ウォーカー兄弟
「ねぇ」
アルシオンは、レイナが急に話しかけてきたことに驚いた。今まで、レイナから話しかけてきたことは一度もなかったからだ。
「な、なに?」
なぜか緊張した様子で答えるアルシオン。レイナは質問をする。
「あなたのお兄さん...ジャック?について聞きたいんだけど...」
「兄ちゃんのことだね!どうしたの?」
レイナは聞き辛そうに質問を続ける。
「あの、ジャックは字が読めなかったじゃない?彼はいくつなの?」
「ジャック兄ちゃんは17歳だよ。字が読めないのは、学校に行っていないからなんだ...」
レイナは驚いた。たしかに、喋り口調に子供らしい部分はあったが、郵便配達をしていたため大人なものだと思い込んでいたのだ。
「17...。どうして学校に行かずに働いているの?」
「お金がないからだよ...。僕が生まれてすぐ、心臓病を患ってから、治療費が凄くて...。おまけに、僕が生まれてすぐ、父さんが借金を残して出て行っちゃったんだ。元々どこかで遊び放題してた人みたいだし、僕も兄ちゃんも顔を覚えていないんだけどね。」
アルシオンは落ち込んだ様子で説明をする。それに対し、レイナも気まずそうに話を続ける。
「そう、お父さんが...。大変だったのね」
「お母さんや兄ちゃんの苦労は、僕にはわからないけどね。だから本当に2人には感謝しているんだ。」
そこでレイナはある質問をする。
「あなたは心臓病なのに、なぜそんなに明るいの?」
自分が心臓病にかかっているという事に対してはなにも言わないレイナに対し、少々驚きを見せるアルシオン。しかし、いつも通り元気に答えた。
「心臓病でいつも周りに迷惑をかけているから、少しでも相手を幸せにしてあげたいんだ!僕に普通の生活は送れないからこれくらいしかできないけど...」
「そう...優しいのね」
レイナは暖かく優しいアルシオンの心を理解し、心から笑った。初めて見るその笑顔に、アルシオンは驚き、そして喜んだ。
その質問から2週間、悲劇は起きた...