十一話 まおうは しあわせを てにいれた
歓迎会は何事もなく終了した。
ビンゴ大会でシスイがイカサマをしていたり、あの子供が幽霊だったりと色々あったが……何事もなかった。
あれから10時間が経過した。
今は誰もが寝ている。
俺以外は。
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食堂で全員が寝転がり、辺りにはぶちまけられたワインや料理が散らばっている。
そんな中で魔王は一人、パジャマ姿のまま奇跡的に残っていた料理を食べていた。
魔人の体は、過剰に栄養を摂取しても問題ないのだ。
「部屋……戻るか」
粗方片付いたところで、部屋に帰ろうとする魔王。
だがそこに大きな問題が。
「こいつら邪魔だな」
倒れている魔人男衆を退けようとするが、非力な子供の体では動かない。
困った魔王は魔術で食堂の入口までの道を開けようとした。
脳が飽和状態の魔王は、雷を降らせたり爆発を起こしたりと大問題を起こす。
そのせいで数人が三日間起きなくなったのは仕方ない。
そうして食堂から廊下に移動した魔王。
そこに襲い掛かる闇。
完全に真っ暗だった。
何も見えないが、ここも魔術で解決する。
魔術は便利だと改めて魔王は思うが、使った魔術は『蛍の尻』。
自らの尻を極限まで光らせる、ある虫が使う魔術だった。
滑稽すぎるその姿は、シスイやデス・トーカーが見たら笑いを堪えきれずに爆笑して魔王に折檻されるだろう。
そうして廊下から階段へと移動した魔王。
そこでなぜか階段が、異音をたてながら自動で上がったり下がったりを繰り返す。
面倒なので階段を魔術で壊し、宙に浮いて自室まで到達する。
これらで使用した時間は約1分。
食堂から魔王の部屋へのタイムアタック記録更新であった。
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部屋に戻った俺は、何も考えられない頭でふらふらしていた。
脳みその中に何も入っていないような気持ちだ。
浮いているというか、何も考えられない。
「あ~…………」
こんな声をどれだけ出せるかなどを検証したあと、ベッドにダイブする。
そうして目を閉じると、心地が良い。
そのまま俺は眠った。
疲れていたとか、睡魔に負けたとかそういうのじゃない。
言葉に表すのは難しいけど、一つだけ言葉にできる。
俺は今、結構幸せな気持ちだ。