアルシオンのベッドからなにやら唸り声が聞こえてくる。


「...いびきかしら?でも、とても苦しそう...」


レイナは、アルシオンが心臓病を患っていることを思い出し、念のためベッドについているロビーへの電話で救助を頼んだ。


「もしもし、205号室です。アルシオンの様子がおかしいんです。すぐに来てください」


電話に出たナースは、院内にいるナースとアルシオンの担当医に自体を知らせた。


1分後、病室にアルシオンの担当医が来た。先生に続き、マーガレットも青ざめた顔で入ってきた。


「ウォーカーさん...!!」


マーガレットは不安に押しつぶされ、今にも失神しそうだ。


その数秒後、ジャックとその母親が病室に駆け込んできた。


「ジャック...?どうしてここに?」


レイナは不思議そうにジャックを見る。


「シオン!...レイナ、嫌な予感がしたんだ。だから夢中でバイクを走らせた」


シオンは唸り続ける。医師とナースが適切な処置を行う。


「先生!手術を!」


応急処置だけでは対応できないと判断したマーガレットは、医師に手術の提案をする。



しかし、担当医はうつむき、静かに首を振った。



そこで、シオンが苦しそうに声を出す。


「僕なら...大丈夫...みんな...笑って」


「シオン...」


自分にはどうすることもできないと、悔しそうにシオンを見つめるジャック。すすり泣くマーガレット。こんな状況で誰も笑えるはずはなく、ただ暗い時が流れる。


「兄...ちゃん。お母...さん。今まで...辛い思いをさせて...ごめんね...これからは...少しは...楽になると思うから...」


「それは違うぞシオン...俺たちはお前のためなら全然辛くなんてなかった」


「そうよ」と母親も悲しそうにつぶやく。

アルシオンは力を振り絞って口角を上げ、兄と母に優しい笑顔を見せる。


「兄ちゃん...レイを助けてあげて...彼女はきっと...僕よりも...辛い思いをしているから...」


「わかった...」


ジャックは泣きながらシオンを見つめる。


「レイナ...最後に...君の...笑顔が見たい...」


レイナは無言だった。しかし、いつものように無表情ではなく、悲しそうな表情をしていた。


「お願い...」


レイナは「これがアルシオンの最期の願いだ」と、アルシオンを見つめる。



そして、笑った。それは今までに見せたことのない、天使のような笑顔だった。



アルシオンも笑いかえす。


「ふふ...みんな...今までありがとう...これでゆっくり...眠れるよ...」


これがアルシオンの最期の声だった。

「シオン!」と言うジャックと母親の混ざった声。「ウォーカーさん...」というナースの悲願の声。悔しそうにうつむく担当医。そして、アルシオンの手を握り、無言でアルシオンの寝顔を見つめるレイナ...



深夜2時30分 アルシオン 永眠



医師はアルシオンの顔に白い布を被せた。

そして静かに時は過ぎていった...

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