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変化

 ケビンに変な事を聞かれた。

「ブナのお兄さん、いつの間に髪の毛生えたの?」


 普通子鬼に頭髪は生えない、全員平等に持たざる者である頭髪共産主義社会である。その子鬼である俺に髪の毛が生えたのか?慌てて頭に手を当てると、短いが髪の毛が生えている、頭全体に生えていてモヒカンだったりはしないのは安心材料だろう。


 最後に髪の毛が生えてないのを確認したのは何時だろう、そもそも無いのが当たり前で水に映った自分の姿とか見ても髪の毛なんて気にしないからなぁ。


「いつの間に生えたんだろう、向うの村に向かった時にはまだ生えてなかったよな。」

「今日会った時はフード被ってたから判らないけど、その前遊びに行ったときは髪の毛なんて無かったはずだよ。」


 だとするとカバの幹の集落で生えたのかな?


「貴方は不思議なゴブリンですね。髪の毛は生えてますし、体の色も他のゴブリンとはちょっと違います。やはり大地の神の司祭だからですかね」


 これまた変な話をマニーから聞いた。俺達子鬼は超音波視覚を持っているので暗闇でも問題なく活動できるが、当たり前だが色覚は無い。そして、前世で人間だった時に比べて色覚が弱いというか、あまり色を認識する能力に欠けている上に、他の子鬼は太陽の光に弱いので色彩にあふれた昼の世界をシイの実と二人になるまで知らなかった。


 従って、シイの実が暗い緑色で、俺の体が暗い茶色なのを男女の性差だとずっと思っていた。そうではなく俺だけ暗い茶色で他の子鬼は暗い緑色だったのか。


 もしこの色が大地の神の子として産まれた証だったとしたら、そりゃ今まで生まれた大地の神の子は速攻バレて殺されるわ。やっぱりナラの幹は俺を見逃してくれてたのか。闇の神が光の神に対抗するために俺に生き延びてほしいと仰られてたらしいが、一体俺に何を期待しているのだろう。光の神に対抗すると言っても殺したニンゲンはまだ一人で、子鬼はさっき大量に殺している。


「なあケビン、俺って変だと思うか?」

「うーん、変って言うか大人から聞いてたゴブリンと、実際に出会ってみた子鬼さん達が全然違うからびっくりしてる。思ってたのと違うのが変なら確かに変だよ。でも、ブナのお兄さんは特別だとしても、シイのお姉さんも凄い優しくて本当の兄ちゃんや姉ちゃんだったら良かったのにといつも思ってるよ。変だけど俺は兄さんも姉さんも大好きだから変でいいと思うよ。」


 本当に懐かれてるな。目を治して、オーガーを退治して、彼女の足も治したから当たり前か。俺の力が役に立つからまあいいか。


 そういえば、何か大切な事を忘れてる気がする…ってそうだ。


「ケビン、小屋の周りに防御用の土壁を作っておいたはずだけど、アレはどうなったんだ。」

「そうそう、不思議なんだけどオレとシイのお姉さんも大地の神の力が使えるようになってたんだ。二人とも兄ちゃんほど上手じゃないけど土壁を戻すくらいなら簡単だったよ、時間かかったけどね。」

「何と、貴方も大地の神の御力に目覚めたのですか。ブナの根さんと一緒に居れば大地の神の加護がえられるのでしょうか。」


 ローズが喚いている。正直言って煩いし、ケビンをそのまま拉致しかねない勢いだ。シイの実とケビンの共通点というと俺と一緒に居る事位しか思いつかない。


「俺達は大地の神の謎に迫るためにエルフの里に向かおうと思っているんだが、ケビンも来るか?何故大地の神の力に目覚めたのか知っておいた方がいい。」

「じゃあ、父ちゃんに伝えてくるよ。レオナ起きて、家帰るよ。」


 ぺしぺしと頬を叩きながらケビンはレオナを起こしにかかる。俺もシイの実を起こすとするか。


「シイの実、シイの実、起きて。」


 ケビンがレオナさんを、俺がシイの実に今までの事を話して、これからエルフの里に向かう事を説明する。ローズがレオナさんに一応俺と接触したからエルフの里に向かった方がいい事を伝える。


 シイの実はいつの間にかニンゲンの冒険者と行動する事に驚いていたが、エルフとドワーフが居るから安心できるみたいだ。そういえばシイの実は集落が襲われた所を直接見てないもんな。3人がシイの実にひたすら謝っていたが、何だか良く判ってないのか人がいいから恐縮してるのか兎に角問題はないみたいだ。


 シイの実は俺と離れたくないらしく同行は一瞬だったが、レオナさんはちょっと嫌がっていた。まあ、冒険者に怪我を治した司祭も一緒で安全性は高いとはいえ、女の子はやっぱりそこまでの冒険心は無いかな。


 そういえば、一緒に居たと言えば俺たちの集落で奴隷やってたニンゲンもそうなんだが、彼らは大地の神に目覚めてたりしないのだろうか。


「そう言えば元の集落に居たニンゲンはお前たちが連れて行ってたけれど、その後どうなった?彼らも大地の神の声に目覚めてたりするのか?」


「本国の神殿が体を調べたいそうで連れていったけど、その後の話は聞かないな。俺達はずっとペンタートの街か開拓村のどちらかに居たから本国の事は分からないな。」


「大地の神の力を使える俺がニンゲンの神殿に狙われる以上、大地の神の力に目覚めたケビンも心配だし、彼らが目覚めてたら危険かもしれない。レオナさんごめんな、ひょっとしたら面倒な事に巻き込んだかもしれない。」


「ケビンと一緒に居られるならそれは構わないですけど、まだ足の力が弱いみたいだから足手まといにならないかが心配です。」


 ああ、そこが心配だったのか。それは俺達でフォローするから。


「じゃあ、一緒に行動するとして、一度村に帰ってしばらく冒険者さん達と旅に出るって親御さんに伝えておいで。」


 家族に心配かけるわけにはいかないからね。

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