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蠢く影

『シルバー・ナイト』は既に『イシス』基地の宙域の調査を開始していた。

「エネルギー反応はどうだ?」

聞くエルセント

「多少はありますが…はっきり言ってこの数値では中の人間は生きているレベルとは……生きてるとしたら宇宙服着てる事になりますし」

オペレーターが口を濁す。

「カイト、エルク、シーアそちらはどうだ」

エルセントが言い『シルバー・ナイト』ブリッジの大型ディスプレイの中の一角にエルクの顔が映し出される。

「この距離から見る限りじゃ、はっきり言って基地が襲われた感じじゃないですね戦闘の跡もないですし」

ディスプレイの別の画面が瞬いた。

「こちら、カイト機、基地遠隔監視カメラのシステムが絶断されてますね」

エルクは一瞬考えたような表情を見せ、

「システムの情報は内部の人間しか知らないはず――って、事は誰かが内部に潜り込んで兵士を脅してシステムを切らせた……そう考えるなら辻褄は合うわな」

「そうだとしても、目的がわかんないわよ、いきなり基地を占拠して何か要求する訳でもなく

沈黙を保ったままなんて」

と、これはシーア。

「よし、内部に――」

「『イシス』からギア発進を確認、識別『フェィ』!数十二!!エネルギー反応増大中!」

エルセントの言葉を遮ったのはオペレーターの悲痛な叫び。

DZ社製ギア『フェィ』――バランスの取れた機体で汎用性が高く多くの民間軍隊で使われている、だが同時に特徴の無い機体でもある。

「十二機…お迎えにしちゃ数が多いな」

軽口を叩くエルク。

「あぁ、敵と考えるべきだろうな」

「機体内に生体反応は――無いわね、オートパイロットね」

「なら、遠慮はいらない訳だな」

そうカイトが言った次の瞬間――敵の『フェィ』の銃口が唸る。

「やっぱか!」

言ってエルクは機体を操作し軽く避けレーザーライフルを構え、ぶっ放す。

ゴウゥンッ!!

放たれたレーザーはエンジンを撃ち抜き爆発を起す。

「よっしゃ、まず一機目――って、おい、数機別の方向に向かってんぞ!?」

確かに『フェイ』の十二機のうち四機がカイト達とは全く違う方向に向かっている。

「レーダーに反応は?」」

エルセントがオペレーターに問う、

「いえ、向かっている方に特に反応は……」

――!!

「『フェィ』の反応二機消えました!ポイントB―D域に戦艦クラスの砲撃反応あり!」

「何かいるぞ、警戒しろ!通信士、回線を開けるかを試してみてくれ」

「了解です」








「スペリオル艦からの通信です、ディウン艦長どういたします?」

「バレてしまいましたか、しかし、なんであの『フェィ』こちらに気づいたんですかね、ステルス張ってるはずでしょう?」

ディウンと呼ばれた男――年齢は二十台後半だろうか黒の長髪で体型は中肉中背で顔は爽やかな笑顔が印象的だが、その笑顔からは威圧すら感じられる。

「つ、通信はどういたします?」

少々戸惑いながらも通信士は聞き返す。

「あ、すまんな、バレた以上仕方がないさ、開いてくれ」

「了解、回線開きます」

…ザッ…

「こちらは『スペリオル』第二師団所属『シルバー・ナイト』そちらの所属と目的を明かされたし」

――!!

