陰謀の宇宙
「戦闘機ごときじゃ俺は落とせないぜ!」
言って、戦闘機のミサイルをことごとくかわすエルク、
いつもは冗談ばかり言っているエルクだが、ギアの操縦者としては一流である。
ドゥン!
エルクが撃ったアサルトマシンガンが戦闘機の一機に直撃し爆発を起こす。
「よし、まずは一機、さぁて次は――」
「待て、エルク、新たな反応だ」
そのカイトの言葉通り一機のギアがこちらへと接近してくる。
「ギア一機だけ?何考えてんだあいつら?」
「さぁな、よほど自信があるんだろうな」
そう、カイトは言いつつ、飛んできたミサイルをかわし、通り過ぎた戦闘機をアサルトマシンガンの一撃が葬った。
修練艦『ベルメイ』は未だに訓練生を収容に手間取っているのか撤退を開始していない、
――あぁ、くそっ!何時までモタモタやってんだ!早く撤退しろって!――
心の中でぼやくエルク、
「来たぞ!」
カイトの声と同時にモニターに映し出されたのは、黒で統一された機体――デルベス社製機動ギア『ウルフェン』
この機体も旧式の機体ではあるがカイト達が乗っている機体より少々性能は高い、見れば、あちこち改造を施された跡もある。
「さしずめ『ウルフェン改』って所か…」
機体をモニター越しに見てエルクが言う。
『ウルフェン』がレーザーソードを抜き、カイトの方へと迫る。
アサルトマシンガンで応戦するが、かすりもしない。
「ぐっ!速い!」
たまらずカイトはヒートサーベルを構える、が――
バジュッ!
しかし、『ウルフェン』のレーザーソードはヒートサーベルをあっさり叩き斬った。
その隙を狙い『ウルフェン』に狙いを定めアサルトマシンガンをエルクが撃つ、避けられるタイミングでは無い――
しかし、サイドスラスターを噴射し、なんなくかわす。
「おい、おい、ほとんどウェイトがないじゃねぇか!どうなってんだ!?」
驚愕の声をあげるエルク。
――ウェイト――機体を次の行動に移すときどんな機体でもコンマ単位ではあるが動きが止まる一瞬があるのだ、タイムラグと言うやつである。
しかし『ウルフェン』の性能を考えた場合あのタイミングでかわすのは考えにくい、いくらパイロットが優秀でも機体が反応してくれないはず、
無論、改造してある事も踏まえてである。
ドウッン!
「――っ!――」
『ウルフェン』に気を取られていたエルクの機体に戦闘機の攻撃を受け、機体とエルクの意識がぶっ飛ぶ。
「っ……だぁぁっ!またメカニックの奴らに文句言われるだろうがっ!」
意識を強引に戻し、エルクは戦闘機をアサルトマシンガンで二機まとめて撃ち抜いた。
それを見て、あなどりがたしと思ったか、『ウルフェン』が目標をエルクに変える。
「このっ!」
パス、パス――
言って、マシンガンのトリガーを引くエルクだが、虚しい音だけが響くのみ。
どうやら、弾切れの様である。
「うどわぁぁぁぁっ!弾切れかよっ!このオンボロッ!」
絶叫しギアに八つ当たりしながらも、ちゃんと回避行動をとり、なんとかさけるエルク、
そこへカイトが折れたヒートサーベルをブン投げる。
しかし、かわされる――が、カイトは間を置かずにアサルトマシンガンを撃つ、
これなら!――
そうカイトが思ったのも束の間、
ガガウゥン!
いともあっさりシールドで防がれる。
言っておくが『フォルス』にはシールドなんぞ装備されていない。
「あぁ、くそっ!ちゃんと当たったのによ!」
何故かカイトではなくエルクが悔しがる。
「機体性能の差か……」
「なに、冷静に分析してんだよ!このままじゃジリ貧だぜ!」
冷静に言うカイトにエルクがツッコミを入れつつアサルトマシンガンのマガジンを入れ替える。
『ウルフェン』が加速し今度はカイトの方へと動く、が――『ウルフェン』は何かを思い出したかの様に翻し、戦艦に収容されると、しばらくするとレーダーから消えた。
カイトとエルクはしばしその場で呆然としていた。
……………………
「なぁ、労災や危険手当――」
「知らんっ!」
エルクが言い終わるより早くカイトは一喝し――口調を冷静なものに戻し。
「それよりどうするんだよ」
カイトの言わんとしている事が分からずエルクは眉をひそめ。
「隊長に機体ぶっ壊した事の上手い言い訳を考えるとかか?」
エルクの言葉にカイトは呆れつつ。
「あのなぁ……そういう事じゃなくて、修練艦が無いのにどうやって基地に戻るんだよ?」
言われ、エルクはモニターを見るが、修練艦があった場所にはただ虚空が広がるばかり。
ギアを使って戻るなど問題外、途中でエネルギー切れになるのがオチである。
「ど、どうすんだ……」
冷や汗をだらだらたらしながら言うエルク。
「救難信号出して待つしかないな、運がよければ助かる。」
「あああああああああっ!!どうすんだよ!」
「どうするって待つしか――」
と、言おうとするカイトだが――
「明後日、俺デートの約束してたのにっ!」
「そっちの心配かよっ!」
カイトはエルクの理不尽な言葉に思いっきりツッコミを入れるのだった――