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君が隠した想い  作者: 恋する豚共の紙
7/10

第7話:告白の瞬間

日が短くなり始めたある日の放課後、校舎裏の空には赤い夕焼けが広がっていた。千夏は、心を決めた表情で悠真を待っていた。


(今日こそ、私の気持ちを伝えよう。どんな答えでも、もう逃げたくない)


俊に背中を押され、千夏は悠真を放課後に校舎裏へ呼び出していた。悠真も理由を聞かれたが、「少し話したいことがある」とだけ伝えられた。


「……千夏?」


悠真が現れた。赤い夕日が彼の背中を照らし、どこか神秘的に見えた。千夏の胸が高鳴る。


「悠真、来てくれてありがとう」

「ああ。どうしたんだ、こんなところで」


悠真は不思議そうな顔をしているが、千夏はゆっくりと深呼吸をして、自分の心を落ち着かせた。


「ずっと言いたかったことがあって……でも、なかなか言えなくて……」


悠真は真剣な表情で千夏を見つめた。その視線に、一瞬たじろぎそうになる自分を千夏は必死に奮い立たせた。


「私……悠真のことが好き。ずっと前から、ずっと好きだったの」


千夏の言葉が夕焼け空に溶けていくような静寂が訪れた。悠真は驚いたような表情を浮かべたまま、すぐには何も言えなかった。


「幼馴染だからって、こんな気持ちになっちゃいけないのかなって、ずっと迷ってた。でも……もう隠すのは辛くて……」


千夏の声は少し震えていたが、それでも最後まで気持ちを伝えた。


悠真はしばらく黙ったまま千夏を見つめていたが、やがて口を開いた。


「千夏……お前がそんな風に思ってくれてたなんて、正直、気づいてなかった」

「うん、それは分かってた。でも、言いたかったの。たとえ悠真がどう思っていても……」


悠真は言葉を選ぶように少しだけ間を置いてから、真剣な声で言った。


「俺も千夏のこと、特別だと思ってた。でも、それがどういう気持ちなのか、自分でも分からなくて……ごめん、すぐには答えが出せない」


その言葉に千夏の胸は少し痛んだが、それでも悠真が真摯に向き合おうとしてくれていることが伝わり、彼女は小さく微笑んだ。


「いいの。私の気持ちを知ってくれただけで十分だから。悠真が考えてくれるなら、それでいい」


悠真は少し驚いた顔をしたが、やがて安心したように頷いた。


「ありがとう、千夏。少し時間をくれ」


俊の静かな応援


その後、千夏が校舎裏から戻ると、俊が待っていた。


「どうだった?」

「……伝えたよ。悠真、すぐには答えられないって。でも、それでもよかった」


俊は千夏の表情を見て、少し安心したように笑った。

「そうか。お前が一歩踏み出せたなら、それで十分だよ」


千夏は俊の言葉に胸が温かくなった。彼がずっと見守ってくれていたことに気づき、感謝の気持ちが溢れてきた。


「俊くん、本当にありがとう。あなたがいてくれたから、勇気を出せたのかもしれない」

「俺は何もしてないよ。ただ、友達として応援しただけさ」


俊の言葉はどこか切なげだったが、千夏はその理由に気づくことはなかった。


悠真の決意


その夜、悠真は一人で自分の部屋にこもり、千夏の言葉を何度も思い返していた。


(千夏が俺のことを好きだなんて、想像もしてなかった。でも、あいつの気持ちを無視することなんてできない)


悠真の胸の中で、千夏の存在がより大きなものへと変わりつつあった。

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