表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

魂身の一撃 

作者: 村山大輔

現在より二百年前。突如、人により支配されていた世界に角の生えた異生物が出現した。

 その異生物は鬼と呼ばれ人々を襲い始めた。

 人々は霊能と呼ばれる異能に覚醒し、鬼たちに対抗する。現在霊能者は鬼士と呼ばれ神出鬼没な鬼の脅威から人々を守り続けている。


 ファーン ファーン ファーン。

 赤ランプが点灯し、タイガー王国鬼士協会第3支部に鳴り響く鬼出現のサイレン。鳴り響く警告音から獄卒鬼と呼ばれる鬼が白鬼たちを率いて王国内に出現したことを意味する。

 s級鬼士クロウを筆頭に鬼士を被災地に運ぶ車、急鬼車に鬼士達が乗り込む。


 ☆_________________________________________________________

 タイガー王国中央ベンガル町。

 巨大な肉体から繰り出す拳を武器に人を襲うのは獄卒鬼。鬼の中でも上から2番目に強いとされる厄介な鬼である。

 それに従うのは白鬼や無知鬼と呼ばれる戦闘能力に長ける鬼である。


「キャー!」

 あちこちから響く人々の悲鳴。霊能を持つ国民達が能力を行使しながら鬼に対抗するが、通用しない。

「ギャオー!」

 うれしさからか、楽しさからか、獄卒鬼の遠吠えが王国内に木霊する。


「お母さん、お母さん!ねぇ誰か助けて!」

 戦闘の余波からがれきが崩れる。

 瓦礫の下敷きになってしまった小さな子供の母親。周りの大人に泣きながら助けを懇願する小さな子供。

 そんな子供に獄卒鬼の拳が襲い掛かる。

「うわー!」

 目をつぶり、手で頭を守ろうとする子供。しかし鬼の拳が子供に届くことはなかった。

 子供が恐れ恐れ目を開けると目に入るのは、2つの角に刀が刺さっている印が描かれている大きな背中。そのマークは鬼士の象徴である。

「遅れてすまなかったな!」

「う、う、うえーん」

 安堵からか、泣き出してしまう子供。

「おい、母親をがれきから助け出して子供と避難させろ‼」

「は!」

 S級鬼士クロウは近くにいた部下に指示を出し、子供のほうを向きながら笑顔でクロウは語り掛ける。

「あとは俺たちに任せろ!」

 子供にはその笑顔がとてもまぶしく見えた。

 前を向きなおし獄卒鬼をまっすぐ見ながら、クロウはトランシーバーを通し、部下に指示を出す。

「いいかよく聞けお前ら!獄卒鬼は俺がやる!B級、C級鬼士は国民の避難。A級鬼士は白鬼、無知鬼を殺れ!いいな!」

「は!」

 鬼士たちは国中に散布する。

 クロウはまっすぐ獄卒鬼を見つめ一言。

「来いよ、遊んでやる。」


 ☆_________________________________________________________

 二百年前。鬼の脅威に対し人間はなすすべがなかった。拳銃を使用しようと、爆弾を使用しようと、ある一定以上の鬼には歯が立たなかった。

 そんなときにあらわれたのが十大英雄と呼ばれる者たちである。彼らは人類で最初に霊能を使用した者たちである。

 魂を構成するのは神霊子とよばれる質量をもたない特殊粒子である。そんな粒子がもつ膨大なエネルギーそれが神霊力である。

 十大英雄たちはそんな神霊力を消費し現実に霊能を出現させることで鬼に対抗した。


 タイガー王国。南ベンガル町。

 そこでも鬼たちが暴れていた。

 そんな鬼たちをA級鬼士たちが霊能を使いながら滅ぼし続けている。

 A級鬼士たちは一流と認められたことを意味する階級である。白鬼や無知鬼ごときに負けることはない。

 そんなA級鬼士の中でも彼女レティシアは実力者であった。彼女はクロウよりアムール町の鬼の殲滅のリーダーを任されていた。

 彼女の霊能は水である。アムール町の国民たちが避難完了したことを確認し彼女は霊能を発動させる。

 水を圧縮し放つ。シンプルな技だが彼女の実力によりとてつもない水圧を誇る。

 一瞬にして無数の鬼の首が飛ぶ。

「こちらA級鬼士レティシア。アムール町の鬼を殲滅。」


 ☆_________________________________________________________


 タイガー王国東ベンガル町。

 そこで猛威を振るう鬼の殲滅リーダーはクロウの学生時代の先輩である。彼は先頭に立ち鬼を殺しつくしていた。彼の霊能は気配察知である。彼は霊能を使用することで今回、最も多くの鬼を討伐した。

