第10話:雪の結末
初雪が降った翌日、街の景色は薄く雪化粧をまとっていた。通学路の木々や屋根に積もった雪が白く輝き、空気は冷たいながらもどこか清らかな気配を漂わせている。悠真と千夏は、いつも通りの道を一緒に歩いていたが、二人の間には少しだけ特別な空気が流れていた。
悠真の変化
その日の授業中、悠真は何度も千夏の横顔に目を向けてしまっていた。教科書に目を落としていても、千夏の小さな仕草や微笑む姿が脳裏に浮かび、集中できない自分に気づく。
(なんでこんなに千夏のことばかり考えるんだろう……)
悠真は、ようやく自分の中である結論にたどり着きつつあった。
(きっと俺も、千夏が大切なんだ。それ以上の気持ちを、俺は……)
授業が終わるチャイムが鳴ると、悠真は小さく息をつき、心の中で決意を固めた。
放課後の校庭
夕方、悠真は千夏を校庭へ呼び出した。薄暗くなり始めた空から、また細かな雪が舞い降りていた。千夏は悠真のそばに歩み寄り、不安そうな顔で尋ねた。
「悠真、どうしたの? こんな時間に……」
悠真は雪を見上げ、ゆっくりと話し始めた。
「千夏、あの日お前が言ってくれたこと、ずっと考えてたんだ」
「……うん」
千夏は静かに答えたが、彼女の手は緊張で少し震えていた。
「最初は、自分がどう思ってるのか分からなくて戸惑った。でも、最近気づいたんだ。お前が俺のそばにいてくれるだけで、俺はいつも救われてたって」
悠真の言葉に、千夏の心臓が早鐘を打つように高鳴った。
「千夏、俺……お前が好きだ。ずっと幼馴染としてしか見てなかったけど、今はそれ以上の気持ちを抱いてる。お前が大切で、これからもずっと一緒にいたい」
悠真の真剣な声に、千夏の目から涙があふれた。彼女は手で顔を覆い、しばらく何も言えなかった。
「千夏……?」
「ごめん、なんか涙が止まらなくて……でも、すごく嬉しい」
千夏は顔を上げ、笑顔を見せた。その笑顔は雪よりも明るく輝いていた。
「私も、悠真と一緒にいたい。これからもずっと」
悠真は安心したように笑い、千夏の肩をそっと抱き寄せた。
見守る影
その光景を、少し離れた場所から俊が見ていた。
「やっとかよ、お前ら……」
俊は静かに微笑み、ポケットに手を突っ込むと、その場を離れた。
(千夏、悠真。お前たちが幸せなら、それでいい。俺はそれをずっと見守ってるから)
白い息を吐きながら歩く俊の背中には、どこか清々しい決意が宿っていた。
雪の終わり
悠真と千夏は、校庭で降り積もる雪の中、しばらくの間無言で寄り添っていた。二人の間に言葉は必要なかった。心が通じ合ったことで、静寂の中にも温かさがあった。
千夏がそっとつぶやいた。
「ねえ、悠真。この雪が解けても、私たちの気持ちは変わらないよね?」
「ああ、絶対に変わらない」
悠真の力強い声に、千夏は小さく頷いた。そして、二人は白い雪の中をゆっくりと歩き始めた。
空から降る雪はいつしか止み、空は澄み渡るように静かになっていた。




