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浅葱の夢見し  作者: いろはうた
第一部
18/50

番外編 アラジンと魔法のランプ

~浅葱の夢見し  アラジンと魔法のランプ編~





*登場人物*



アラジン・・・レイヤ


ジーニー・・・カエデ


麗しの美姫・・・シキ


王様・・・ヒレン


大臣・・・ヒタギ


家来1・・・トクマ





トクマ君はまたまた超脇役ですw


*むかしむかしあるところにアラジンという剣術ばk……せ、青年がいました。

その頃、アラジンが暮らす国ではある洞窟の中には

ランプとそれに住むランプの精がいるといううわさでもちきりでした。




ヒタギ:「レイヤ。


     とってこい」


レイヤ:「…ヒタギ様。


     ……おれは犬ではございません」


ヒタギ:「そんなことはどうでもいい。


     おれはランプが欲しい。


     だから、おまえがとってこい」


レイヤ:「…ランプが欲しいという理由だけで

     

     おれをこき使うのやめていただけませんか」


ヒタギ:「ただのランプではない。


     おれの巫女姫が宿っているという設定のランプだ。


     欲しい。


     どうしても、おれの手の中におさめたい」



刀に手をかけかけていたアラジンはぴたりと動きを止めました。



レイヤ:「・・・それは真ですか」


ヒタギ:「嘘をついてどうする」


レイヤ:「・・・こすればあの巫女が出てくるのですか」


ヒタギ:「年中無休で出てくる。


     ちなみに、ランプをこすった奴が


     巫女姫の主となる」


レイヤ:「・・・主」


ヒタギ:「なぜ、微妙に顔がゆるんでいるんだ。


     とにかく、とってこい」


レイヤ:「・・・御意。


     今すぐ行ってまいります」

 


うまくまるめこまれたアラジンは大臣に言われて


ランプを取ってくることにしました。






*アラジンは洞くつにたどり着くと、中に入っていきました。


薄暗いその中には、金銀財宝がざっくざく。


きんきらまぶしいくらいです。


しかし、アラジンはそれに目もくれず、まっすぐにランプのもとに行き、


おもむろにそれを手に取りました。



「・・・」



持つ手が何故か震えています。


次の瞬間アラジンは猛烈な勢いでランプをこすり始めました。


やがてそろそろ煙が発生するだろうという頃に、突然、ぼわんっと


ランプから煙が出てきました。



カエデ:「あつっ!!


     暑いわよ!!


     こすりすぎでしょ!!


     2,3回こすったら十分だってば!!」


レイヤ:「…出たな、巫女」


カエデ:「出たな…って何その化け物に言うようなセリフは。


     アドリブはだめだよ」


レイヤ:「…ここで会ったが百年目…!!」


カエデ:「な、なによその親の敵にでもいうようなセリフは!!??


     それに、私、今はランプの精のジーニー。


     あなたの願いを三つだけ叶えてあげる。


     あ、でもね、アラジンは麗しの姫と空飛ぶじゅうたんで


     デートしたいってお願いしなきゃだめだから、正確には二つ叶え…」


レイヤ:「…なら、おれと剣術の稽古をしろ。


     それがおれの願いだ」


カエデ:「しょぼっ!!??


     野望しょぼすぎない!!??


     もっとこう、ぱーっとしたのにしたら?


     剣術なんていつでもできるじゃない」


レイヤ:「…剣術はしょぼくなどない」


カエデ:「…うん。


     わかったから、うん。


     それが、あなたの願いよね…


     そこは本当にぶれないね…」




ジーニーはしばらくアラジンの剣術稽古の相手を


つとめなければなりませんでした。






*ある程度剣術の修業ができたことに満足したアラジンは


お城にランプを持って帰りました。



カエデ:「もう・・・無理・・・。


     もう動けない・・・。


     あなたどんだけやれば気がすむのよ・・・」


レイヤ:「…お前の体調に気をつかってやれなかったのはすまなかった。


     つい夢中になってしまった。


     …しばらくはゆっくり休むといい」


カエデ:「あ、ありがとう・・・?」


レイヤ:「…そのあとにまたやるぞ。


     そのためにゆっくり休め」


カエデ:「まだやるの!?ねえ!!??」


レイヤ:「…あんなものではまだまだ。


     少し待っていろ。


     刀の手入れをしてくる」


カエデ:「・・・ここは大臣に私が手に入ったって


      報告する場面じゃなかったっけ?」


レイヤ:「・・・たまにはアドリブも必要だろう」


カエデ:「そうよね…?


