第7話:告白の瞬間
日が短くなり始めたある日の放課後、校舎裏の空には赤い夕焼けが広がっていた。千夏は、心を決めた表情で悠真を待っていた。
(今日こそ、私の気持ちを伝えよう。どんな答えでも、もう逃げたくない)
俊に背中を押され、千夏は悠真を放課後に校舎裏へ呼び出していた。悠真も理由を聞かれたが、「少し話したいことがある」とだけ伝えられた。
「……千夏?」
悠真が現れた。赤い夕日が彼の背中を照らし、どこか神秘的に見えた。千夏の胸が高鳴る。
「悠真、来てくれてありがとう」
「ああ。どうしたんだ、こんなところで」
悠真は不思議そうな顔をしているが、千夏はゆっくりと深呼吸をして、自分の心を落ち着かせた。
「ずっと言いたかったことがあって……でも、なかなか言えなくて……」
悠真は真剣な表情で千夏を見つめた。その視線に、一瞬たじろぎそうになる自分を千夏は必死に奮い立たせた。
「私……悠真のことが好き。ずっと前から、ずっと好きだったの」
千夏の言葉が夕焼け空に溶けていくような静寂が訪れた。悠真は驚いたような表情を浮かべたまま、すぐには何も言えなかった。
「幼馴染だからって、こんな気持ちになっちゃいけないのかなって、ずっと迷ってた。でも……もう隠すのは辛くて……」
千夏の声は少し震えていたが、それでも最後まで気持ちを伝えた。
悠真はしばらく黙ったまま千夏を見つめていたが、やがて口を開いた。
「千夏……お前がそんな風に思ってくれてたなんて、正直、気づいてなかった」
「うん、それは分かってた。でも、言いたかったの。たとえ悠真がどう思っていても……」
悠真は言葉を選ぶように少しだけ間を置いてから、真剣な声で言った。
「俺も千夏のこと、特別だと思ってた。でも、それがどういう気持ちなのか、自分でも分からなくて……ごめん、すぐには答えが出せない」
その言葉に千夏の胸は少し痛んだが、それでも悠真が真摯に向き合おうとしてくれていることが伝わり、彼女は小さく微笑んだ。
「いいの。私の気持ちを知ってくれただけで十分だから。悠真が考えてくれるなら、それでいい」
悠真は少し驚いた顔をしたが、やがて安心したように頷いた。
「ありがとう、千夏。少し時間をくれ」
俊の静かな応援
その後、千夏が校舎裏から戻ると、俊が待っていた。
「どうだった?」
「……伝えたよ。悠真、すぐには答えられないって。でも、それでもよかった」
俊は千夏の表情を見て、少し安心したように笑った。
「そうか。お前が一歩踏み出せたなら、それで十分だよ」
千夏は俊の言葉に胸が温かくなった。彼がずっと見守ってくれていたことに気づき、感謝の気持ちが溢れてきた。
「俊くん、本当にありがとう。あなたがいてくれたから、勇気を出せたのかもしれない」
「俺は何もしてないよ。ただ、友達として応援しただけさ」
俊の言葉はどこか切なげだったが、千夏はその理由に気づくことはなかった。
悠真の決意
その夜、悠真は一人で自分の部屋にこもり、千夏の言葉を何度も思い返していた。
(千夏が俺のことを好きだなんて、想像もしてなかった。でも、あいつの気持ちを無視することなんてできない)
悠真の胸の中で、千夏の存在がより大きなものへと変わりつつあった。