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魔王継承  作者: FIIFII
第一章 召喚師、魔王を継ぐ
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五話 ベレッタ

 部屋を後にし、廊下の先にある階段を降りる。

 魔王城は魔物が蔓延る魔の城だと聞いていたのだが、普通の城だ。

 やけに高級そうなものばかりが置かれているし、電球の代わりに光る魔物が天井に貼りついていたりしているが、普通の城だ。


 階段を降りて、降りて、降りる。

 とてつもなく長い階段だ。

 地下何階だろうか?


「この城、何階建てだ? 窓から見た限りではさっきまで居た部屋は3階くらいだと思っていたのだが」

「数えきれないほど多いです。一部の階は異空間や異世界に繋がっておりますので、城の構造を把握できるまでは無暗に歩き回らないでくださいね」

「い、異世界?」


 とんでもない城だな。

 そのまま何階も降りて、少し疲れてきた頃のこと。


「おっと、あっしは用があるのでここで外しやす」


 と言ってシスイがその階で廊下に逸れていった。

 デス・トーカーは『逃げたか』と呟いてから、まだ降りていく。

 一時間は歩いただろうか。

 ようやくたどり着いたようだ。

 そこには扉がある、この子供の体で見上げるには大きすぎる、デカい扉だ。


「魔王様。この扉の先では、部屋の主に存在を確認されるまでは絶対に物音をたてないでください。声も出してはいけません」

「何故だ?」

「そうしないと、喰われます」


 魔王、喰われる。か。

 面白くない。


「わかった」

「では……」


 デス・トーカーが扉を押すと、ギギギと鉄と鉄が擦れるような音が耳を劈く。

 日の差さない薄暗い廊下に、扉の奥から強い光が入り込む。

 そこは牢獄だった。

 鎖に繋がれた魔人や人間、他の種族までもがここにいる。

 妖精族、色愛族、金素族。ドワーフ、サキュバス、インキュバス、スライム……と、これは魔獣か。

 それぞれが静かに横たわっている。


「看守! ベレッタは居るか!」


 静寂に響く一声。

 それに答えたのは、奥から現れた一人の女性だった。

 肌は魔人特有のそれであり、人間の国の軍が被るような帽子を被っていた。


「デス・トーカー。あれほどここでは静かにしろと言っておいたはずなのだが、もう忘れてしまったのか?」


 責めるような目で睨み付けられ、少したじろぐデス・トーカー。


「ならどこから入れというのだ。今回は魔王様の命令により、ベレッタに話がある」

「魔王様、ねぇ?」


 じろじろと、検分されるように眺められる。

 しかし数秒で視線を外され、促された。


「奥の部屋で聞こうじゃないか」



--------



「そんで、あたいに用ってなにさ」


 ベレッタは飲み物を机に置き、椅子に座る。

 この奥の部屋は、看守がいつも暮らす部屋だそうだ。

 手狭だが、丁度いいくらいの狭さだ。

 一人称はあたい、か。


「召喚された魔王様は、この国を立て直すべく動くおつもりだ。そのために知恵を借りたい」

「そんなもん、力で脅せば簡単じゃないか。魔王様なんだろ?」



 脳が筋肉で出来ているとはこういうことか。

 なるほど、確かにパワーに頼りそうな体つきをしている。


「……魔王様?」

「なんだトーカー」

「口に出ています」

「えっ?」


 思考に没頭していたから気付かなかった。

 目の前に座るベレッタは机を指でトントンと叩きつづけている。

 明らかに不快そうだ。


「デス・トーカー。いくら魔王様といえどもこんな暴言を吐かれたんじゃ、あたいには我慢できない。決闘だ!」


 怒鳴っている最中、魔力が部屋を渦巻く。

 花瓶が割れ、机が揺れ、魔力の波動が身に降りかかる。

 この魔力、幹部の力を上回っている!?


「な……魔王様と、ベレッタ、貴様がか!?」

「ああ、そうさ。あたいを見事倒したなら、この知識を自由に使ってくれて構わない」

「――いいだろう」




 俺はそう言い、立ち上がる。


「魔王様、何を――」


 ベレッタも、立ち上がる。


「ノリがいいね。流石魔王様だ」


 お互いの目を見て、戦意をぶつけ合う。

 勝算はない。

 ていうかやらないと今ここで殴られて殺されそうだ。

 それくらい怒っていた。

 威圧感が半端ではなかったし、なにより協力してもらわないと困る。

 ここで逃げても、得策ではないと判断した。


「じゃあ決闘は明日。そうだね、あたいの庭で行おうか。じゃあデス・トーカー、準備は頼んだよ」

「はあ!? いや、待て! 話を聞け!」

「それじゃあ明日を楽しみにしているよ……」


 その言葉を最後にして、ベレッタの姿は掻き消えた。

 霧散したと言った方が正しいか。

 転移魔術か何かだろう。

 部屋に二人取り残され、静寂が部屋を支配する。



「魔王様」

「なんだトーカー」

「ベレッタは、今まで前代魔王に任命されて看守となっていました」

「そうなのか」

「理由は、強すぎてプレートを破壊しそうだから閉じ込めた。と」


 プレートを、破壊?

 それって神話に登場する、神種に匹敵する力なのでは……?


「明日、このプレートが無くなるやも知れませんねぇ」


 デス・トーカーを見る。

 目が虚ろのまま、座ったまま後ろに倒れ込む。


「トーカー! トーカー! しっかりしろ!」

「ああ……天使が見える」

「お前魔人だろうが! 天使が見えたら大問題だぞ!」

「前代魔王様が手で招いている……今行きます魔王様…………」

「あの人何やってんの!? ていうかトーカー戻ってこい!」




 ――明日、俺は死ぬらしい。

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