喫茶店のといつものと
気がつきゃ半年。お待たせしましたほんとに。
あれから一週間がたちました。
あれっていうのはもちろん、ムラサマ
…じゃなくてなんとかクエストの管理のことです。
そう、もう一週間です。
早いですね~。
その間ですか?
もちろん仕事してましたよ。
管理世界のモニターという大役を…
「…暇ですね」
テーブルに座ってモニターばかり見ていてはさすがに飽きる。
今のところモニターする必要のある世界は、
なんとかクエストだけなのでさらに退屈だ。
「先輩、コーヒーおかわり」
「自分で入れろ」
ゴソゴソと部屋の奥で暗躍する先輩。
なんやかんやで返事をしてくれる辺り、先輩も暇なのかもしれない。
しぶしぶコーヒーメーカーに手を伸ばす。
豆が少なくなってきていたが、ここは気づかないふりして先輩に買ってきてもらおう。
「あ、そうだ。お前そろそろ休みとっとけよ」
「え?なんですかいきなり」
「いくら暇でも形ぐらいは休暇をとれって中央からのお達しだ」
「えぇ~…」
突然休暇と言われても困る。
こっちにも予定とかイロイロ…あれ?あったっけ?
「たまには町にでも行ってきたらどうだ。あと豆買ってきてくれ」
「本音はそっちでしょーに」
町に行くのは悪くないですねぇ。先輩の言う通り最近おでかけしてませんでしたから。
かといって仕事をしていたかと言われればイエスとは言えませんけれども…
ま、とにかく身支度をしてきましょう。
私の部屋はこの職場の二階なのですぐです。
仕事着をパパっと脱ぎ捨て、休日用のジャージに着替えます。
お洒落とかはする気おきませんね。元男の矜持とかではなく単にめんどくさいのです。
仕事ではそれなりな女物の服は来ますけど、それ以外で着る気は起きません。
ジャージ姿でリュックを背負い、おでかけの準備が整いました。
「では先輩、行ってきます」
「タケノコでも取りに行くのか」
冷ややかな目線を受け流し、そそくさとドアをくぐることにしました。
竹の子ってなにさ!
町の中心までやって来ました。
噴水広場のようなものがあるので、待ち合わせ場所には最適です。私は待ち合わせ目的ではなく、単にこの場所が落ち着くからなのですが…
なんでしょうか、この微妙ないづらさは。
そういえば、途中すれ違う人から、その格好マジか?といった視線を受けました。
マジだよ。
…そんなにおかしいかな。
とにかく、珈琲屋さんにいきましょう。
遠巻きに笑われている気がする!
駆け足で広場をあとにし、行きつけの珈琲屋につきました。
シックな色合いの扉を開けると、カランカランとベルが店内に響き渡りました。
その音に反応して、カウンターにいたマスターがこちらに笑顔を送ってきます。
「やぁフーちゃん。今日はタケノコでも取りに行くのかい」
この熱いタケノコ押しはなんなのだろう。
なんか腹立つんですけど!
あ、でもなんかタケノコ食べたくなってきた…くやしい!
「珈琲豆を買いに来たんすよ!ってかタケノコゆーな」
「アッハッハ!なんかそんな雰囲気に見えてね。豆はいつもので良いかね」
うん、と軽く返事をする。
我ながらこなれた動作でカウンターに座ると、いつの間に入れたのやら、マスター自慢のコーヒーが手前におかれていた。
では、両手のシワとシワを合わせて…
「いただきます」
「すこしまってなよ」
そういうとマスターは奥に引っ込んだ。
同じ奥に引っ込むのでも先輩とは違うなと感慨に耽りながら、コーヒーの匂いを楽しむ。
一息吸い込み、ほうとため息をつく。
さて、では味わうとしますか。
ズズッと、一口。
これだ…この苦味と嫌味のない酸味。これが先輩のコーヒーとは違うところなのだ。
うーん、やはりコーヒーはブラックに限る…
と、違いのわかる風なことを考えていると客が来たようだ。
カランカラバァン!
勢いよく開けすぎてベルが鳴りきっていない。誰だ、騒がしい。
「あれ~? フーちゃんじゃん?」
「あら~? ベルちゃんじゃん?」
「いらっしゃいませ」
豪快に扉を開けて入ってきたのは電話の主ことベルちゃんだった。
本名はベルセリオスらしいけど、ごつい名前が嫌いなようで他人にはベルと呼ばせているらしい。
まあ私としてもベルのほうが言いやすいからいいんだけど。
「フーちゃんと会うなんて珍しいね~! ところで何そのカッコ。ひょっとしてタケn「タケノコ取りじゃないですよ」あ、そうなの?」
え? 何? そんなに竹の子ルックなの私は。知らず知らずのうちに最先端走ってたの?
