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物語は唐突に始まる。  作者: 優 沙里(ゆう さり)
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第五話 物語は広がる。

 俺は待ち合わせの場所に向かいながら、制服の乱れを直す。

 一体全体、さっきのはどうなっているのだろうか。


 三上は学力優秀で、運動神経も抜群である。

 女子の人気もかなり上位に食い込んでいるはずだ。

 

 女子の気を引きつけているのそれだけでなく、彼の性格も人気を上げている。

 どこか落ち着いていて、それでいて誰でも優しくする。

 そんな彼があんなことをするだろうか。



 俺ははっと、気づく。

 そういえば、この学校の静けさは一体何なのだろう。


 いくら朝だとはいえ、途中ですれ違った人は、俺を襲った奴だけ。

 俺は足の速度を緩めずに辺りを見回す。


 どこもしんと静まりかえっている。

 足音の一つも聞こえない。



 不審に思いながらも、俺は玄関で靴に履き替え外に向かった。





///



 到着すると、そこには北川先輩と星野先輩がいた。


「遅かったな」

 北川先輩が眉毛をつり上げながら言った。

 端から見ると怒っているように見えるが、もともとの顔つきである。


「ええ、色々とトラブルがありまして」

「まあ、いいよ。それよりも他の二人は? まだここに来ていないようだけれど」


「もうじき来るんじゃないでしょうか」

「優。俺の髪を縛ってくれんか。朝縛るのを忘れていてな。猛烈に首筋がかゆいのだ」

 そういって、俺に二つのゴムを渡し、後ろを向いた。


「俺、縛るのうまくないですけど……。ポニーテールでも良いですか?」

「構わん。好きに結んでくれ」


「あ。じゃあ僕が結んであげようか。どんな縛り方でも出来……」

「近づくな。汚らわしい」


 髪の毛を触ろうとして近づいた星野先輩に向けて、北川先輩は切り捨てるように言った。


 少し肩を落とした星野先輩に、ほんのわずかな哀れみを抱くが、

「じゃあ、富美風くんの髪の毛をいじらせてくれないか、そのさらさらの黒髪を触りた……」

「近づかないで下さい。警察呼びますよ」

 そんな気持ちは一瞬で消し飛んだ。

 やはりこの人は変態だ。

 下を見るとスカートも履いている。羞恥心がないようだ。





 北川先輩の髪をポニーテールに結んでから、暫く経つが未だに二人が来ない。



 携帯電話にメールが届いていないか確認するが、連絡はなかった。


「仕方ありませんね。じゃあ、二人を抜きにして始めましょう」


 昨日帰り際に、皆各自の家で、原因やそれに関わりそうなことを考えてこようと決めたのだ。


「では、最初に北川先輩から」


「ああ。色々と考えたのだが、やはり俺はトイレが怪しいと思うな。理由は全員一致しているのがそれぐらいだからだ。あと、時間帯ぐらいだろう」


 昨日とほぼ同じ意見、か。


「では次に、星野先輩」


「僕としてはこのままが良いんだけどね。あ、そうそう。昨日風呂に入ったときの幸福な気持ちはもう言葉では言い表せないよね。これに関しては正確に調べたんだけどなんだけど、僕の胸のサイズはだいたい……」


「すみません。聞くこと自体が間違ってました。では最後に俺ですが……」


「わー! ごめんごめん! 冗談だよ、せっかく調べたのに無駄になるから話させて!」


 調べたのか。この人のことだからインターネットを使ったのだろう。

「……では聞くだけ聞きましょうか」


 星野先輩は、ポケットから折りたたまれたA4コピー用紙を取り出す。

 意外と真面目なのだな、と少し思った。


「某サイトの情報なんだけど、性転換の方法は実に様々な方法があるんだ。ポピュラーな方法でいうと、整形手術。他にも、自分と異なる性別のホルモンを各箇所に直接注射することで出来るという説も云われているらしい。調べた限りでは多少の身体の変化を得ることしか出来ないらしいけど。あとは遺伝子操作ぐらいかな」


 星野先輩が紙を見ながら勢いよくしゃべり始めた。

 ……あれ、なんか凄い調べてきてる!?


「そもそも、性転換が人間で可能なのかということなんだけど、僕は人間を生物学的カテゴライズでいう脊椎動物を調べてみた。するとね、なんと一部の魚はそういったことが可能らしいんだ。オキナワベニハゼという魚なんだけど、そいつはなんとホルモンを分泌し、自らの身体を変えるらしいんだ。ちなみに、『エストロゲン』という名前なんだけどね」


 ちらっと北川先輩の方を見る。

 時々相打ちをうちながら話を聞いている。


 まさか、こんなに真摯に論考する人だなんて思ってもみなかった。


「で、ここで重要なのは、エストロゲンというホルモンが魚だけのものではなく、人間にも作用するということなんだ」


「ほう、ではその何とかゲン? ていう奴を注射されれば可能性があるのか」

 北川先輩が、身を乗り出してきた。


「うん。まあ、可能性の話だけどね、実際はそんな簡単に変わらないし」


 成る程……。ホルモンか……。


「エストロゲンのサプリメントもあるらしいよ。でここから本題なんだけれど、そのホルモンには副作用があってさ、それに『腹痛』があるんだよ。これって、昨日言っていた第一の原因に当てはまるよね」


「確かに……」

 おっと、思わず声が出てしまった。


 でも、どこか無理矢理感があるのは何故だろう?


「ついでにいうと、男性ホルモンは『テストステロン』。どっちのホルモンもステロイドホルモンの派生ホルモンなんだよね。だから、元々のホルモン合成を反転させれば、性質はかなり性別を転換した状態になるんだよ」


「それは、元からあった性器をも消す効果があるのか?」


「いや、ないよ。流石に。手術でもなければ」


 手術か……。いや、それよりもホルモンの合成を反転とかどこのSFですか?


 だいたいこれぐらいかな。まあ、これはネットの情報だから信憑性に欠けるけど。、と紙を折りたたむ。

 どうやら、調べたのはここまでのようだ。


 でもこれで考える余地が増えた。ホルモンとくるとは。


「では最後に俺です。今のところ俺は何も考えが浮かびません。ですが、仮に星野先輩が調べたようにホルモン合成どうこうの話が実際に行われたとしても、決定的な反論があります」


「それはなんだ?」


「はい。それは周囲の人々がこの状況に気づいていないということ、です。これはどうしても説明が付きません」



 

 キーンコーン……


 突然大きな音がなって俺たちは驚き、それから腕に目をやる。


 おっと! もう八時十五分だ。流石にホームルームを二日続けて休むのはまずい。


「この話は、また後でにしましょう」

 俺たちは急いで各クラスに戻る。



 ……。

 そういえば襲ってきた三上とはどう接していけばよいのだろうか。



 というか、なんで彼は俺を襲ってきたのだろうか。

 何か裏があるのだろうか。それとも何か理由があった? いや現に犯されそうだったし……。

 うーん。なんか嫌な予感がする。


 



二月十八日現在、執筆している余裕がなく、お気に入りしてくれた皆様におかれましては大変不服とは思いますが、作者、優沙里が落ち着くまでもう暫くお待ちください。


次回更新は予定として、二月三十日程度と定めさせて頂きます。


尚、この後書きは次回の更新に合わせて削除致します。予めご了承下さい。

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