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何故か始まるお説教タイム

 流石に腹が立った。どれだけ呑気なのかこいつ等は。もし俺が食い止めなくて村のそばまで来られてからじゃ侵入防ぎきれない可能性が高かったろうに。


 樹上から覗いてみると前に集落で見かけた8人のうち4人と、初めて見る背が低くてがっしりした男が1人いる。


 それぞれ、金属鎧を着て(あんな重そうなの着てよく動けるな)鎖付きの鉄球、モーニングスターを持った騎士と、ちょっと濃い顔の魔法使いみたいな杖を持った女、槍を持った優男、前に追いかけられたから覚えてるが斥候だったのかと思ったら、背中に楽器を背負ってるから吟遊詩人か。あと剣を持った耳が尖ってる女、多分エルフなんだろう。そして初めて見た斧を持ったがっしりした男…ドワーフ?


 どこかで見たことある編成だとしばらく考えてたのだが、昔ゲームセンターでこんな感じのキャラクター達を操作するゲームがあったな。闇を封印するものという意味なら確かにその通りの連中なんだろうが(2だけど)、ゲームの主人公は重役出勤でNPCに任せたりしないぞ。


 しかし、ニンゲンの冒険者ってのはどいつもこいつも子鬼狩りしか能が無い愚か者なのだろうか。森に不用意に立ち入ってオーガーとばったり出会い、何の策も無く撤退したせいで臭いを残して村を危険に巻き込む。おまけに次の日は重役出勤と来たものだ。


 こいつ等絶対森を舐めてるだろう。ムカついたんでとりあえず連中に石を投げる、もちろん投げた後素早く樹上を移動して反対側に回り込むことも忘れない。


 残念ながらやはり風の神の加護があるのだろう、神の似姿を一瞬見たと思ったら石は明後日の方向に飛んで行った。やはり弓矢で狙うのは無理か。


 今更周囲を警戒しだしたので、ちょっと説教してやろう。

「お前ら今更やって来て何のつもりだ」


 なるべく威厳を持つように、それと反響して位置の特定が出来ないように話しかける場所と声の質にも気を付けて話しかける。

「何者だ?」

騎士が大声で返事する。こいつ馬鹿だろう、情報は与えているというのに

「ケビンから何も聞いてないのか、それとも覚えていられないほど頭が悪いのか?それならこんな時間にのこのこやって来るのも理解できるのだが。」


 今度は何やらごそごそ相談を始めた。吟遊詩人だか斥候だか判らん奴だけは周囲を警戒してる。ちっ、全員油断してたらこっそり近づいて毒を塗ったナイフをエルフに刺してやるのに。

「それでは、貴方は村の少年が言ってた森の賢者という方ですか?お名前を伺ってもよろしいですか?」

「名前などどうでもいい、儂は貴様らに時間を稼げと伝えたはずだ、貴様らが何もしなかったから儂一人で倒してしまったぞ。無能どもが。」


 冒険者たちは何やらムカついてるみたいな感じだが、腹が立ってるのはこっちの方だっての。

「そもそも、貴様らはオー…人喰い鬼に出会った後、臭いをたどって追跡されないように工夫もせず逃げ戻った。そのせいで儂が何もしなかったら今頃村に侵入されてたぞ。その上こんな時間までのんびりしおって、こお…ゴブリンを狩る事しか出来ない腰抜けか。それで無能と言われて腹が立つとは何と自分の能力に対しての自覚が無い連中だ。」

「賢者殿は何がお望みか」

「この森に二度と立ち入らない事、貴様らでは森の探索は無理だ。森に棲んでる儂がこ…ゴブリンに受け入れられているように、貴様らが皆殺しにしたゴブリンの集落は繁殖に必要な最低限のメスしか必要としていない。このまま引き返して二度と森に入らないなら構わない。奥に入るなら敵とみなす。」

「申し訳ないが我々は王都にある光の神殿からの依頼で、この森に居る大地の神の司祭の力を持ったゴブリンを捕らえないといけない。何とかここを探索する事を認めていただけないだろうか。」


 ちょっと待て、俺が狙われてるのか。ニンゲンの国がいくつあるのか知らないが王都といったら王様が居る都、つまり首都の事だろ?そんな所に捕虜で連れていかれてマトモな扱いしてもらえるとは思えない。実験動物扱いならまだマシな方で、やっぱり子鬼じゃないかと殺される可能性も結構あるだろう。

「ゴブリンは闇の神の子だ。大地の神の司祭が産まれる訳なかろう。」

とりあえず誤魔化せ。

「信じられないという気持ちは分かります。我々も信じられませんでした。大地の神の子は今は失われた種族であるノームしか居ないはずで、ノームは神話の時代に闇の神によって滅びたと我々は教わっています。」


 そこに、エルフだと思われる女が口をはさんできた。

「私達風の神の子であるエルフや、そこの火の神の子であるドワーフの間では、大地の神の子であるノームは光と闇の神の戦いによって滅んだと教わってます。ゴブリンの間では大地の神の子は光の神に奪われたと教わるそうです。でも、どこの伝承でもノームは滅んでるはずなのに、そのゴブリンは大地の神の御力を使ったのです。」


 そう、俺もそう教わった。そして種族によって神話が違うのか。恐らく、光の神と闇の神は大地の神の子が滅んだのはお互いのせいと教えているのだろう。つまり、一番信憑性の高いのはエルフとドワーフの神話だ。


 では、闇の神は何故大地の神の司祭で産まれたゴブリンを殺すように言ったのだろうか、そして何故俺は闇の神に殺されないのか。


 考える事は沢山あるが、それは後回しでとりあえずこの冒険者どもをどうするかだ。ここで殺す選択肢はとりあえず消そう。殺したら次はもっと腕利きが来るだろう。ならば、どうする。


「とりあえず今日は一回帰れ。その大地の神の司祭がゴブリンだとしたら、南の方に集落がいくつかあるからそちらに向かったらどうか?」

「ありがとうございます賢者様。では、我々は一度戻るとします。」


 俺のねぐらは東の方だし、ひとまずは危険を回避したかな?

DECOネタを挿む機会は逃さない。

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