二十四話 死水
シスイを連れて、人気のない近所の公園に移動する。
骸骨姿の彼は、他の誰からも認識されていないようだった。
「まずはこんな所。いや、世界まで出迎えご苦労」
「まぁあっしには簡単でしたがねぇ。あっしが骸骨の姿をしているのは、既に死んでいるからなんでぇ」
聞くところによると、シスイは死んでいるらしい。
だからこそ、この世界に簡単に渡ることができるという。
……いや、知らんかった。
「さて、城の皆が心配しているんでさぁ。早く帰りやしょう」
「待て、前魔王のマイン様がこの世界におられた。まだ帰るわけにはいかん」
シスイは少し黙り込んだ。
顔は骸骨でも、付き合いが長いトーカーは表情が読めるのだろうか。
先に口を開いたのはトーカーだった。
「魔王様はこの世界はどういうものなのかを理解しようとしている。既知ならばその知識を授けよ」
「……こんなところで、こんな話もなんです。まずは場所を変えやしょう。拠点は?」
「先ほど話した、マイン様の居住地だ」
「了解しやした。案内をお願いしやす」
心なしか、シスイの快活さが欠けているようにも思われたが……世界が違うのだ、こんなこともあるかと口は出さなかった。
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「あら、おかえ……そちらの方は?」
「お久しぶりでやす、マイン様。シスイでさぁ」
元家臣、そして元魔王の再会はシスイが先に言葉を投げかけた。
雰囲気を一変させて。
「天上の世界である此処は、死者しか訪れることはない。
マイン様、あんた誰です?」
「し、シス……⁉」
それはいつもの口調ではあるが、攻撃的な。まるで責めるような物言い。
トーカーと俺はその豹変に開きかけていた口を閉ざした。
「そうですね、此処はそういう場所です。
私は死者。この世界にいてもおかしくないのでは?」
「それがおかしいって言ってるんでさぁ! あんたはあの時死んではいなかった!」
どういうことだ。
大昔に起こった戦争でマインさんは死んだと聞いていたが……?
「はぁ……仕方ありませんね。死者である貴方さえいなければ隠し通せたんですが。これも運命ですか」
間を置いて、前魔王マインは語り始めた。
「――私はここで、この世界で生まれ、一度死にました」
なに?
「魔王となってあちらの世界で生まれ落ちた私は、数百年前に人魔大戦で命を落としました。
そして再度、この世界に生を受けたのです。
転生者、そう呼ばれています」




