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真実のメモリー  作者: おむらいす
病院生活
4/6

ジャック=ウォーカー

「...で...が...。...が...た。...???あー!全然読めねぇ!」


郵便局で騒ぐ1人の男。彼はこの郵便局の配達員だった。

「仕方ねぇ、あいつに聞くか」と、ボソッと口にすると、奥からもう1人の男の怒鳴り声が聞こえた。


「おいジャック!何サボってやがんだ!まだ仕事が残ってんだろ?さっさと片付けてこい!」


ジャックと呼ばれるこの男は耳をかっぽじりながら渋々立ち上がった。


「あーはいはい。これから行きますよーだ。でも親方、最近給料が減ったんじゃねーの?配達する郵便物の数だけ増えて、俺は損してる気しかしないねぇ」


「うるせぇ!こっちはただでさえ少ねぇ資金でやりくりしてんだ!お前みたいなポンコツを雇ってやってるだけありがたいと思え!」


ジャックが文句を言うと、さらに親方が言い返す。


「ちぇっ。仕方ねーなー」


ジャックは事務室に背を向け、ノロノロと歩き出す。後ろから聞こえる「さっさと行ってこい!」という怒鳴り声に耳を塞ぎ、ヘルメットをかぶってバイクに乗った。


「えーっと、最初の配達場所は...お、フラウ病院じゃねーか。ついでに見舞いに行くとするか。」


そういって、ジャックはバイクを走らせた。





レイナとアルシオンが出会ってから1週間が過ぎ、彼らは更に仲良くなっていた。2人は病室を移動していて、マーガレットの気遣いにより同じ病室で生活していた。レイナもようやくアルシオンとまともに会話できるようになった頃...


「よう、シオン。元気してたか?」


シオンの元へ、黒髪で高身長の男が訪れた。180cmはあるだろう。デカい。そして、見たところ筋肉がありそうだが、細い体つきをしていた。


「あ!ジャック兄ちゃん!久しぶり!元気だよ!」


2人は兄弟のようだ。いくつ離れているのかはわからないが、外には彼が乗ってきたと思われる、配達用のバイクがある。


「ん?そこの女の子は誰だ?」


ジャックはレイナの方を見て言った。レイナが振り向く。


「兄ちゃん、彼女はレイだよ!レイナ=アシュリーって言うんだ!」


アルシオンが嬉しそうに紹介する。

ジャックは2人を交互に見ると、何かを思いついたようにニヤけながら言った


「ふーん。お前、いつの間にガールフレンドなんて...!」


「ち、違うよ!そんなんじゃない!彼女とは1週間前に友達になったんだ!」


レイナは無表情でこちらを見つめている。

アルシオンが顔を赤らめながら必死に弁解すると、「まぁいいや」とジャックが笑った。そして、何かを思い出したように、アルシオンに尋ねた。


「あ、そうだシオン。この新聞のこの記事読んでくれねーか?俺、親方から文字教えてもらってるんだけどさ、どうしても漢字が読めなくて...」


「いいよ!」とアルシオンが元気よく答え、ジャックから新聞を受け取った。


「ええと...『ジェノシティで家一軒が全焼する火災発生。1人の少女が巻き込まれた』...だってさ。そんなことがあったんだね...」


ジャックはアルシオンから新聞を受け取って、写っている写真に目を細めながら言った。


「あー、そんなことが書いてあったのか。これは誰かが火を付けたっていう事件なのか?」


アルシオンが「さぁ」とボソッと言うと、レイナがこちらを見ながら口を開いた。


「これは放火による事件らしいわ。私の家の近所のおじさんによるものらしいけどね。詳しくはわからない。」


「へぇ、詳しいんだな」


ようやく声を発したレイナを見て、ジャックは笑いながら言った。するとレイナが、


「だってこの記事に書いてある『巻き込まれた少女』っていうの、私のことだもの」


衝撃の告白に、ウォーカー兄弟は混乱した。数秒の沈黙の後、ジャックが「やっちまった」という顔でレイナを見る。


「いや、あの、すまん。まさかこんな近くに...」


「大丈夫よ。気にしないで」


気まずそうなジャックに、レイナは無表情で気を遣う。


「すまないな。というか、あんたは何もわからないのか?犯人の顔とか...」


と、ジャックが質問すると、レイナが再び口を開く。


「私、記憶がないの。この病院で目が覚めてからずっとね。」


ジャックは、また「やっちまった」という顔でレイナを見る。さっきよりも強烈な顔で。


「まぁ、今は今の生活に満足しているからなんともないわ」


それを聞いて安心するジャック。「あー、あんたならどんな状況でも満足してそうだな」と呟いたが、それを聞き逃さなかったアルシオンはジャックを軽く小突いた。


「んじゃ、俺はそろそろ帰るわ。まだ仕事が残ってるしな。また親方に怒られるのはごめんだぜ」


そう言って、ジャックはヘルメットを担いだ。


「うん!またね、兄ちゃん!」


「おう!2人とも、元気でな!」


ジャックは再び、イルタウンの外れを駆け回った。

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