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面接官はブラックがお好き?

今日も暇・・・いえ、仕事してますよ。

毎朝起きたら連絡事項のチェックをして、モニターの監視をはじめます。

そしたら疲れてくるので合間にコーヒーを飲みます。

ぐるりと肩を回して気合を入れなおしモニターを見ます。



「・・・あれ? もしかして私暇なんじゃない?」

「馬鹿言ってないで報告書でも書いたらどうだ」


相変わらず奥のほうでゴソゴソと何かやっている先輩が言ってきました。

物音を立てている割にはこっちの話がよく聞こえている様子。

まあ確かにそろそろ報告書まとめたほうがよさそうです。

なんとかクエストも、中盤の山場にさしかかろうとしてますし。

来て10日でコレだからクリアまで一ヶ月かからないかも知れない。

ムラサマの一振りで雑魚が消し飛ぶんだから当然っちゃ当然か。


数分後。


提出用の報告書をまとめていると、久々に黒電話がなった。

かなりびっくりしたけれど、何とか気持ちを落ち着けて受話器をとる。

受話器の向こうからいつものベルちゃんの声が聞こえてきた。


「ハロ~フーちゃん。お仕事ですよ~」

「おまかせあれ! で、いつくるの? 明日とか言わないよね」


前は急だったから色々と不手際があったんだよねぇ。

主に勇者様のステリセットとか。ムラサマとか。

あ、ムラサマは先輩の暴走のせいって報告書に書いとこ。


「あーうん。そこはさすがに大丈夫。というか面接待ちだしね~」

「そっか良かった。面接待ちってまだ解消されてないの?」


面接というのは、良くある転生ネタのプロローグにある神様とのお話のことです。

最近では転生する人が増えてきて面接する側はパンク寸前らしく、この間知り合いが飲みの席で愚痴っていた。


「そうみたいだね~。じゃ、また何かあったら連絡するから準備よろしくね~」

「こっちこそよろしくね~」


さあさあ、仕事だ仕事!

モニターを眺めて退屈だなんて言うのはもう終わりなのです!


「先輩~聞こえてたっすよね?」

「まあな・・・っと」


奥からホログラフをいじりながら先輩がやって来た。

今度はどこの世界なんでしょうか。

期待して待っていると、ホログラフをいじっていた先輩の指が止まる。


「お、これか。・・・ファーストファンタジーだとよ」

「へぇー! またも王道っすね」

「面接はまだだから情報は無いな・・・ムゥ」

「今回は無難なやつにしてほしいっす」


転生者さんの情報が無いので、どんなアイテムを送ろうか先輩は悩んでいるようです。

頭を抱えながら奥にひっこむと、早速ガサゴソと物音が聞こえてきました。

さすがに今回はまともな物を作ってくれる・・・ハズ。

他人の心配もほどほどに、私も仕事用の服に着替え準備万端。

いつもの、といえるほど使用していない転送用ポータルの部屋に急ぎます。

といってもまあ部屋の扉からすぐなんですけども。


「FF~っと。お! これだこれだ」


コンソールをパパッと操作し、いざ仕事場へ。

一瞬の立ちくらみが終わるとそこはもうゲーム世界。

あたりを見渡してみると、ここは草原のど真ん中のようです。

吹き抜ける風が屋内でくすぶっていた私の心を浄化してくれるようです。

しばらくポケーっとしていると後ろから気配を感じ、振り向いてみると・・・


「クエ!」

「あらま、キューちゃんじゃないですか」


そこにいたのはこのゲームおなじみの大きなヒヨコみたいなマスコットキャラでした。

久しぶりですねえなんて言いつつ撫でてやると、うれしそうに頬を擦り付けてきます。

うはぁ、かわいい。

このまま愛でていたい・・・あ、そうだ。


「キューちゃん。近くの町まで乗せていってもらえませんか」

「クエー!!」


気合の入った雄たけびと共に、くちばしでつまんでひょいと背中に乗せてくれました。

どうやらオッケーなようです。


「さあ、無限の彼方へ!」

「クエェーー!!」


これでちょっとは楽が出来るぞ。なんて私は考えていました。



数時間後。



最寄の町のたんすにポーションを隠したり、道沿いのダンジョンに町から持ってきた装備品をいくつか設置したりして、なんとかこの大陸の端っこの城下町までやってきました。徒歩なら一日はかかったかもしれない。

