今日も明日も - side 水野夜子
桐島風と言っていたのですが、やっぱり書くことにしました。無理やり完結させます笑
「その本、面白いよね!」
はっとして振り向くと、荻道麻友がいた。
「別に、読んでみたらつまらなかったよ。」
思ってもいないことが口に出る。本当はめちゃくちゃ面白いと思ったし、この人の書く本が好きだ。
だけど、図書室に来たのを見つかったからには、私は『もう一人の私』でいなきゃいけない。
「えっでも、中学の時――」
「うるさい!!」
彼女がうろたえる。図書室で大きな声を出してしまったけれど、この時間帯は誰もいないから、大丈夫。
声で司書さんが一度顔を出したけど、すぐに状況を察して引っ込んでくれた。
「これ、あんたが戻しておいて、場所忘れたから」
本当はまだ貸出手続きもしていない。家で読みたかったな、なんて思いは封じ込めて、あえて音を立てながら荷物を乱暴に背負い、図書室を出る。
出る時に一瞬、「夜子ちゃん...」と小さな声が聞こえたけれど、聞こえなかったふりをした。
***
家に帰り、声をかけてきた母親を無言で通り過ぎ、自分の部屋へと階段を登る。
ドアを締めたことを確認して、力を抜いてベッドに倒れ込む。
「...疲れた。」
「......寝るか...。」
***
翌日。
気持ちを切り替えて、無言で朝ごはんを食べ、黙って、ドアを開ける――。
「おはよ!」
「うわあ!?」
驚いた。そこには、麻友が立っていた。
「な、なに?昨日のことなら――」
「無理しなくていいよ」
「は...?」
「だって、つらそうだったから...」
ただただ、怒りだった。
「私のこと見捨ててくせに、よくそんなこと言えるよね!」
「えっ、それは!クラスが違ったから――」
「自分で頑張ったけど、容姿が良いからって、あの子が女王か、みたいな目で見られて、もうこうなったら徹底的に悪者になってやるって思ったよ、」
なんでだろう、言いたくないのに。
「私の先入観かもしれない、でも、もう遅いから。図書室は、唯一の居場所だったのに、昨日麻友に壊された。私の気持ちは分からないでしょう!?それに――」
「麻友もそうだけど、私以外の人にこんな思いしてほしくないから...」
麻友は、はっと驚いたあとに「なんだ、言えるじゃん」と笑っていった。
そして、息を吸って、こう言ってくれた。
「じゃあさ、私の前でだけ――笑ってくれない?」
正直、嬉しかった。
でも――妥協して、いいんだろうか。
昨夜の涙を思い出す。
何度だって、泣いてきた。
数え切れないほど。
中学校の卒業式、あの日、麻友に打ち明けたこと。
うなずいて、支えてくれたこと。
全部全部、私は無視してきた。
それでも、今こうして、声をかけてくれた。
だから―――。
「ありがとう。」
風がふっと通り抜ける。
朝の匂いは、いつもより清々しい。
きっと、良い日になる。
狭くて小さな通学路に、二人分の笑顔が咲いた。
この笑い声は、空までも届くだろう、と確信していた。
GOOD DAY FOREVER .
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