三十話「それが真実」
「と、まあ経緯はそんなところになる」
マイン以外の人間が、動きを止めていた。
窓に打ち付ける水滴が、激しい音を立てる。
「つまり、あの人間だった召喚師が魔王様.……ということですか」
デス・トーカーは瞼を閉じたまま問いかけた。
拳が強く握られている。
「そういうことになる」
「――ッ!」
ドンッ、と机が叩かれた。
「私に、なぜ打ち明けて下さらなかったのか!」
「旦那……!」
シスイが肩に手をかけるが、デス・トーカーは払い除けた。
マインは魔王をじっと見つめている。
まるで、その者を見定めるように。
「俺だって最初はお前が怖かったけど、魔王城の皆と話しているうちに気付いたんだ。人間と根っこの部分は変わらない感情を持っているし、その日を生きるために必死だし、時々ふざけあって、笑っていた。長いこと生きてるお前ならわかるだろうな。でも、俺は知らなかったんだ」
魔王は必死の弁解を重ねる。
「魔王様、私はそのような些細なことはどうでも良いのです」
デス・トーカーは冷静に見える表情の奥で、たしかに怒っている。
隠しきれない怒りは、一体どこからきているものなのか。
魔王には検討もついていない。
「魔王に仕え国を繁栄させるのが私の役目。幹部として、そして魔王の右腕として、いついかなる時代であっても私は貢献してきました」
天を仰いだ。
「それがどうしたことですか、最強の力を持った魔王が私ごときにおそれをなしていたと?それも人間の頃に受けた屈辱のせいで、誰にも言い出せなかったと」
手を開いた。
「私は、どれほど忠誠を尽くしても信頼を得られていなかった自分に怒りを覚えているのです」
苦悶の、顔。
「……原初の時代、神を殺し、神の怒りを受けた私は死ねない体にされました」
「?」
3人は突然始まったデス・トーカーの話に疑問を覚える。
「死ねない体に加えて、この身に宿るあらゆる力を封じ込められてしまったのです。弱化の呪法と呼ぶにはあまりにも強すぎる呪い。正に神の怨念……カースオブゴッド、といったところでしょうか」
「しかし、そんな私を初代魔王様は拾ってくださり、その半生をかけて貯めた力で呪いの半分を解いていただきました」
雨が止んだ。
「そして私はその大恩に報いるべく、忠誠を誓い尽力したのです」




