第一話 物語ってのは急に始まるもんだ。
ぐっちゃに書いてます。
でもまだ危険な描写を書いてないのでご安心を(?)
俺は余り人にものを言わない主義である。
クラスではいつも隅っこで本を読んでいるし、友達との馬鹿げたたわいも無い話をすることもほぼ無い。
基本的に俺はマイペースで流行にも乏しい。
更に目立った特技や、ずば抜けな身体的能力なんてそんな才能はあるはずもなく、故に天涯孤独の空気生徒として、俺の高校生の一年は過ぎ去ろうとしている今日この頃だ。
勿論、男としてそろそろ彼女なんていう青春のパートナーを諦めるつもりは無いのだが、現状としては自分の顔を鏡で見てからそう言えという話である。
つまるところ、俺は「もう現状維持でいいや!」と半ば諦めながら最後の高校一年を締めくくろうとしようとしているのである。
つまり、俺は青春の大事な一年を台無しにした挙句、次につなげようとも努力しようとも思わん駄目人間なのである。
誇れるところといえば、混じり気の無い純日本を代表出来る真っ黒な髪であろうか。
ついでに俺は知的風に見せる為に眼鏡をかけている(実際は本の読み過ぎによるものらしい)のだが、残念ながら女子になどもてたことは無い。
で、だ。
なぜ俺がこんな長たらしい前置きをわざわざしたのかと問えば、心を落ち着かせるためである。
きっと本の読み過ぎかなんかでこういう習慣ができたに違いない。
身体が女に変わっていたのである。
あ! いやいや、勘違いしないでもらいたい。これは中二病とかそんな類のものではない。
というわけで、自分もなぜ俺がこんな風になったのか整理してみることにする。
わかったことがあれば教えてもらいたいね。是非とも。
俺は夜はいつも十一時にはもう寝ている。
俺は睡眠時間には常に気を配っている。理由は省略だ。今は教えている時間が惜しい。
そして起床。普段通りの自分の姿であった。洗面所のガラスで身だしなみを整えるから間違いない。
そもそも自分の息子がいきなり娘に変わって気がつかないという親はいないだろう。
それから俺は駅に向かい、いつも通りの電車に乗って、それからごく普通の平坦な道を通って学校に到着。
んで、クラスに自分の荷物を起き、朝日の眩しいトイレに向かった。
で、用を済ませた。此処では男特有のモノを見たから男であったと確信出来る。
な? 此処まではどう考えても普通。腹下したのは普段通りじゃ無いにしても、体が変わることは無いだろう。
問題は次だ。
トイレの洗面所で鏡を見たらまさかまさかの驚くべき美少女が立っていたのである。
黒髪ので黒縁の眼鏡と男性用のブレザーを着ているれっきとした少女が鏡に写っている。
思わず声を上げたね。うん。
とっても良い高い声だった。ソプラノをやらせたら一発で合唱部の主力メンバーに選出されるに違いない。
で。現在、俺はそのまま男子トイレの中に身を潜めている。
が、ここに隠れるのにも限界がある。
ここで少し今の俺の身体を説明しよう。
俺の背は男の中でも小さい方だ列を組むと必ず前から数えて三、四人目ぐらいになる。
よくある設定では女になると少なからず背が縮むという現象が発生する。
残念ながら、俺もその設定が当てはまってしまったらしい……。
目線が低くなったということは、背は縮んだと考えても良いだろう。
鏡をぱっと見しただけだが、髪の毛は肩より少し長いぐらいの長さになっていた。
校則では肩より伸ばす時は紐で縛るのが規則で、どう考えても今の俺は違反だが、そんなことを気にする暇は今はない。
胸の方を見ると当然膨らんでいる。
掌を広げてみると、男の頃よりもとても幼く、細く見えた。
女子ってみんなこうなのだろうか。部活で手を使うソフトボール部や柔道部などは大変だろう。
で、制服は全く変わってなかった。
女子用の制服に変わることはなかった。が、かえってこれは目立つ。
不本意だが、気になったので下着を確認する。
女物にはなっていなく、下はトランクスと上は見てない。
上を見るのはなんというか………よし、省略だ。
話を戻す。ここで、重要な問題は二つだ。
一つ目にどうやってたら元に戻れるのか
一種の性癖の持ち主だったらこの状態は微笑ましく、更には自身の身体を弄くることで己の欲望を満たす輩もいるのかもしれない。
実際、俺もこういう状況を望んでいたこともあった。
そして、現在その夢が叶ったわけで、俺は女になった。
そしてある事に気づく。
なんと言ったらいいか、男特有の生理的現象がなくなるのである。
きっと男についている二つの生殖器が体から消失したのが原因だろう。
端的にいえば、そんなことを考えようとすると嫌悪感でしか無い。
単に男子ってキモイとしか思えないのである。
そもそも、自分の身体が急に変わるなど、動揺しすぎてどうしようもない。
実際に陥った俺はそう言った理由で、元の姿に戻りたいと思う気持ちが全面的に出ている。
だが、今はどうひねっても元に戻る糸口が見つからない。
ていうか、なぜこうなったかも知らん。分からん。
二つ目に、この状態をどう、クラスのみんなや先生方に伝えれば良いのだろうか。
先ほど語ったとおり、俺はクラスではほぼ無口であり、というよりも人前で話すということが苦手な人間である。
そんな男がどうやってこんな状況を伝えれば良いのだろうか。
……ああ、憂鬱である。
そんな俺に不意打ちもいいところで学校のチャイムがなる。
俺は慌てて時計を見る。八時四十分であった。本りんがなるまで残り五分。
無茶や。
これは若者言葉で「ムリげー」とでも称される一件だろう。
ふと思い立って俺は目を閉じ、頬をつねる。
痛かった。
夢では無いらしい。
俺はこの状況を打開する手段を思いつかない。
わかった人は是非ともお教えしていただきたい。是非に。
満面の笑みを浮かべて「ありがとう」と答えよう。