「ラストー!」

 大きな声を上げ大きな剣で最後の白鬼をはねる。ニヤッと笑った後周囲を確認し鬼の気配を探る。

 鬼の気配がないことを確認した後、トランシーバーに向け討伐報告をする。

「おい!クロウ。こっちは終わったぞ!」


 ☆_________________________________________________________タイガー王国北ベンガル町。

 そこの鬼の殲滅リーダーを任されていたのはA級鬼士ウィンドである。霊能は風である。

 彼は実績を上げることで第3支部の中で最も早くA級鬼士に昇格した。今回その功績を認められ殲滅リーダーを任せられた。

 彼の手から圧縮された風を放つ。

「かまいたち!」

 大きな声をあげながら鬼たちに攻撃を浴びせてしまうのは若さゆえだろう。

 だが実力は確かである。一瞬にして鬼を殲滅し、クロウに討伐完了報告を上げる。今回一番早く報告をあげたのは彼のチームであった。


 ☆_________________________________________________________

 タイガー王国南ベンガル町。

 そこの鬼の殲滅リーダーを任されていたのはA級鬼士シュイナ。

 彼女の霊能は身体強化である。華奢な体に似合わず素晴らしい速さで鬼を狩っていく。

 彼女は今回B級鬼士を戦闘に参加させた。それは自身の部下を早く成長させたいからである。彼女が今回B級鬼士を参戦させなければ最も早く殲滅を完了させたのは彼女のチームであっただろう。


 ☆_________________________________________________________

 タイガー王国中央ベンガル町。

 S級鬼士クロウは獄卒鬼に苦戦していた。もし、クロウが本気で戦ってしまえば鬼だけでなく味方にまで被害が出てしまうからである。まわりに気を配りながらの戦闘は大変である。しかし、たった今、自身の部下からベンガル町すべての国民が避難完了したことが報告された。これはクロウのリミットが解除されることを意味する。


 S級鬼士とA級鬼士。そこにはすさまじく大きな壁がある。それはS級昇格に対し、1つ大きな条件があるからである。それは霊式の使用の可不可である。

 霊式とは神霊子に刻まれた方程式である。これの求解に成功したものがS級の領域に入るのである。

 そしてクロウは選ばれしS級鬼士である。


 ヒュ~

 民が避難し静寂な街に風の音が響き渡る。

 クロウがニヤッと笑いつぶやく。

「極次式・解 【死神来迎】」

 次の瞬間。すさまじいエネルギーがベンガル町全体に放出される。避難していなければB級鬼士ですらエネルギーに飲まれてしまっていただろう。土煙から見える影。

 そこに立っていたのは黒煙を全身から放ち、白雷を纏う骸骨であった。

 クロウの霊能は死者の神霊子を操る能力である。神霊子は膨大なエネルギーを持つ。A級鬼士ですら触れてしまえば一瞬にして塵になってしまうだろう。

クロウはその神霊子を纏う。


 死神の姿を見、獄卒鬼に滾るのは興味。自身の強さがこれに通用するのか。

「オレハゴクソツノナカデモモットモカタイオニ!ホンキデコイ!」


 死神は笑う。

「わかった!魂身の一撃をくらわしてやるよ!」


 刹那。

 死神が消え獄卒鬼が破裂した。


 死神は地を蹴ることで反動を得て獄卒鬼の前に瞬間移動し拳を振った。

 獄卒鬼には何が起こったかわからないまま死にいたったであろう。


 死神化を解除すると、後ろにA級鬼士が現れる。

『お疲れ様です。クロウ様』

 跪きながらねぎらいの言葉をかける。

「被害人数は?」

「重症1名、軽傷37名 死者なしです。獄卒鬼の出現にしては最小です。」

 代表してA級鬼士ウィンドが答える。

「そうか」

 そういってクロウは笑った。


 ☆_________________________________________________________

 あれから一月。あれから獄卒鬼以上の鬼の出現はない。だが今日この瞬間も鬼の脅威から国民を鬼士達が守っている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