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子鬼が来た。

 妙な空気になって困った後の一月後、小屋が完成した。中にはベッドもあるし野獣とかからは安全であるようしっかりとした造りにしてもらってる。


 俺用の服も完成した。魔法使いのローブを意識して伝えたら満足できるものが届いた。これなら採寸も必要ないし、幸いにして俺とケビンは身長差があまりない。ケビンのサイズで作ってもらったらケビンの分もあったらしい。お揃いだと大喜びで着てきたらシイの実が仲間外れだと拗ねたので慌ててもうちょっと小ぶりなシイの実の分も作ってもらった。村の人たちごめんなさい。


 そうして、ケビンの彼女のレオナを治す日になった。森の外れの木陰から俺とシイの実がこっそりのぞいていると、レオナとケビンが大人と一緒に小屋にやって来て二人を置いて大人だけ帰っていった。予定通りだがケビンが大人に拳骨食らってた、多分余計な事言ったんだろう後で追求しよう。


 そして夜中に小屋を訪れる。ノックをすると小屋の中からケビンの声が聞こえる。

「どなたですか?」

「俺だ、開けてくれ」

万が一子鬼の名付け方を知ってるニンゲンに名前がバレると困るので名乗らない。それでもケビンは声で判ってくれて戸を開けてくれる。


 小屋の中には2つのベッドとテーブルにランタンが一つ明かりで置いてある。そして右手のベッドにはちょっと怯えた感じの少女が座っている。村を救った賢者とは言え知らない人でしかも顔が見えないから怖いのは仕方ないか。

「その子がケビンの彼女のレオナさんか?足を怪我して歩くのが辛いと聞いたのだが。」

「はい賢者様。ケビンから治していただけると聞きまして。」

「兄さんは俺の目もあっという間に治してくれたんだ、レオナの足だってすぐ治してくれるよ。」

「兄さん?」


 ケビンの馬鹿が、若いのがバレるじゃないか。

「ああ済まないね、実は俺若いんだ。威厳が足りないかと思って年寄りの振りしてるだけなんだよ。頼むから内緒にしてくれないか。」

「ケビンの目を治して人喰い鬼を倒してくれた賢者様ですから年なんて関係ないですよ。でも、賢者様もそういった事気にされるんですね。」

クスクス笑われた、後でケビンは説教だな。でもちょっと打ち解けてくれたみたいだ。怪我の功名と言ったところか。

「じゃあ済まないが怪我の具合を見たい、足を見せてくれないか。」


 足を見ると太ももから足首にかけてかなりひどい傷跡が残っている。引きつって動きが悪いのと、多分骨折が変な風につながったんだろう。よく歩いてこれたな。

「ああこりゃひどい事になってるね。だが大丈夫これなら治せるはずだ、ちょっと目を閉じてもらっていいかい?」


 大地の神に祈りを捧げる。オーガーと戦った後、俺と大地の神の間が近くなったというか、繋がりが深くなった感じがする。ケビンの目よりも簡単に治すことが出来た。


 もう大丈夫だと声を掛けてあげるとレオナは恐る恐る立ち上がり、歩き出して大丈夫なのを確認すると飛び跳ねて、大泣きしながらケビンに抱きついた。

「ケビン、私歩けるの、走れるの、飛んだり跳ねたりも出来るのよ。ありがとう」

そのまま泣き続けるのでケビンは真っ赤になりながら困惑して、こっちに助けを求めてきた。お前は夫婦の概念のない子鬼に何を期待してるんだと呆れつつ、頭でも撫でてやれと小声で助言したその時、扉を勢いよくノックする音が聞こえた。


 巣に戻って警戒しつつ声を掛ける。

「誰だ」

「ブナの根大変、ここが囲まれてる。多分子鬼よ。」

名前を言うなとか言うべきだったのだろうが、その時俺はそんな余裕が無かった。慌てて扉を開けてシイの実を入れて俺は逆に外に出る。

「いいかケビン、鎧戸を閉めて絶対に扉を開けるなよ。そして全員手を繋げ、多分最初に闇の神の力で明かりを消すはずだ。ビビッて手を放したりするなよ。そこにお前らは居るんだからな。」


 扉の前に陣取って、小屋の周囲に土の壁を作る。やはり土を操作する速度や自由度が上がってる。大地の神を喜ばせるような事を何かしたのだろうか、神の力で出来る事も増えている感じだ。


 土の中を通って壁の上に上がり声を掛ける。

「俺はナラの幹の集落の生き残りブナの根だ。お前らはどの集落の何者だ。」

「俺はここから西にある集落の司祭カバの幹だ。そこの村からニンゲンが俺たちを殺しにやって来た。撃退はしたが我々にも少なくない被害が出てしまった。よってその村に報復を行う。」

あの馬鹿冒険者め、よりによって近隣で一番大きい集落に手を出しやがった。で、戦士階級と狩人で報復に来たのか。


 これは大問題だ、冒険者の動向を測るために開拓村と友好的な関係を築いておきたいし、子鬼同士で殺し合うのもごめんだ。あの冒険者だけどうにか殺せないものだろうか。

「その冒険者は殺したか?俺の敵でもあるんで止めがまだなら俺にもやらせてほしいんだが。」

「いや、まだ集落の中に居るはずだ。俺達は隠し通路から脱出して来たんだ。」

「では、そこにいるのは戦士ではないのか?」

「護衛の戦士は少しいるが、子供と職人がほとんどだ。だが、それでも訓練されてないニンゲンくらいなら殺せる。」


 ならば打つ手はある。

「お前ら俺を集落に案内しろ。村を襲うより冒険者に止めさす方が優先だ。この村はあのニンゲンとは関係ない上に仲が悪い。ここに報復する意味は無く、俺をお前らの集落に連れていけば奴らを何とかしてやる。」

「お前が本当に何とかできるのか?」

「俺はこの通り大地の神の加護を持ち、土を自在に操れる。集落の穴の中に居るなら手段がある。外に出てからじゃ遅いから時間が無いんだ。」


 さて、これでどう出るか。大地の神の加護を持つ子として殺しにかかるか、集落を守る方を選ぶか。

「お前が俺たちの集落に産まれたなら殺さねばならない。ただ、お前は別の集落の者だ。別の集落のやり方に異を唱えないのが子鬼の掟だ。」

「分かった、ならば俺はお前たちを助けよう。じゃあ時間が無いから急ごう。」


 これでやっぱり大地の神の子は死ねとか言われませんように。そしたら土の中に逃げるだけだけだが。

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