もんもんと過去最高の難問について考えているとベルちゃんが話題を振ってきた。
「そういえばさ~、こないだはごめんね~」
「何のこと・・・って、ああ。なんとかクエストの件?」
「そうそれ」
「まぁ気にしてないっすよ。連絡が遅いのはいつものことだし」
「いや~耳が痛いね~。あ、なんか頼みなよ。おごっちゃうぜ~」
そういえば奢ってくれるとか言ってくれていたっけ。
コーヒーだけじゃ物足りないと思ってたので遠慮なく頼もう。超頼もう。
え~っとォ・・・?カウンターにおいてあるメニューをなめるように見る。
横ではベルちゃんが「おお、フーちゃんがいつになくマジな顔。写メっとこ」などといっている。
しかしそんなことはどうでもいい。
落ち着け・・・私は腹が減っているだけなんだ。
プリンタルト・・・に、モンブラン・・・と、後は・・・ややッ!?なんだこのタケノコパフェって!
「マスター! このタケノコパフェってなんすか!?」
「パフェにタ○ノコの里が刺さってるんだよ」
「わ! 普通! じゃ、それとプリンタルトとモンブランください」
「合計1800円・・・? 遠慮ないのか微妙だよフーちゃん! 私はアイスティーで」
かしこまりましたというとマスターは奥の厨房に引っ込んだ。
やはり引っ込み方が先輩とは・・・ん?さっきも言ったなコレ。
まあ喫茶店で頼んでもそうそう値は張りませんし。
ってかそんなに一杯食べれませんし。
昔と違ってこの体は小食なものだから。
数分ほどベルちゃんと最近の流行廃りについて話していると、注文した品が出てきた。
タルトとモンブランはぺろりといけたが、パフェは多かったのでベルちゃんと二人で食べた。
「いやーおいしかった。ありがとねベルちゃん」
「いーのいーの。じゃ、そろそろ私帰るね~」
「またね~」
二人分の会計を済ませるとベルちゃんは騒がしくドアを開け、風のように去っていった。
聞くところによるとこれから夜勤なのだそうだ。
仕事が急に休みになった私とばったり会ったのもそのせいらしい。
・・・ベルちゃんはがんばっているのに。私は何してんだろうか。
むぅ、ちょっとおセンチな気分になってしまいましたね。
気がついたらうつろな目になってましたし。
瞳の焦点が合ってくるとマスターがこっちを見てニッコリとしていました。
「ほら、フーちゃん。豆の用意できたよ」
「え、あ、スイマセン。ついボーっと」
間抜けな顔を見られてしまった!
ポケットから財布を取り出して代金を支払って、コーヒー豆の袋をリュックにつめる。
さぁ帰ろう。あぁ恥ずかしい。
「それじゃあマスター」
「うん。大変だろうけどフーちゃんも仕事がんばってね」
「それじゃ、また」
マスターのやさしい視線に見送られそそくさと帰路についた。
あけてもカランカランと音のならないドアを開け、いつもの仕事場に帰ってきました。
帰ってきたときはもう夕方でした。
ベルちゃんとのおしゃべりが予想以上に長引いたみたい。
しかし行く前と変わらず先輩は奥のほうでゴソゴソと暗躍している様子。
買ってきた豆をドサッとコーヒーメーカーの横に置く。
「ただいま帰りましたー」
「! おう。じゃ、早速コーヒー飲むか」
「はいはい。カップ用意しますね」
新しいコーヒー豆を買ってきたとき、すぐに飲みたがるのは先輩の癖だ。
なんでも炒りたての引き立てが一番うまいのだとか。
喫茶店行きなさいよ。
奥からのそりと現れた先輩は慣れた手つきで豆をひいていく。
いい匂いが部屋に広がり、気分は昼間の喫茶店。
カチャカチャと陶器のこすれる音に隠れて、コーヒーフィルターにお湯を注ぐ音が聞こえます。
うーん、やっぱりこの時点でマスターのやつと匂いが違うんですよね。
「よし。我ながら会心の出来だぞ」
したり顔の先輩がコーヒーポットを持ってテーブル向かいに腰掛ける。
テーブルには私が用意したコーヒーカップが2セット。
コーヒーを注ぎながら先輩はカップから漂う香りを楽しんでいる。
「ではいただきます」
「おう」
一息吸い込み、ほうとため息を漏らす。
やっぱりマスターのとは違う香りだ。
ズズッと、一口。
これだ・・・この苦味と嫌味ったらしい酸味。これぞ先輩の味なのだ。
「どうだ。完璧だろう」
「いや全然」
きっぱりと言い放つ。いや、昼においしいものを頂いたばっかりだしね。しょうがないね。
言われた先輩はというと「不味いってことか!?」「味オンチ!」「違いの分からん男だな!」「・・・今は女か」と一人で問答をしていた。
まぁ、でも。
「嫌いじゃないですけどね」
「何か言ったか」
「知りませんよ」
「いや言ったろ! 大体お前は最近・・・」
結局この後先輩の小言を小一時間聞く羽目になった。
こうして私の休日は過ぎて言ったのでした。
次はいつになるやら。
筆が乗ればすぐですが、どうにも書く時間がなくて・・・気長にお待ちください。