一瞬、ディスプレイに映った顔にディウンが驚く。

映ったのは艦長と思わしき人物――ディウンの見覚えがある顔だった。

――≪烈神≫――エルセント=ハイムがこんな所にお出ましとはね――

しかし、気づかれない様に平然を装い、

「所属は『守護神ガーディアン』第五機動隊『グレイゴル』艦長ディウン=アイト、

目的は明かせませんがそちらに危害を加える気はありません」

「目的が明かせないとはどうゆう事か」

――やっぱり、納得してくれませんか――

ディウンはあからさまに困った様な顔をし、

「こちらも上からに命令でしてね、迂闊に内容を話すわけにはいかないんですよ」

……………………

「了解した、だがこれ以上の干渉は止めてもらいたい」

これ以上の制止は無駄と悟ったか答えはディウンの考えていたよりあっさりしたものだった。

「分かりました――ですがこの場は共闘した方が良いと思います

撤退しようとしても、こちらも既に攻撃を受けていますから」

すでに『イシス』からは約四十機ほど『フェィ』が出ており『グレイゴル』にも攻撃を加えている。

「分かった、だが、戦闘が終わり次第そちらは撤退してもらう、よろしいか」

「了解です、では」

事務的な言葉を残しディウンは『シルバー・ナイト』の通信を切り、新たに格納庫に通信を入れる。

そこに映し出されたギア――ZD社製ギア『サイファー』――かなりの機動性を持つ機体だが、その分扱いが難しくなっており、パイロットを選ぶ機体。

「クレス君、ライア君、『スペリオル』と共闘する事になりました、指定されたポイントに援護に回ってください、もちろん情報収集も忘れずにね」

「なんで奴らと共闘する必要があるんです?」

不満げな声をあげるクレス、

「バレてしまった以上しょうがないんですよ、気に入らないかもしれませんがね」

「任務……了解……」

「ライア君は素直でいいですね、クレス君とは違って」

――何故俺がこんな人形のお守りを…ちっ…――

唇を噛み苛立つクレス、

「クレス君、言っておきますがライア君はそこらのパイロットとは違うんです、くれぐれもよろしく頼みますよ」

まるでクレスの心を読み取ったかのように言いニッコリ微笑むディウン。

「クレス=レイヴァー『サイファー』出る」

胸の中で渦巻く苛立ちを殺しながらクレスは出撃し、

「同じく…ライア=レグレイト『サイファー』出る…」

続いてライアも出撃する。






「こいつら数だけ居やがる!」

カイトが言い放ち『フェィ』の腰部に収納されているビームブレードの発振器が取り出され、青い刃が生み出される。

バァウッ!

振るった青い刃は敵の『フェィ』の装甲を易々と切り裂いた。

「くっそ、これで八機目!こうなったら全機撃墜してやらぁ!」

エルクが言い、撃ったライフルで後ろに迫っていた一機をぶち抜いた。

「『イシス』基地には確か三百機は『フェィ』があったと思うけど?」

ディスプレイ越しに言うシーア

「…ま、まぁ根性入れれば………」

言いつつ、敵から来る銃撃をかわすエルク。

「なるかっ!その前にエネルギー切れになる!」

カイトが言う、

「じゃぁ、どうすんだよ?」

「とりあえず敵の数を減らして潜入するしかないな」

「だけど、こんなに敵が群がってるんじゃ強行突破も難しいわよ!」

そうシーアが言った時、エルセントからの通信が入る。

「今から『守護神』の援軍が来る、援護を受けつつ三人は『イシス』基地内に潜入しろ」

「えぇ!!な、なんでココに『守護神』の連中が!?」

エルセントの言葉に驚くシーアの機体の横を光条が過ぎ去る。

「この状況を打開してくれるなら誰でも構わん」

カイトが言い、前方からの銃撃をかわし、ライフルで一機を撃ち落とし、後ろから迫ってきたもう一機のブレードの

攻撃をかわし、すれ違いざまにレーザーブレードで切り裂いた。

「くっ、隊長!偵察用の装備パージしますよ、このままじゃ操縦しづらいっすよ」

エルクが言って一機をライフルで葬る。

「仕方ない許可する」

バウゥン!

激しい音と共に、カイト達の乗っている『フェィ」から偵察用の装備が外れる。

「よっしゃ、これで身軽に――通信?」

ザァッ………

雑音混じりの通信がカイト達に入る。

「こちら『守護神』所属クレス=レイヴァー貴隊を援護する」

そう言った男は二十歳程で顔はシュッとしており、ハンサムな部類には入るが、その瞳は闇が渦巻いている。

「同じくライア=レグレイト、援護する…」

もう一つの画面に映し出された男は、何処と無く雰囲気が掴めない男で、顔には表情が全く無い。

「こちら、『スペリオル』所属カイト=セレオル、我々は今から基地内に潜入する、援護を願う」

「了解した我々が進路を確保する、その間に潜入を願う」

「援護、感謝する」

そのカイトの言葉で通信を切り、クレスとアイラは群がる『フェィ』の軍勢に突撃する。

クレスが突撃しつつレーザーライフルを撃つ――しかし直撃はせず、右腕を破壊するだけに終わり、悠然と敵が突っ込んでくる。

「この程度っ!」

しかし機体の反応が鈍い――

――ぐっ、『タイプ01』のクセが抜けていない!

――刹那――

クレスに向かっていた『フェィ』はアイラに撃ち抜かれ宇宙の藻屑と化していた。

「油断…するな…」

「分かっている!」

クレスは苛立ちついでに後ろに迫っていた『フェィ』をレーザーライフルで撃墜する。





クレスとアイラは二機、三機――『フェィ』を撃墜してゆく、

「凄いですね…あの二機のギア」

オペレーターが感嘆の声を漏らす。

「正直、最初はたった二機かと思いましたけど…これなら何とかなりそうですね」

「あぁ、だが――敵になった時は脅威だろうな」

「はは、真剣な顔で言わないで下さいよ、今まで民間軍隊の間で抗争なんて例ありませんよ」

――そうだと……いいがな――

笑い飛ばすオペレーターの隣でエルセントは不安を取り除けないでいた。

「それより、あのギアのデータ取っておけよ」

「了解です」



「よし、敵はいないな?」

「確認したが、この発進口からギアらしき反応は無いぜ、砲台もあらかた潰したしな」

状況が状況の為か、カイトの問いに珍しく真剣に答えるエルク

「さて、いよいよ――ね」

そう言うシーアの頬に汗が流れる。

「よし、行くぞ」

言って『イシス』基地の発進口からカイト達は潜入する。
















だが――『イシス』基地内はすでに血と死臭が漂い人は肉塊と化していた――


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