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君が隠した想い  作者: 恋する豚共の紙
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第8話: 新たな関係へ

それから数日が経った。千夏と悠真はこれまで通り幼馴染として接していたが、どこかぎこちなさが残っていた。千夏は気持ちを伝えたことで少しだけ心が軽くなった一方、悠真は自分の中に芽生えた感情にどう向き合うべきか悩んでいた。


千夏の静かな笑顔


ある昼休み、千夏は友人たちと教室でお弁当を広げていた。そんな彼女を、悠真は隣の席からちらりと見た。


(千夏、いつも通りだな……いや、それ以上に元気そうに見えるかも)


実際、千夏は明るく振る舞っていた。気持ちを伝えたことで、少し肩の力が抜けたようだった。しかし、心の奥ではまだ悠真の答えを待っている自分がいる。


(悠真がどう思っていても、私はもう後悔しないって決めたんだから)


友人との会話の中でふと視線を上げた千夏は、悠真と目が合った。彼女が柔らかく微笑むと、悠真は少し照れたように視線をそらした。


(こうやって笑う千夏を見ると……なんか、不思議な気持ちになるな)


悠真は自分の胸がざわつく理由を探しながら、静かに千夏を見つめ続けていた。


俊のアドバイス


放課後、悠真は俊に呼び止められた。


「なあ悠真、最近千夏とどうなんだよ?」

「どうって……特に何も変わらないけど」

「そうか?」


俊は少し眉をひそめながら悠真を見た。

「千夏の気持ちにちゃんと向き合う気があるのか、それとも逃げるのか。どっちなんだ?」


俊の言葉に、悠真は返答に詰まった。


「別に逃げるつもりはない。でも、どうすればいいのか分からないんだよ。俺だって、こんなの初めてだから……」

「だったら、ちゃんと答えを出せよ。千夏は覚悟を持ってお前に向き合ったんだからさ」


俊の真剣な声が、悠真の胸に響いた。


二人の距離


その日の帰り道、悠真は千夏を待っていた。


「千夏、ちょっといいか?」

「うん、どうしたの?」


夕暮れの道を並んで歩きながら、悠真は言葉を探していた。千夏は彼が何を言いたいのか分からず、少し緊張していた。


「お前が俺に気持ちを伝えてくれたとき、正直、驚いた。でも、あれからずっと考えてたんだ。お前のこと、俺はどう思ってるんだろうって」


千夏は静かに彼の言葉を待った。


「千夏、俺は……お前のことが特別だって思う。お前がいない生活なんて、想像できないくらい。でも、それが『好き』っていう気持ちなのか、まだ自信が持てないんだ」


千夏の心に温かいものが広がった。悠真の言葉には迷いが含まれていたが、それでも彼が向き合おうとしていることが分かったからだ。


「悠真、ありがとう。私、答えを急がないよ。ただ、こうしてちゃんと考えてくれてるだけで嬉しいから」


悠真は少し驚いた表情を浮かべたが、やがて微笑んだ。

「そう言ってくれると、少し気が楽になるよ。俺も自分の気持ちに向き合ってみる」


新たな一歩


その日から、二人の関係は少しずつ変わり始めた。悠真は千夏と一緒にいる時間を今まで以上に大切に感じるようになり、千夏も悠真と過ごす日々を穏やかに楽しんでいた。


俊はそんな二人を遠くから見守りながら、小さくため息をついた。


(悠真もようやく一歩踏み出したか。千夏、お前の想いが報われるといいな)


赤く染まる夕焼けの中で、二人は静かに歩き続けていた。

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