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激突2

 周りを完全に土で囲い通風孔だけ開いている小部屋を作って逃げ込んだ。自分の中から何かが失われたような気がするが、そこまで体というか体調に異変が無い。恐らく闇の神の力を打ち消す光なのだろうが、俺に加護を与えているのは大地の神だから効かなかったんだろう。


 小部屋から出て奴らに遭遇しないよう注意しながら移動していると、遠くの方から悲鳴が聞こえた。どうやら毒が回って斥候が倒れたみたいだ。あと4人だ、騎士の能力は大体わかっている。集落を襲っている時を見る限りモーニングスターで頭を叩き潰しに行くか、剣で首を刎ねるかだ。エルフは剣と風の神の加護、と言っても剣の腕は騎士や斥候に及ばない。魔法使いは魔法しか使えないみたいだ。


 ドワーフの能力がどんな感じなのか判らないのが不確定要素だが、素早くはなさそうだ。大地と一体化できる俺を捕らえる事は出来ないだろう。


 それはそれとして、無理して毒で攻撃する必要が無かった事に今更気が付いた。あのまま生き埋めにすれば良いだけだったじゃないかと。毒で戦う事にこだわりすぎたんだ、次はもっと柔軟に行こう。全員まとめて生き埋めでいいんだ。


 とすると武装なんて必要ない。大地と同化して奴らに近づく、見ながらなら確実に殺せるだろう。彼らの横の土壁を移動しながら前と後ろを突然土壁で塞ぐ。そのままサンドイッチにしてあげよう。万が一はさんで殺すことが出来なくても酸欠で死んでくれるだろう。


 そう思ってた。

「ナイジャーお願い」

 魔法使いの女がひと声かけると甲冑を着た騎士がモーニングスターを一閃、1メートル以上ある土壁を跡形もなく吹っ飛ばしてくれた。


 いやそりゃないだろう。甲冑着ながらマトモに動けるのもそうだけどモーニングスターの威力がとんでもない。中に入ってるの本当にニンゲンか?


 奴らは会話しながら奥に向かっている。

「土を操って来る。賢者殿の言う通りここの巣穴にあのゴブリンが居るのは間違いないな。」

「レイサムも居なくなったし無理して神殿の依頼をこなす理由も無いんですけどね。」

魔法使いが言う、信仰心が薄くて結構な事で。

「それもそうじゃが信用問題になるだろう。」

「もし可能ならエルフの里に連れていきたいんだけどね。」

エルフが気になる事を言う、どういう事だ?


 他の連中も気になったらしく、理由を尋ねてくる。

「地水火風の種族は対が居なくなると衰退していくと昔風の神の神託があったのよ。今まで人間にエルフが協力してたのはそのため。ゴブリンを生かしておきながら闇の神の力を削いでいかないといけなかったの。ただ、彼がノームだったとしたらそれもおしまいだし、そうでなくてもノーム復活へのヒントになると思う。」


 なるほど、ただ残念ながら俺はノームとやらに成るつもりはないし、他のエルフはともかく仲間を殺したお前に協力するつもりもない。ただ、奴がどれだけ本気か試してはあげよう。


 俺は奴らの前方に姿を現す。

「話は聞いた、そこのエルフの女よ。俺がお前に付いてエルフの里まで向かえばいいのか?光の神は信用ならぬが、風の神の下へなら構わないぞ。」

「本当ですか?ならば是非ともお願いします。」


 エルフの女が嬉しそうな声で返事をしてくる。ああ、ニンゲンや他の子鬼から逃げる先としてエルフの里というのは確かに選択肢の一つになるからね。ただし、お前らへの恨みをはらしてからだ。

「ならばそこの2人のニンゲンを殺せ。光の神の命によって俺の里の子鬼を殺した、大地の神の子であり闇の神の子の他の子鬼とは違う存在だったのかもしれないが、それでも彼らは俺の家族だった。家族を殺した恨みをはらさず付いていくわけにはいかない。」


 さて、どうする。エルフの里の為に仲間を殺すか、仲間の為にエルフの里を裏切るか、好きな方にしてくれ。

「仲間を裏切れるわけないじゃない。レイサムだけならまだしもこの2人は私の里を救ってくれた人なんだから。」


 即答かよ、大したもんだ。そしてレイサム嫌われてんな。

「ならばエルフも滅びるがいい。ニンゲンが子鬼を滅ぼそうとするように、俺もエルフを滅ぼそうとしてやろう。ニンゲンに手を貸して子鬼を滅ぼそうとするエルフとドワーフも滅びるがいい。」


 それを聞いた騎士がこちらに話しかけてくる。

「1つ聞きたい、ゴブリンは人間を滅ぼそうとしてないのか?」

「少なくとも俺の居たナラの幹の集落やここの集落、繋がりのある集落ではニンゲンを滅ぼそうとはしてなかった。子鬼はニンゲンの女が居ないと人口を維持できないから十数年に一度ニンゲンの女を奪うか買うかして調達しないといけないし、集落の周りでむやみな狩りをするニンゲンが居たら排除するか奴隷にするが、それ以上の事はしない。」

 

 騎士がそこからさらに反論してくる。

「それでも、人が闇の神の力でおかしくなり、死ぬしかなくなるのは変わらないだろう。」

ああ、ニンゲンの間では闇の神の甘露を口にしたニンゲンは死ぬと思われてるのか。

「闇の神の力を受けたニンゲンは死なんぞ、むしろニンゲンの間は老いる事が無くなり100年位で子鬼に変化すると聞いた。俺はまだ若いから実際に見たことは無いが集落に居る婆さんが元人間だったと聞いた。お前らが殺したがな。」

「嘘つけ、光の神の教えでは人間を闇に堕とした後は死あるのみだと言われている。」

「ならば、光の神の教えが間違えているのだろう。」


 そう言って目の前に壁を作って逃げる、どうせブチ壊すだろうからその先に落とし穴と吊り天井を作ってやろう。


「ちょっと待って、話を聞いて!」


 エルフの女が叫ぶが、誰が仲間の敵のいう事なんて聞いてやるか。話を聞いてほしければそこのニンゲン二人を殺してからにしろ。

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