二十九話「デス・トーカーは神界の夢を見る」
デス・トーカーは世界黎明期に生まれた初の超越者であり、初代魔王という概念が生まれる以前の実質的な魔王だった。
その頃は王政と呼べるものもなく、文化的な暮らしは神のみが行うものとして認識されていた。
それをうらやましく思ったデス・トーカーは、手始めに十二の神のうちの一柱を殺した。
他の神は激怒し、世界が崩壊した。
創造神が創った世界は優秀で、システムと呼ばれる機構が存在していた。
世界のシステムは崩壊を食い止めようとし、辛うじて大陸をプレートと呼ばれるパズルのピースのようなものに壊されるまでに済んだ。
デス。トーカーは神の怒りを耐えていた。
無傷で神の眼前に立ち、次元の穴を開いた。
神は抵抗する間もなく、次元のはざまへと消えた。
残ったのは、文化を司っていた神。
脅しだった。デス・トーカーは脅し、脅した。
「許して、お願い。望みを聞くから」
神は泣いた。
涙はたちまち地上にあふれ、海を作った。
蹲った神から文明開化の方法を聞き出し、デス・トーカーは世界の発展に尽力した。
そして、神界の全てが塵と化した。
世界に神はおらず、デス・トーカーはその瞬間のみ歓喜した。
だが、決して許されることは無かった。
次元の狭間より、神は呪ったのだ。
デス・トーカーを。
人を。
世界を。
遍く、全てを。
『滅べ、明滅する我が波動が、神界を尽く蹂躙した』
声が重複する。
『『大罪人は創造神たる余の力を思い知るがいい』』
全世界の生命を無へと帰さんとする神の力が。
『『『カース・オブ・ゴッド』』』
デス・トーカーの身に降り注いだ。
生きていた。
デス・トーカーは無傷で、生きていた。
しかし感じられる力はゴミムシ以下となっていた。
「これが、神の怒りか」
デス・トーカーは、
「死ねない呪いにかかってしまった」
不敵に笑った。