宇宙を駆ける光
「なんで俺が訓練生の修練艦に乗らなきゃいけないんだよ…ったく、戻ったら隊長に文句の一つでも言ってやらなきゃ気がおさまらん」
修練艦『ベルメイ』その廊下を格納庫に向かって歩く二人の少年、ぼやいた少年の髪は短髪で青、顔はハンサムの部類には入るが、いかんせん目つきが悪い、服装は軍服をビッシと着ている、
「カイト、そう言うなよ、ここで訓練生の女の子と仲良くなるとか、もう少し前向きに考えれば良いじゃねぇか」
そう言った少年はカイトと同僚のエルク、同じ短髪で髪の色は茶、顔にはにやけた笑みを浮けべている、コレさえなければ二枚目なのだが本人は気づいていない。
カイトと同じく制服を着ているが少々だらしない。
「それは前向きの内に入らんぞ……少なくとも俺はな」
呆れた口調で言うカイト
「あ、ヤベ、機体の調整まだだった……実践訓練何時からだっけ?」
エルクの問いため息をつき
「十五時からだよ、ってかお前、時間くらい――」
「もう二時間しかねぇじゃねぇか、すまん!また後でな」
エルクはそう言い残し、廊下を走り去って行った。
――まったく……アイツは――
宇宙西暦――三百二十一年
人類が宇宙へと進出してから約三百年余り――
人々は惑星を開拓し、人類は新たな一歩を踏み出した。
五十年程前はアース連合とスティア国の間での紛争『ヘルマン投戦』があった――
しかし、双方の戦闘は一進一退の攻防を繰り広げ、決着がつかぬまま休戦。
そして――時が経ち、人々は戦争を忘れ、傷跡だけが残り、軍備は縮小されていった、
しかし、戦争の影響で治安は悪化の一途を辿っていた。
アース連合国の考えた対策は――私立軍隊を設立させる為の法律を成立させる事。それは、設立時の審査と定期的な報告書を出しさえすれば民間でも軍を設立する事ができる、という内容のものだった。
これにはスティア国が反対するかと思われたが双方の抱えている問題は同じだったらしく、
これを快諾、
当初は、浸透するか不安に見られたのだが、今では企業の警備から、テロリストの襲撃までこなし
今では一企業として根付いている、そして――
カイト達も民間軍隊の一つ『スペリオル』に所属している。
「いいか!弾はペイント弾だが、実践と思って戦え!」
『はい!』
「それでは今から演習に入る!」
訓練教官と訓練生の声が格納庫に響く、
そして、訓練生は指定されたギアに登場し始める。
――人動兵器ギア(GEAR)――戦争が生み出した、戦艦、戦闘機に代わる新たな兵器
戦艦には無い機動性、戦闘機の欠点であった行動時間や戦闘能力――これらを凌駕したギアは瞬く間に戦闘の中心兵器へと代わっていった。
今回のカイト達の仕事は訓練生たちが訓練中域外に出ないように見張るためだけの地味な仕事、
「ふぁ〜っ…ねむぅ……」
既にカイトとエルクは宇宙(外)へと出ていた。
「お前が遅くまで起きてるからだろ。」
通信モニター越しにカイトはエルクに言う。
「お前は、いい子過ぎるの、男と女の時間は夜だよ夜。」
「あのなぁ……って、言っても無駄か、それよりちゃんとレーダーで訓練生の位置確認しとけよ、ミスしてもかばってやらんからな。」
「わあってる、にしても、この機体ずいぶん旧式だな…」
DZ社製機動ギア、『フォルス』――機体自体は悪くないのだが、十年以上前の旧式で色んな所にガタがきている。万が一の為武装がしてあるが貧弱で一世代前のヒートサーベルと装填数の少ないアサルトマシンガン程度の武装しかない。
「それより、主役の登場だ」
カイトが言うと、修練艦『ベルメイ』から訓練生の機体が発進してくる。
「量産型の『フェィ』か、俺たちより良い機体じゃねぇか……」
「訓練生なんだ、そこはしょうがないだろ」
ぼやく、エルクをなだめるカイト、視線をレーダーに戻す。
「ん?レーダーにBクラスの物体が映ってる確認できるかエルク?」
「ほいほい」
エルクはそう言いコントロールパネルの上で手を動かす。
「みる限りじゃ戦艦だな、識別コードは……出してないな…何処の所属の戦艦だ…?とりあえず通信してみる」
……………………
「応答なし、一応警告してみたが何の反応もな――っ!――」
突然エルクの顔色が変わる。
「正体不明艦から艦載機発進を確認!数四!あいつ等ここでドンパチでも始める気か!」
エルクの報告にカイトは舌打ちし、『ベルメイ』への通信回線を開く。
「こちら、カイト!こちらにアンノウンが多数接近中!」
「な、なにっ!何故こんな所に!?」
悲鳴に近い声をあげる艦長――
「そんな事言ってる場合じゃありません、その艦にはマトモな装備は無いんです。訓練生を戻し撤退してください!」
「わか――ブッツ」
カイトは艦長の返事を待たず通信をブチ切った。
――修練艦が撤退するにはそれなりに時間がかかる、今外に出てるギアで武装をしてるのは俺とエルクのだけ――
「エルク、俺たちはどうやら、時間稼ぎしなきゃならないようだぜ」
「あーあ、面倒な事になっちまったなぁ……」
「行くぞ、エルク」
そう言い通信モニターを切るカイトだが、再び画面が瞬いた――
「なぁカイト、危険手当……降りるよな?」
「知らん」