     信じるよ、その言葉…??」


アラジンはすいっと視線をそらしました。


レイヤ:「・・・今さらだが」


カエデ:「な、なに?」


レイヤ:「・・・なんだそのつつしみのない恰好は」


カエデ:「べつに?


     大事なところは隠れてるから大丈夫だよ?」


レイヤ:「・・・大丈夫ではない。


     裸とたいして変わらん」


カエデ:「これ裸じゃなくてアラブの衣装だから!!


     そういうつくりだから!!」


レイヤ:「おれはともかくここにはヒタギ様やあの皇子もいる。


     いつ襲われてもおかしくない。


     少しは意識をしろ。


     今回はおまえの姉は参加していないから男ばかりに女ひとりの劇だ。


     周りが男しかいないということを忘れるな」


カエデ:「でたよ・・・レイヤのお父さんモード・・・。


     レイヤってお説教の時はたくさんしゃべるよね・・・」







歩き去るアラジンの姿が廊下のむこうに消えたので、


ジーニーはひとまずランプの中に戻ることにしました。





*ごしごしごし


ぼふふんっ


ランプをまたこすられて、ジーニーはめんどくさそうに出てきました。


カエデ:「今度はなによ~。


     刀磨き終わったの・・・ってヒタギ!?」


ヒタギ:「久しいな巫女姫。


     あと、おれは刀など磨いていない」


カエデ:「さっき台本の打ち合わせで会ったところじゃない!!


     なんで登場するたびに久しいなんていうのよ!?」


ヒタギ:「本当につれない巫女姫だ。


     このおれがおまえから一瞬たりとも離れたくないこの気持ちを


     わかってくれないとは・・・」


カエデ:「今は、ジーニーです!!」


ヒタギ:「巫女姫」


カエデ:「だから、ジーニーだってば!!


     人の話聞いてよ!!」


ヒタギ:「おまえこそおれの話を聞いていたのか?


     おれはこの前お前に何と言った?」



そう言うと、大臣は眉間にしわを刻みました。



カエデ:「なんで逆ギレ・・・」


ヒタギ:「なぜ他の男にへそやらふとももやらを見せる必要があるか、と


     おれは前に言ったはずだ。


     結論は一つ、見せる必要ない」


カエデ:「私が見せたくて見せているんじゃなくてそういう衣装なの!!」


ヒタギ:「そのようなお前の姿を見たら、ほかの男が皆、お前に惚れてしまう」


カエデ:「そんなわけないないわよ!!」



大臣は深いため息をつきました。



ヒタギ:「無自覚な者ほどたちが悪いものはない」


カエデ:「なんの自覚よ!?」


ヒタギ:「おまえに今のおれの気持ちなどわかりはしないだろう…。


     まあいい。


     見せるのがおれだけであるなら、その恰好はおおいにけっこうだ」


カエデ:「なにその肉食獣のような目は!?」



大臣は、すっとジーニーのあごに手をかけました。


さりげなくもう片方の手で、ジーニーの両手をを拘束しています。



ヒタギ:「ランプの精は主の願いを叶えるのだったな。

     

     今は、おれが巫女姫の主だ。


     …さて、どうしてくれようか」


カエデ:「やばいやばいやばい。


     ヒタギ今の笑い方、ヒレン様に似すぎ!!


     笑顔ちょっと黒いから!!」


ヒタギ:「せっかくそのような恰好をしているのだ。


     …何事も有効活用をしなければ…な?」


カエデ:「な?じゃないわよ!!


     有効活用しなくていいから!!」



ジーニーが真っ赤な顔でじたばたと暴れましたが、大臣は


ますます目を輝かせて笑みを深めるばかりです。


ヒタギ:「いい格好だ。


     おまえの肌が白雪のように白くなめらかなことがよくわかる。


     ・・・そして、おまえにずっと触れていたくなる」




ごしごしごし


ぼふふんっ


ジーニーが今にも押し倒されそうになったところで


何者かがまたランプをこすりました。


ランプをこすったのは、なんと王様でした。


ヒレン:「やあ、巫女姫。


     今日は一段と色っぽい恰好をしているね。


     それは、私のために着飾ったと思っていいのかな?」


カエデ:「はあ!?


     いや違いますから!!


     ジーニーの衣装ですからこれ!!」


ヒレン:「そんなに照れなくてもいいのに」


カエデ:「照れてませんっ!!」


ヒタギ:「……兄上はいつもおれの邪魔をしますよね」


ヒレン:「そんなことないよ?


