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チャレンジ作品!

婚約破棄したら楽になれますか? 〜この悪夢を止めるために

掲載日:2026/03/20

※冒頭と終わりの言葉と文字数が決まっているお話に挑戦しました。

「また同じ夢を見た」「ああ、気が重いね」で700文字以内。気軽にお楽しみください。



 また同じ夢を見た。


 煌めくシャンデリア、豪華なパーティーに笑い合う人々。

 そんな中で俺は叫ぶ。


「シシリィ! 君との婚約を破棄する!」


 突然の言葉に、目を見開くシシリィ。

 俺はそのまま彼女に、あらゆる暴言を投げつける。


 涙を堪えるシシリィは逃げるように退場して、夜会はお開き。

 そして俺は勝手に婚約を破棄した罪で王籍剥奪の上、追放される──。


 昔から、何度もこの夢を見る。


 ◇


「どうなさったの、あなた」


 ベッドで頭を抱える俺を、横から柔らかな声が問いかける。

 ああ、俺の最愛シシリィ!


「例の悪夢だよ。どうにも逃れられそうにない」

「まあ」


 我が王家には、困った呪いがある。

 昔、先祖の一人(ひとり)が魔女に惑わされ、婚約を破棄した。

 男は家から追われ、あえない最期を遂げたというが、残った人間も大変だった。

 男が王太子だった(ため)、様々な調整をやり直す羽目になり、家臣も官僚も大いに泣いた。

 諸国からは嘲笑され、民からの信頼は失い、威信を取り戻すまで王家はかなりの黄金と歳月を要した。


 二度とこんな事件を起こしてはならない。


 王家は"戒めの呪い"を血筋に課し、以来、王子・王女は年頃になると自身の婚約者をモデルに、この夢を見るのだ。

 同じ轍を踏まないよう。


 そしてこの悪夢を止める方法は……。


「やはり、やらないとダメなのか」


 夢の内容を再現して、最後の部分だけ修正する。

 婚約破棄からの仲直り、更に公衆の面前で熱い抱擁とキスを交わす。


「では、場を設けましょう」

「だがなぁ」


「俺は既に結婚してるんだぞ。日頃から君との仲睦まじさを揶揄(からか)われてるのに、皆の前でキスだなんて。また何を言われることか」

「私は構いませんよ?」

「っ、それは俺も! だけど……」


「ああ、気が重いね」

 嘆息する。


(演技でも、シシリィに婚約破棄を叩きつけるなんて無理だ)


 そうして解呪を先延ばしにした結果、婚姻後もまだ時々夢を見る。

 愛しい君は、すでに俺の妃だというのに。


 俺は隣のシシリィを抱き寄せた。

 柔らかな肌が、薄い絹の寝間着越しに程よい温もりを伝えて来て、心まで温められる。甘やかな香りに優しく誘われて。


「シシリィ」

 そっと彼女の可憐な唇に手を添わせた時。


「父様、母様、何してるの?」

 ぴょこっと小さな頭が割り込んで来た。


「マーレ! なんでこの寝室に……」

 そうだった。息子のマーレが"怖い夢を見た"と言いながら、昨夜突撃してきたんだった。


「リータも混ぜてぇ」

「リータまで!」

 マーレだけじゃない。

 娘のリータまでベッドに潜り込んでいたなんて、いつの間に。

(侍女は何をしてるんだ?)


 興味津々の息子と娘に、シシリィが微笑む。


「母様たちね、今度お芝居するのよ」

「シシリィ!」


 止める間もなかった。

 子どもたちがすぐ、食いついた。


「え──っ、観たい──!」

「僕も観る! なんで? 何でお芝居するの?」


「怖い夢を見ないようにするための、おまじないの劇」


「ええっ、父様たちも怖い夢見るの?」

「どんな夢?」


 子どもたちが騒がしい。

 だけど。本当に怖い夢だ。


 もし婚約破棄なんかしてシシリィを失っていたら、俺の心は凍るだろう。

 朝も明けず、夜も来ない。水も食べ物も喉を通らず、大地は乾いて、周りの色はすべて消え失せる。

 そんな世界は、到底イヤだ。


 それにシシリィがいないと、この腕の中で笑うマーレやリータにも会えなかった。


 窓から軽やかな朝の光と、小鳥の鳴き声が部屋に差し込む。


「それはとても──、とてもあり得ない夢で──」




---------------------------


 お読みいただき書き込みありがとうございました!

 一旦、上の700文字で終わっておかしくないよう書いたはずなのですが…!

 あとがき部分にも約700文字あります(;´∀`) いえ…、せっかくなのでもう少しにぎやかにしようかな、と。


 こちら冒頭にも書きました診断メーカー『あなたに書いて欲しい物語』https://shindanmaker.com/801664 で出たお題を文字にしたものです。

 昨日「また同じ夢を見た」「ああ、気が重いね」を引いて、勢いで物語が書き上がったものだから、ついアップしちゃいました(笑)


挿絵(By みてみん)


 唐突なお話にお付き合いいただき有り難うございました♪

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
ええ…すご!! ほっこりしました!!! これでほっこりになるのすごい。気が重いといいつつ…!ですね。よき…………
この冒頭とこの結びで、こんなに可愛らしいお話になっちゃうなんて……!! チャレンジ作品お疲れ様でした。 あとがき部分ではにぎやかなご家族の姿も見られて、みんなで悪魔封じのお芝居に興じていただきたいです…
仕方ない、寸劇をやって周囲の人々に生暖かい目で見られるといいですね。 マーレ王子にもその呪いがすでに? 王女には現れないのでしょうか? 700文字で充分楽しかったけど、一粒で2度おいしいみたいな感じで…
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