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とりあえず和解してみる

 冒険者は強かった。オーガー2匹に勝てなかったのが嘘みたいだ。まあ、オーガーは俺たち子鬼も毒矢で暗殺するしか手が無い訳だが。


 騎士とドワーフは前に立って子鬼の頭を潰すか首を刎ねていく。エルフは風の神の加護で弓から全員を守り、魔法使いは魔法で魔法で閃光を発生させたり、炎で子鬼の頭を焼いたりしている。流石の闇の神の加護も頭が一瞬で無くなったり、首を刎ねられたりすると再生が出来なくなるから正しい戦法だ。おまけに、大抵の子鬼は強い光に弱いから、閃光の魔法で無力化される(俺は例外)。


 俺が何もしないのも流石にどうかと思うので、土の槍を子鬼の集団の左右に作り出し、戦士やドワーフの背後に回り込めないようにゆっくりと移動させる。素早く移動させることは出来ないが、こう前世にあったファランクス兵みたいな感じに使えるので対集団戦には役に立つ。


「で、カバの幹よどうするかい?子鬼は大分減ってしまったがニンゲンの奴隷は結局無事でこれから増やすこともできる。子鬼の殲滅を主導していたニンゲンだけはきっちり殺してあるし、他のニンゲン達はもう俺達子鬼を殺すつもりもないそうだ。ここで終わりにしないかい?俺としてはあのニンゲンの村に手をださなければ構わない。」


「ああ、このままだと群れが無くなるだけだ。闇の神にかけてあのニンゲンの村に手を出したりはしない。もちろん奴らが森を荒らさなければだが。」


「ああ、森を住処とする子鬼として、森を荒らす者を許すわけにはいかないからそれは構わない。では、俺は闇の神の子ではないらしいから大地の神に誓おう、我等とカバの幹の集落は敵ではないと。」


 これでニンゲンの村の安全も確保できたはずだ。ケビンの所まで戻って今後を相談しないとな。


「これで大丈夫なのか?このゴブリン…いや、子鬼と言った方がいいのか。子鬼が約束を破る事んじゃないのか?」


 ナイジャーとか言ったか、ニンゲンの騎士が尋ねてくる。


「いや、その心配はいらない。闇の神は名前を汚されることを嫌う、彼の名において交わされた誓いを破る事はあり得ない。特に闇の神の司祭なら。ニンゲンとは文化が違うんだよ。」


「でも、アンタは裏切られたんじゃないの?」


「その通りだが、あの時は闇の神の名に誓わせてなかった。ちょっと守らなきゃいけない友達が居たんで、誓わせようとして決裂するのも問題だったから。」


 問題はこの冒険者たちをどう扱うかだ。家族の仇ではあるが俺の命の恩人でもある、ケビン達の村やシイの実の安全が確保できたのも彼らのおかげだ。


 ケビン達がいるはずの小屋まで戻る事にして、帰りに歩きながら聞いてみる。


「そもそも、俺が居た集落を襲ったのは何故なんだ?」


「アレはペンタートというここから2日ほど離れた場所にある街に、ここの開拓村の周辺にゴブリンが出没しているので退治をしてほしいという神殿からの依頼があったんだ。」


「ちょっと待てそれはおかしい。俺たちの集落はまだ小さくて森の外に攻め込んだりとかできないぞ。繁殖用の女も足りていて襲う必要も無いしな。大体、何で開拓村じゃなくて神殿とやらが依頼を出すんだ?」


 俺が反論すると騎士の男―確かナイジャーとか言ったはずだ―はその通りだと肯いた。


「それは別に不思議ではない。森を切り開いての開拓は神殿も協力している国家事業で、魔獣やゴブリンが出ても金が無い開拓村では神殿に頼んで神殿が報奨金を出して冒険者に依頼する事も多い。ただ、今回は退治が終わってから知ったのだが村は被害を訴え出てないそうだ。」


「つまり、最初から狙いは俺だったのか。」


「神殿が何故きみが産まれたことを知ったのかまでは残念ながら判らない。レイサムならひょっとして知ってるかもしれないが、奴が居たら君を殺しにかかってただろうから結局分からないだろうしね。」


「そういえば、アイツは何者だったんだ?」


「俺とマニーの幼馴染で吟遊詩人を志して師匠と一緒に旅に出たんだが、何年か経って帰ってきたら光の神の司祭と密偵の技術を持って帰って来た。その時には既に俺達4人は一緒に冒険者としてやってたんだが、そこに参加したいと言ってきたんだ。密偵としても光の神の司祭としても戦力になったからな。」


「ただ、人柄は最悪だったわよ。」


 ここでエルフ、ローズだったっけ?が口を挿んで来た。


「とんでもなく光の神を盲信していて、人間至上主義者だったのよ。ウォーレンなんてキレてドワーフの鉱山に帰っちゃったんだから。戻ってきてもらう為に何回も手紙書いて腱鞘炎になるかと思ったわよ。」


「成程な、エルフは汚らしいドワーフ如きを呼び戻すのにそんなに必死だったのかい。手紙に涙の跡があったのも面白かったのう。」


「ちょっと何言ってんの!私は別にそんなつもりじゃなくて…」


 後ろで痴話げんかが始まった。とりあえずこの二人は仲良しでエルフはツンデレだと覚えておこう。


「何かレイサムとやらに全責任押し付けようとしか思えないんだが。」


「確かにそう見えるかもしれないが事実だ。光の神にでも大地の神にでも真実であることを誓ってやるよ。まあ、最初は村に迷惑をかけるゴブリンだと思ってたんでやる気だったのは認めるよ。それは本当に申し訳ない。」


 一応、道理は通ってるし低姿勢だから流石に今すぐどうこうという気持ちは薄れる。勿論油断はしないし、次に敵対したら容赦するつもりはないがエルフの里には行ってもいいだろう。光の神の手先には追われる身だが、エルフの里で保護されれば危害を加えられることもそう無いだろうし。


 ケビン達が居る小屋まで戻ると、土壁が綺麗さっぱり消えてなくなっていた。何があったのかと小屋に飛び込むとレオナさんとシイの実は寝てて、ケビンが外を見張っていた。


 ケビンに土壁はどうしたのかと聞いたのに、返って来た返事は意味不明だった。


「ブナのお兄さん、いつの間に髪の毛生えたの?」

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