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激突3

 前回と同じように目の前に土壁が現れた、土にしてはかなり固くなっているが、それでも魔力で身体強化している俺に壊せないほどではない。モーニングスターを振るって壁を粉砕し、例のゴブリンを追いかけようと前に飛び出したら穴に落ちた。おまけにご丁寧に上から土が降ってきて生き埋めにしようと狙ってくる。


 マニーが魔法で結界を貼ってくれて土は俺をよけて降り、生き埋めを避けたところでローズが風の神の力で引き上げてくれたが、マジで死ぬかと思った。


「しかし、闇の神の力で人間がゴブリンになるって本当なのかねぇ。」

 そうひとりごちると、ローズとウォーレンに聞こえたのか返事が来た。

「レイサムが怒るから言わなかったけど、エルフの間じゃよく知られた話よ。実際に見た人もいるみたい。」

「儂は実際に見たことがあるぞ。子供の頃に住んでた鉱山には子鬼が働きに来てたし、元人間の子鬼の友もいたわい。」


 そうか、じゃあ真実なんだな。だとすると、人間とゴブリンの違いはなんだろう。何故ゴブリンは人間との間に子を作り、エルフやドワーフとの間では子を作らないのか。


「あら、できるわよ子供。」


 事もなげにローズが答える。

「エルフとゴブリンの子供は、父母どちらがエルフでも必ずエルフが産まれるの。ハーフなんてのも居ない。ただ、ゴブリンは乱婚だからつがいになる事あまりないんだけどね。司祭から離れると生きていられないらしいからそういった機会も少ないしね。」


 なんでも、エルフは昔子鬼の妊娠期間の少なさ、成長の速さに目を付けて、滅びつつある自らの種族にゴブリンの血を入れてみる実験をしたことがあるとか。結果は全てのケースで普通のエルフしか生まれなかったらしい。妊娠しにくさもエルフ同士の場合と同じだったそうで無意味だったそうだ。


「レイサムが居るとこの辺の話するだけでキレるから出来なかったのよね、彼は光の神の神殿直属だったから。原理主義なのか他の人間に事実を知られると困るからか、暗殺しかねない脅しをかけて来たから怖くっなって。」

「じゃあ、何で俺達とパーティー組んでたんだ?」

「ナイジャーとマニーには里を救ってくれた恩があるじゃないの。2人の幼馴染だから悪口言いたくなかったし、貴方達に協力するのは里の長老たちから命じられた使命なのよ。」


 そう言った後ローズはこちらの方を向いて可愛い最高級の笑顔を浮かべて(って言うとマニーに嫉妬されるから口には出せないが)こう言った。


「でも、ノームを探すのは全てのエルフの使命で、あのゴブリンは間違いなく手掛かりなの。だから…ちょっとだけ死んでくれない?」




「大地の神の司祭様、人間2人を殺しました。エルフの里までご同行お願い申し上げます。」


 そんな声が聞こえた。最低だなクソ女、使命の為なら仲間を殺すか。近寄って死体を念の為確認するが、確かに体が動いていない。これで仇はあと一人だ。


「それでは、さっそくここから出て私の里まで向かいま…」


 最後まで喋らせなかった。仲間の命すら犠牲にするようなクソを俺が生かしておくわけないだろう。大地の神の力で作り出したこの黒曜石のナイフを腹に突き刺す。前世で見た極道モノによればここから捻れば空気が入るんだよな。


「死に行く者の願いだ、きちんと叶えてやるよ。俺はエルフの里に向かってエルフの為に何かできないか探してやる。ただ、かたき討ちは別だ、目的のために仲間を殺すようなクズを生かしておく必要も無いしな。」


 倒れたエルフの女にそう言い残して俺は外に向かう。まだ泣けない、まだ安全が確保されたわけではない。


 しばらく歩いて土壁で封鎖してある出入り口の前にたどり着き、土をどけたら、予想通りの光景が繰り広げられていた。


 つまり、武装した子鬼達に囲まれていた。


「我々の敵であるニンゲンを討ち滅ぼしてくれてありがとう。では、闇の神の命により大地の神の声が聞こえる子鬼には死んでもらおう。」


 やはりこうなるとは思ってたんだ。土壁を作って毒矢を防ぎながら叫ぶ


「ニンゲンの開拓村も襲うのか?」

「残念ながら戦力が足りんよ。それに、死にゆく者の願いはなるべく叶えるのは子鬼の務め。お前の願いがそれなら叶えてやろう。子鬼はあの村に手を出さんよ、森を荒らしに来ない限りは。」


 さて、逃げるだけなら簡単なのだが、逃げたらあの村を襲うんだろうな。戦士が10人狩人が50人って所か。非戦闘員が50人ほどだが、こっちは1人だから訓練してない子鬼でもこれだけ居れば勝ち目はないよな。


 最悪逃げざるを得ないとしても、ここで人数減らしておかないと。救いは戦士階級がニンゲンにかなり減らされている事か。俺が子鬼の中でも非力だとしても、足も速いし反射神経も自信ある。戦士はともかく職人や子供には負けない自信がある。神の力もあるしね。


 土壁に阻まれて弓が届かないし中で何やってるのか判らないので戦士が棍棒を手にやって来た。落とし穴を警戒して棍棒で地面を叩きながら縦一列でやって来る。


 ああこりゃ中で何やってたかバレてるな。大方俺も知らないもう一つの出入り口があったのだろう、そこで何をやったのか見てたか。戦闘の一人が落とし穴を叩いてバランス崩して落ちる。中には黒曜石で出来た槍がびっしり生えていて、串刺しになって即死したのだろう。ただ、始末できたのは一人だけだ。


 残りは落とし穴を周り込んで土壁にたどり着き、2ヶ所から穴を掘ろうとしている。こちらも穴を埋め返して対抗するから千日手になってしまっている。


 とするとここで俺を足止めし続けて、秘密の出入り口から別働隊を送り込むつもりなのか?洞窟の奥の方からこちらに近づいてくるやかましい音が聞こえてきた。


 こりゃここまでだ。ここで逃げて開拓村が襲われてケビン達の命が危うくなるか、討ち死に覚悟で数を減らし続けてニンゲンの村を襲う余力なんて無いようにするかどちらにしようかと考えたが、その心配は杞憂だった。


 こちらに近づいてくる子鬼が突然、何かに頭を吹き飛ばされて死んでいった。


「お前の仲間を殺しちまったのは申し訳ないが、ここでお前を助ける事でチャラにさせてもらうぜ。」

「一緒にエルフの里まで行ってもらうまで死なれたら困るのよ。」

「大地の神の力が使えるなんて、それを解析したら私の魔法はさらに強化されます。ここで死なれるわけにはいきませんわ。」

「儂はお前に恨み買う覚えはないからの、これで貸し一つだな。こいつ等の命を見逃すことで返してもらうぞ。」


 そう言ってこちらにやって来たのは、殺したはずのニンゲン達だった。

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