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魔王継承  作者: FIIFII
第二章 日常とはかけ離れた日常を
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二十一話 ベルヘルタール

 私は魔王城に住んでいる、しがない雑用係だ。

 今日も城の清掃に勤しんでいる。

 照明魔物などの世話も、私の仕事だ。

 この二つだけで、日々が過ぎてゆく。

 休みはないが、やりがいはある。

 幼いころより夢がない私にとって、ここは良い場所なのだ。


 それにしても、近頃城が騒がしい。

 何事だろうかと思ってはいるのだが、聞けるような仕事仲間はいない。


「水のおじちゃんー」


 そんな時、一体の幽霊(ゴースト)が私に話しかけてきた。

 幽霊は魔物の一種で、人の魂が変質したことでそれに変異する。

 知能や理性がある程度失われるはずなのだが、この幼子は普通の子供だった。

 この幼子、アイラに一日一回幽霊の食糧である魂が濃縮された水、魂魄水(こんぱくすい)をあげていると自然と懐いてしまった。

 だから水のおじちゃんなのだろう。


「なんだい、アイラちゃん」


 幼子はたどたどしい口調で、私に尋ねる。


「まおーさまがねー、いなくなったんだってー」


 魔王様が、いなくなった?

 通りで城が騒がしいわけだ。


「今『そうさくたい』っていうのが作られてるって言ってるんだけどー、水のおじちゃんは行かないのー?」


 捜索隊……か。

 魔王城の住人の質が落ちているのか。馬鹿ばかりだ。

 この私、地のベルヘルタールを頼らないとは。


「教えてくれてありがとう、アイラちゃん。今から捜索隊の人たちのところに行ってくるよ。お礼に私の部屋にある水を飲んでていいよ」

「わーい!」


 さて、若者に年長者の威厳を見せてやらねばいかんな。



--------



 食堂に着くと、やはり声が煩わしい。

 見ない顔も多いな、新参者が7割を占めている。


「おお、ベルヘルタールさんじゃないか!」


 昔は食堂の守護神などと呼ばれていたこの人だが、今では食堂のおばちゃんか。

 この人は私のことを憶えていたようだ。


「皆聞いとくれ! この人が来たからには魔王様は見つかったも同然だよ!」


 その声を聞いて、数秒後に場が静まり返る。

 私は一歩前に出て、怒る。




「貴様らは何をしていた。捜索隊? 笑わせるな、そんなもの役割に合っていない!」

「ベ、ベルヘルタールさん?」


 食堂の守護神が私を宥めるが、無視して続ける。


「シスイ、魔王様がいなくなったと判明してから何日経った」

「三日でさぁ」

「遅すぎるであろうがっ! 三日もあれば何か手を打てたはず。そんなときに何をしていた?」

「皆でお茶を飲みながら、そのことについてだべってたっすね」


 こいつら、魔王の城に住まう者としての自覚はあるのか。

 シスイはまだ良い。骸骨の中からカラカラと音が聞こえる。恐らくパーツ交換をする間もなく魔王様の行方を捜していたのだろう。

 だが、この若者たちは何をしていた。茶を飲み会議? 笑わせる。


「そのことについてはまあいい、あとにしよう。ベレッタ、私の宝具を取ってきてくれ」

「そう言うと思って、取ってきておいたよ」


 素晴らしい手際だ、しかしこの城ではこれが普通。

 手際が良く、頭が回り、万能であることこそがこの城に住まう条件だというのに。

 ベレッタの手から、一冊の本が渡される。


「『解放(オープン)』」


 本が開き、言語を解読する。


「どうやら、世界の外側にいるようだ。捜索隊とやらを出さなくてよかったな。しかしどうしたものやら……」


 しかし、シスイは笑った。

 何がおかしい。


「世界の外側ですか、いやあそれなら好都合」


 シスイは表情のない骸骨の顔で、自慢げにこう言った。


「あっしの領域(テリトリー)は、こっちじゃなくてあっちなんでぇ。こっちで探すよりも早い話でさぁ!」


 カラカラカラと笑うシスイは、ただ骨を打ち鳴らしていた。

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