婚約破棄したら楽になれますか? 〜この悪夢を止めるために
※冒頭と終わりの言葉と文字数が決まっているお話に挑戦しました。
「また同じ夢を見た」「ああ、気が重いね」で700文字以内。気軽にお楽しみください。
また同じ夢を見た。
煌めくシャンデリア、豪華なパーティーに笑い合う人々。
そんな中で俺は叫ぶ。
「シシリィ! 君との婚約を破棄する!」
突然の言葉に、目を見開くシシリィ。
俺はそのまま彼女に、あらゆる暴言を投げつける。
涙を堪えるシシリィは逃げるように退場して、夜会はお開き。
そして俺は勝手に婚約を破棄した罪で王籍剥奪の上、追放される──。
昔から、何度もこの夢を見る。
◇
「どうなさったの、あなた」
ベッドで頭を抱える俺を、横から柔らかな声が問いかける。
ああ、俺の最愛シシリィ!
「例の悪夢だよ。どうにも逃れられそうにない」
「まあ」
我が王家には、困った呪いがある。
昔、先祖の一人が魔女に惑わされ、婚約を破棄した。
男は家から追われ、あえない最期を遂げたというが、残った人間も大変だった。
男が王太子だった為、様々な調整をやり直す羽目になり、家臣も官僚も大いに泣いた。
諸国からは嘲笑され、民からの信頼は失い、威信を取り戻すまで王家はかなりの黄金と歳月を要した。
二度とこんな事件を起こしてはならない。
王家は"戒めの呪い"を血筋に課し、以来、王子・王女は年頃になると自身の婚約者をモデルに、この夢を見るのだ。
同じ轍を踏まないよう。
そしてこの悪夢を止める方法は……。
「やはり、やらないとダメなのか」
夢の内容を再現して、最後の部分だけ修正する。
婚約破棄からの仲直り、更に公衆の面前で熱い抱擁とキスを交わす。
「では、場を設けましょう」
「だがなぁ」
「俺は既に結婚してるんだぞ。日頃から君との仲睦まじさを揶揄われてるのに、皆の前でキスだなんて。また何を言われることか」
「私は構いませんよ?」
「っ、それは俺も! だけど……」
「ああ、気が重いね」
嘆息する。
(演技でも、シシリィに婚約破棄を叩きつけるなんて無理だ)
そうして解呪を先延ばしにした結果、婚姻後もまだ時々夢を見る。
愛しい君は、すでに俺の妃だというのに。
俺は隣のシシリィを抱き寄せた。
柔らかな肌が、薄い絹の寝間着越しに程よい温もりを伝えて来て、心まで温められる。甘やかな香りに優しく誘われて。
「シシリィ」
そっと彼女の可憐な唇に手を添わせた時。
「父様、母様、何してるの?」
ぴょこっと小さな頭が割り込んで来た。
「マーレ! なんでこの寝室に……」
そうだった。息子のマーレが"怖い夢を見た"と言いながら、昨夜突撃してきたんだった。
「リータも混ぜてぇ」
「リータまで!」
マーレだけじゃない。
娘のリータまでベッドに潜り込んでいたなんて、いつの間に。
(侍女は何をしてるんだ?)
興味津々の息子と娘に、シシリィが微笑む。
「母様たちね、今度お芝居するのよ」
「シシリィ!」
止める間もなかった。
子どもたちがすぐ、食いついた。
「え──っ、観たい──!」
「僕も観る! なんで? 何でお芝居するの?」
「怖い夢を見ないようにするための、おまじないの劇」
「ええっ、父様たちも怖い夢見るの?」
「どんな夢?」
子どもたちが騒がしい。
だけど。本当に怖い夢だ。
もし婚約破棄なんかしてシシリィを失っていたら、俺の心は凍るだろう。
朝も明けず、夜も来ない。水も食べ物も喉を通らず、大地は乾いて、周りの色はすべて消え失せる。
そんな世界は、到底イヤだ。
それにシシリィがいないと、この腕の中で笑うマーレやリータにも会えなかった。
窓から軽やかな朝の光と、小鳥の鳴き声が部屋に差し込む。
「それはとても──、とてもあり得ない夢で──」
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お読みいただき書き込みありがとうございました!
一旦、上の700文字で終わっておかしくないよう書いたはずなのですが…!
あとがき部分にも約700文字あります(;´∀`) いえ…、せっかくなのでもう少しにぎやかにしようかな、と。
こちら冒頭にも書きました診断メーカー『あなたに書いて欲しい物語』https://shindanmaker.com/801664 で出たお題を文字にしたものです。
昨日「また同じ夢を見た」「ああ、気が重いね」を引いて、勢いで物語が書き上がったものだから、ついアップしちゃいました(笑)
唐突なお話にお付き合いいただき有り難うございました♪
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