     私はただ、いたいけなランプの精を悪役の大臣から守っただけだ」


カエデ:「うわー黒い。


     えげつなく笑顔とおなかが真っ黒ですよヒレン様」



ごしごしごし


ぼふふんっ



レイヤ:「…ヒレン様。


     おれのランプの精です。


     お返し願いたい」



刀を磨き終えたアラジンが戻ってきました。



ヒレン:「レイヤか。


     せっかく私が巫女姫の主になったというのに、


     いいところで邪魔をするね」


ヒタギ:「そうだ。


     このランプはおれが巫女姫を愛でるためのものだ。


     レイヤ、いろいろと言っていることがおかしいぞ」


カエデ:「あなたの言っていることがいろいろとおかしいわよ!!」


ヒタギ:「おれはヒタギだ」


カエデ:「今は大臣です!!」


ヒレン:「そういえばレイヤ、


     おまえは姫にデートを申し込まなければならないのではないのかい?」


レイヤ:「…そういえば。


     しかし、それは王であるヒレン様に許可を取らなければ


     ジーニーとデートはできないはずでございます」


カエデ:「れいやさーん。


     そこジーニーじゃなくて姫ね~


     ボケはいらないよ~」


レイヤ:「…ぼけてなどいない」


カエデ:「…それはそれで困るよ」


ヒレン:「そうだねレイヤ。


     言葉には気をつけないと」


カエデ:「ヒレン様!!


     真っ黒な笑顔で悪霊退散のおふだ、出さないでください!!」




しばらくもみあいが続きました。




~気を取り直して10分後~


レイヤ:「…ジーニー。


     ……おれをおまえと…じゃなくて姫と釣り合うような


     見栄えのする格好にしてくれ」


カエデ:「おおせのままに~」



ぽぽぽぽーんっ


一瞬でアラジンの衣装が豪華なものに変わりました。



ヒタギ:「あとはレイヤが兄上に姫とのデートを申し込むだけだ」


レイヤ:「………ヒレン様。


     ………………姫とデートさせてください」


カエデ:「……ものすごく棒読みだね」


ヒレン:「いいよ」


カエデ:「ヒレン様、返事軽っ!?


     あと何故かアラジンの目からどんどん生気が抜け落ちているよ!?」


レイヤ:「……偽りの言葉を口にするのがこれほどつらいとは…」


カエデ:「…そんな死にそうになるほど何が言いたかったの!?」


レイヤ:「ヒタギ様。


     この巫女をおれに下さ―――」


ヒタギ:「このおれのものに手を出そうとするとはいい度胸だな」


カエデ:「ちょっ、ちょっと!


     ふところに手を突っ込んで何を出そうとしてるのよ!?


     あ、ほっほら!!


     姫のご登場みたいよ!!」



高らかなファンファーレがあたりに鳴り響きました。


ジーニーが指差した方向に照明係でもあるトクマがスポットライトを当てました。


そこにはディズ○ーのジャ○ミンひめのような恰好をした姫がいました。


だるそうにこちらに向かって歩いてきます。


しなやかな腹筋やらたくましい二の腕が衣装と相まって、


奇妙な雰囲気を醸し出しています。


しかし、顔がやたらと美しいので違和感が全くありません。


全くありません。


その場にいる全員が姫の姿を認めて行動を一時停止しました。


レイヤ:「……何しにいらしたんですか、シキ様」


シキ:「作者に劇のヒロインになってくれと土下座されたので、


    仕方なく引き受けてやったのだ。


    面倒だが土下座までされたのだ。


    仕方あるまい」



そう言いながらも、姫はどこか楽しそうです。


珍しい異国の姫君の服がおもしろいからでしょう。


姫は、その場にいる野郎どもを押しのけると、ずずいとジーニーに迫りました。



シキ:「にしてもだ、巫女よ。


    その恰好はおれにさらってくれと誘っているのか?


    …実にそそる」


カエデ:「そそられないでください!!」


シキ:「それに今日の劇では、そなたをわがものにできると聞いたから


    こうして来てやってヒロインを引き受けたのだ」


カエデ:「いや、ただの姫役で、ヒロインでもなんでもないと思いますよ…って、


     ちょ、近い!やたらと密着しないでください!!


     だあ!?


     なんで抱きつく!?


