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十四話 デートそのニ

「アメリー?いるかしら?」


 からんころん、と入店を知らせる鐘の音が鳴り響くと、店にいた人がピクリ、と特徴的な()()()を揺らす。


「ローゼス様?お久しぶりです……ねぇ……?」


 いわゆる、『エルフ』と呼ばれる種族は、手先が器用であり、人間の街ではエルフが作った服飾物はとても価値が高いものとして扱われる。


 そんなエルフの少女、『服飾店アメリ』の店主であるアメリは、常連客であり、違う学園に通っていながらも友達でもあるローゼスの入店を心より歓迎し────頭を傾げた。


「…………えっとぉ……そのお方は?」


 少し薄い金髪を揺らしながら、こてんと首をかしげエメラルド色の瞳をルカへ向ける。当の本人は、こんな感じの店には一切入ったことはなかったので、物珍しげに店内を見渡していた。


「ちょっとルカ。物珍しいのは分かるけど、あまりキョロキョロしないの」


「ん……あぁ、すまん。ルカだ。家名は捨てた」


(ヒェッ、もしかしてやんごとなき御方!?)


(今、さりげなくわたくしの知らないことを!?)


 二人ともそれぞれ勘違い。地味に初出な情報にビックリしながらも、こほんとローゼスは咳払いをした。


「アメリ、今日はこのルカの服を買いに来たの。少し見て回るわね」


「え、えぇ……ごゆっくり~~」


 未だにおっかなびっくりな気持ちが抜けないアメリは、少しビクビクとしながら二人の見送る。


 その際に、二人が手を繋いでいたのを見たアメリは、ピカーン!と閃いた。


(あらあら……あらあらあらあら、もしかしてそういう関係~~~?)


 ローゼスが立場の高い貴族だと言うのは知っている。そして、ルカは何か事情持ちの貴族だと勘違い中。


 アメリの中で、二人は『恋人』という関係と仮定した瞬間、ほほえま~という割合が心を占めた。


 なお、買い物終了時に「請求書はフリューゲルに」というルカの言葉に更に勘違いを加速させるアメリであった。


「似合ってますわルカ。普段からそうすればいいのに」


「これ以降多分着ないぞ……?」


「まぁ、それは困りますわ。この件が解決したら、定期的に連れ回そうかしら」


「それは本当に勘弁したいのだが」


 酷く楽しそうなローゼスに、本当に嫌そうな顔をするルカ。それを見て更にくすくすと綺麗な顔を綻ばせる。


 現在のルカは、ローゼスによるコーディネートによって見てくれだけは超絶イケメンと化している。休日ということもあり、街行く人の中には、ルカを見て目を奪われ、隣にいるローゼスを見て諦めるという悲しいことが起きていた。


「……だが、この服は動きやすくていいな」


「制服も機能性はいいですが、アメリの服は更に能性を重視してますの。動きやすさ、耐久性が抜群なのに、デザインもいいので、わたくしのような武闘派には人気ですのよ」


「ふーん」


 ちなみにだが、先程までルカが着ていた制服は、アメリが後で郵送してフリューゲルの家まで送ってくれるそうだ。


「さて、まだまだお出掛けは始まったばかりですわ!楽しんで参りましょう!」


「………おー」


 楽しむ、ということがイマイチ分からないが適当に乗っておくルカ。


 その後、二人で商業区を歩いた。小腹が空けば軽めの食べ物を食べ、ローゼスが売ってあるものに興味を示せばウィンドウショッピングとしゃれこむ。


 勿論、周りの警戒も怠ったりはしていないが、周りに人が沢山いるということもあり、こんなところでは仕掛けないだろうという思いもあってか、ルカの負担も最小限もすんだ。


 そんな感じで時間が経ち、小休憩と言ったところで、人気のない公園へとやってきた二人。噴水の縁に腰掛け、先程買った飲み物を飲む。


(……なかなか、いい雰囲気ですわよね?)


 ここまで、普通に楽しかったローゼス。チラリとルカの顔を盗み見ると、少しだけ口元が緩んでいたのを見れた。


(今なら、聞けるでしょうか)


 元々、ローゼスはルカの強さを不思議に思っていた。幼少期の頃から、独学ではあるが剣技の練習をしていたローゼスでさえ、ルカから見ればまだまだハイハイレベルなのだ。


 それに、アメリに自己紹介した時の『家名は捨てた』ということについても気になる。


 それなのに、貴族達が通う百番台以下の学園に通っている。そういう意味でも、ルカには不思議がいっぱいなのだ。


「あの……ルカ?」


「ん?」


「聞いてもいいですか?なぜ、あなたはそんなにも強さがありながら、学園ではあんな感じなのですか?」


「………………」


 一瞬、話すべきかを迷う。


 ルカは、一度死に、転生して再びこの世に生を受けた。別に、話したところで信じられない────と思ったところで、別にこの件が終われば関わることもないし、話しても構わないかと結論付ける。


 変人、と思われて距離を取られるのも、それはそれで構わない。ローゼスが、自分から剣を汚す理由が無くなり、テロ組織も隠れてルカが潰せばいいだけ。


 そう判断し、ルカは口を開いた。


「────俺は、望まれて産まれた命ではない」


 そしてローゼスは、ルカの過去を聞くことになる。

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