そして名残惜しくも町の入り口でキューちゃんとお別れです。

さすがに海は渡れませんからね。


「クエ!」

「あ、うん。ありがとうね。また何かあったら連絡するから・・・」


私を乗せたときより数倍のスピードで走り去るキューちゃん。

見送る私は内股をさすりながら手を振ります。

うう痛い。動物の背中に乗るのって結構つらいのね。舐めてました正直。

そういえば、このあたりに回復系の水の召喚獣がいた気がする。

ちょっと寄ってみよう。


そんなこんなで城下町横にある水の神殿にやってきました。

通路という通路が水浸しでひんやりしていて気持ちがよいのですが、腰の辺りまでつかるのはどうなんだろうか。

水路脇にスタンバっている半漁人さんに挨拶をしながら最奥を目指します。

最後の謎解きエリアでは、仕掛けを解いて奥まで行く訳にもいかないので、

飛んでくるギロチンとか迫ってくる針の壁を力ずくで押し返して進みました。

脇でスタンバっていたスケルトンナイトさんが驚いていたような気がしますが、まぁ気のせいでしょう。

しゃれこうべですし。


最期の部屋には台座があるだけの広間で、台座の上にはきれいな宝石が輝いていました。

当分は交換は必要なさそうですね。

ちなみにこの神殿の水はこの宝石から生まれたものであるという設定です。

あくまで設定なので気づかれない様にしっかりとインフラは整えています。転生者さんには内緒ですが。

宝石周りをあちこちチェックしていると、真上から大きな結晶がゆっくりと落ちてきました。

きらきらと光を反射する結晶の中にはなにやら人影が。

すると台座に当たろうかというところで、結晶がはじけて中から人が現れました。

派手な登場だなあ。


「どう? どう? フーちゃん、今回ちょっといい感じじゃないコレ?」

「そうですね」

「あら、なんか冷たいわねー」


中から出てきたのは水の召喚獣ウンディーネの人魚、レイテさん。

毎回派手な登場をすることに意欲を燃やしている。

前は確か地面からせり出して来たっけ。

するとレイテさんは何かに気がついたようにクスクスと笑い出した。

なんですか?


「歩きづらそうだけど何かあったのかしらってね?」

「ああ。 調子に乗ってキューちゃんに乗りすぎちゃいまして」


なーんだ。とつまらなさそうにそっぽを向く。

え? 何?


「先輩くんと何かあったのかなって思っちゃったわ」

「先輩は関係ないでしょうに」


言わんとしている事は分かるけれども、動揺することはないです。

あの引きこもり上等な先輩が私にどうこうなんて想像できないんだよなぁ・・・。


「そうよねぇ」

「そうですよ」


なんだかんだ無駄話に花を咲かせつつ、魔法で痛みもとってもらったところで電話がなった。

噂をすれば、ですかね。


「ハイもしもし、先ぱ・・・」

「あ! フーちゃん? 大変なのよ~」

「あれ? ベルちゃん?」


個人端末にかけてきたのは、先輩ではなくてベルちゃんだった。

珍しいこともあるものだと話を聞いていると、電話の向こうはそれでころではないらしい。

なにやら悲鳴めいた叫び声が聞こえてくる。なんだなんだラグナロクか。


「あのね~、面接官の一人が過労で倒れちゃったの~!」


ああ、やっぱり。

順番待ちが起きてる時点で何かおかしいと思ってたけど、いよいよ限界か。

しかし、冷たいようだけどよその管轄の話である。私には関係ない話じゃぁ・・・。


「それがね~。フーちゃんとこの転生者さんとの面接の直前に倒れたのよ」


嘘!?

よりにもよってこんな過疎管理部署の転生者さんが当たりくじ!?

日ごろ仕事してないバチがあたったのだろうか。

それでも担当面接官を変えるなり、順番を後にするなりしてもらえばいいのではないだろうか?と言ってみると、


「それが、その転生者さんもう起きちゃって・・・部屋で待ってるのよ~」

「えぇ・・・。どうすんのさ、それ」

「代わりの人も手配できないし~、ってことでフーちゃん。出番よ」


柄にも無くキリッとした声でベルちゃんは言った。

確かに、暇だと冒頭に言いかけたけれども面接官の真似事なんてやったこと無いですよ!


「大丈夫だって! 迎えはもうそっちによこしたから!」

「拒否権なしじゃん!」

「なんだか大変そうねぇ・・・あら?」


レイテさんが何かに気がついて上を向いた瞬間、広間の天井を突き破って巨大なロボットが降ってきた。

ズシャアン!! と派手に粉塵を撒き散らして着地。

しばらく着地地点に座り込むロボットの周囲には卵状の膜が張られていたが、すぐにそれを突き破って立ち上がり、ノシノシと二足歩行を始めた。


「ピピ・・・タイタン投下完了デス」

「何なのこれ・・・」

「こういう登場もありかしら」


衝撃の光景に思わず絶句する私と、なにやら感慨深げにロボットを見つめるレイテさん。


「それじゃ~フーちゃん。それに乗ってね」

「えっ」

「いってらっしゃ~い」

「ちょっ、わ!」


呆けているとむぎゅっとタイタン(仮)につかまれ、なすすべなくコクピットに放り込まれ、水の神殿から連れ去られたのでした。



最近タイ○ンフォールが楽しいです。

でも最近のゲームなのでフーちゃんはたぶんやったことは無いでしょう。

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