     は、はな、離れて!!」


シキ:「離さぬ。


    そなたが自らわがものであると言うまで離さぬ」


カエデ:「何すねてるんですか!?」


シキ:「…柔らかいなそなた」


カエデ:「え無視?


     無視ですか?」


シキ:「よい匂いもする。


    それに温かい。


    このおれの格好は冷える。


    余計離しとうない。


    …おまえがおれを温め―――」


カエデ:「ぎゃああーっ


     シキ様!


     れっどかーどです!!


     退場ですっっ!!


     あと、私、ランプの精だから、私の主はアラジンだけです。


     あなたのものにはなりません!!」


レイヤ:「巫女……」


ヒレン:「レイヤ~


     色々と勘違いしてるみたいだけど、たぶんそれ違うからね~」


シキ:「…ほーう。


    して、アラジンとは誰がやっておる?」


カエデ:「えーっとですね…ってえ……?」



姫の目がすさまじい殺気に満ちています。


その ”アラジンまじ殺す”という視線にジーニーはだらだらと冷や汗を流しました。


このままだとアラジンが姫に殺されてしまうとすばやく賢明な判断をしたジーニーは、


最終奥義 ”話を変える”を発動しました。


     

カエデ:「そ、そんなことどうでもいいじゃないですか~


     そんなことよりも…」


レイヤ:「…アラジンとはおれです」


カエデ:「レイヤ!?


     そこ、空気読んでしらばっくれて黙っているところよ!?


     りちぎに名乗り出ないところよ!?」






話が進みません。



レイヤ:「…シキ様。


     おれとデートしてください」


シキ:「断る」



この会話が先ほどからずっと繰り返されているからです。


大臣も王様もジーニーもうんざりした表情を隠しません。



シキ:「何故、貴様のようななんの面白味もない男と


    ”でえと”しなければならぬのだ」


レイヤ:「……それはこちらのセリフです…」


カエデ:「そんなセリフないからね!?


     ていうか、シキ様もさっさと承認してください~」


シキ:「いやだ」



……進みません。


話が全くと言っていいほど進みません。


仕方なく作者はトクマにあるカンペを持たせ、彼を送り出しました。



トクマ:「おーい!!


     巫女!!


     これ、お前が音読しろってさ~」


カエデ:「お、音読!?」


トクマ:「ああ。


     なんか、すごくでかい声で叫ぶように言えって」


カエデ:「これ、カンペでしょ?


     黙読じゃないの?


     ……ていうかなんで?」


トクマ:「し、しらねーよ」


カエデ:「目が泳ぎまくっているんですけど」


トクマ:「じゃ、じゃーな!!」



家来逃走。


なんだかんだ言って、こういうところで読まなければいいのにまじめに大きなよく通る声で


音読するのが、このジーニーのいいところであり、損するところです。



カエデ:「えーと、なになに…


     『シキ様!


      レイヤとデートしてくれたら


      ご褒美に、ほっぺにちゅーしてあげますっ!!』


      ……ってはああああっ!!??」


シキ:「ほーう。


    言ったな。


    いいだろう。


    ”でえと”してやるぞレイヤ」


レイヤ:「……もったいなきお言葉…?」


ヒレン:「レイヤ~


     そこ、疑問形にしちゃだめだからね~?」


シキ:「巫女よ。


    どうせ口づけてくれるのなら、頬ではなく唇に―――」


カエデ:「シキ様!?


     私、カンペ読み上げただけですよ!?」


シキ:「案ずるな。


    作者に罪はない」


ヒタギ:「どうしてくれよう…このくそ作者…」


ヒレン:「ヒタギ、隅っこでこの駄作者をどうるか、考えようか?」


カエデ:「ヒレン様!?


     笑顔、史上最大級に怖くて黒いですよ!?」


レイヤ:「…シキ様。


     こんなこと、さっさと終わらせましょう」


シキ:「同感だ。


    さっさと”でえと”を終わらせて…」



にやりと姫らしからぬ笑みを姫は浮かべました。







あ、ほーにゅーわー


音響がかりであるトクマが音楽を流し始めました。



シキ:「…とは言ったものの、本当に貴様、面白くないな。


    空飛ぶじゅうたんにのっているというのに


    砂粒ほども楽しいとは思わぬ」


レイヤ:「…わがまま言わないでください。


     ……おれ、主人公のはずなのにそれほどジーニーとの


     絡みありませんでしたし…」



ぼやく二人を乗せて、じゅうたんは夜の空をとびます。



おしまい☆



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