思い出の帰り道
梅雨の雨は嫌いだ。なぜなら私に嫌な事を思い出させるからだ……
「亜紀帰るよー」
「うん。」
私は友達の声に返事を返して机の上にある鞄と傘をさして帰る。友達と何気ない話をして帰宅。そして外を見る。未だに雨は降り続けていた。
2年前……私は高校へ入学して3ヶ月目でその日も雨だった。
「亜紀帰ろー」
「うん!お迎えご苦労!」
「雨だけど傘持ってきた?」
「晴太……アンタは私のお母さんなの?持ってきてるに決まってるでしょ!」
私と晴太は同い年で近所に住んでいた為良く一緒に帰ってた。
「確認しておかねぇーと亜紀は俺の傘に入ってくるだろう?俺が濡れるんだぞ!やめろよな!」
悪態を吐きながら私の前を歩く晴太は私よりも身長が小さくビビりな癖に私には強気でくる可愛い奴だ。
「いいじゃんか、それより帰りに何か食べて帰ろ!」
「いいけど、俺金持ってないぞー。」
「何よ、女の子に奢らせる気?」
「昨日、一昨日と奢らせたの誰だよ!」
「……私でした……ごめんなさい」
「ごちになりまーす。」
こんな感じでじゃれ合いながら帰っていた。しかし……今日は違った……帰り道でいつもの信号で私たちは赤信号で待っていた。そして青になりいつもは機械音で歌詞のない『とおりゃんせ』が流れる……それを合図に私たちは渡り始めるのだが。
『とお〜りゃんせ、とおりゃんせ、か〜ごのな〜かの細道じゃ〜……』
突如として子供が歌う「とおりゃんせ」が流れ出したのだ。
「な、何これ?」
「危ない!」
私が戸惑っていると晴太が私を押してきました。そして目が覚めると次は真っ暗な闇の中にいた……
「ここは……どこ?」
私は辺りを見回したけど誰も居なかった。
「晴太!?」
そして晴太の姿もなかったのです。しかし遠くからはまたもや「とおりゃんせ」が聞こえてくる。私は誰かいると思い声のする方へ歩いていく。すると子供達が2、3人駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん遊ばない?」
「ねぇねぇ、遊ぼうよー!」
「向こうにみんないるから行こ!」
みんないるというのなら晴太ももしかしたら……と思い私は藁にも縋る思いでついていく事にしました。
「誰?新しいお友達?」
「うん!向こうに居たから連れてきた!」
子供達が話してる間に私は周りを見渡したが、晴太はいなかった……そして子供達は何故か着物を着ており、鼻から上が黒く塗りつぶされてる様に見えなかった。
「そっか!じゃあ遊ぼう!」
「あの、ごめんね。私友達探してるの。だから遊んでやれないの。」
「ええー!そうなの?」
「でも、居たらここに来ると思うよ。ここにはみんないるからね。」
「そ、そうなの?」
「うん、だから遊んで待ってよー!」
こんな暗い中で遊ぶなんて危ない……だけど今は誰かと一緒に居たいという思いから私は子供達の側にいる事にしました。
「分かった……じゃあ遊ぼっか……」
「やったー!じゃあ『かごめ』やろー!」
そう言うと暗闇の中から何人かまた子供が出てきて私を囲った。
「えっ、私君たちの名前知らないんだけど……」
「大丈夫、大丈夫!ここのみんなに名前なんてないから!」
どこまでも明るい声で言うがそんな事はありえない。
「そ、そんなわけないでしょ?名前教えてよ!」
「大丈夫、お姉ちゃんも時期に忘れるから!」
「えっ?どう言う……」
それを聞こうとした瞬間、1人の子供が走ってやってきた。子供達はザワザワし始める。
「鬼がきたよ!」
「きゃー!逃げないと!」
鬼という事は鬼ごっこかかくれんぼでもしてたのかと思って私は逃げなかった……しかしそこに現れたのは……
「悪い子はいねえか!!」
ナマハゲなんてものじゃない、本物の鬼が現れたのだ!私は遅れて逃げたけど鬼は私を的に絞ったらしく追いかけてきた。
隠れる場所などない。だけど追いつかれたらどうなるか分からない。だから本気で走って逃げた。その時だった。
「こっちだ!」
聞き慣れた声に私は声のした方へ走った。そして私見つけたその手を……しかしその手は異様に大きく見えた。
「掴まれ!」
しかしその声は晴太だった。私はその手を強く掴んだ。そのまま私は引き寄せられてそのまま胸に押し付けられた。私はそのまま怖くて目を瞑った。
そうしてしばらく静かにしていると晴太が話しかけてくる。
「亜紀、目瞑ってる?」
「えっ?う、うん。」
「そのまま目を瞑ってて。帰るから。」
「目を瞑ってたら帰れるの?」
「うん。だから良いって言うまで目を瞑っててね。」
「分かった……」
私は黙って晴太の手を握った。すると晴太かは話しかけきた。
「前もこうやって帰ったな。」
「うん。あの日は遠出して帰りに私の自転車がパンクしちゃって……」
「泣いてる亜紀の手を握ってこうやって俺が前を歩いてた。」
「うん。でも、私は今は泣いてないからね!」
「そっか……大きくなったね……さぁ、着いたよ!」
「目……開けていい?」
「ちょっと待って……」
「えっ?」
晴太は握ってた私の手を離した。そして私の背中を押した。
「いいよ……またね!」
私は前に押し出されながらも振り返って晴太を見ようとした。しかし光が強まり一瞬しか見えなかったが……そこに居た晴太は顔が先程の子供たち同様鼻から上が見えなかった。しかし右腕は無くなり、左腕は腫れ上がり、両足とも膝があり得ない方向を向いていた。しかし、無理して笑ってるのだけは分かってしまった。
「ここは?」
私が目を開けると白い天井があった。そしてその隣にはお母さんとお父さんがいた。
「亜紀!目が覚めたの?」
「えっ?いたっ……」
お父さんは私が目が覚めたので急いで先生を呼びに病室を出て行った。私が起き上がろうとしたら全身に激痛が走った。
「動かないの!全身打撲で首の骨も折れてるんだから!」
全く身体が動けないけどとにかく聞きたい事があるから私は聞いた。
「晴太は……?」
「……」
この反応からなんとなく察してしまう。
「晴太くんは亡くなったわ……」
そしてそれが現実だとなると涙が出てくる……
「じゃあ……やっぱり私を迎えに来てくれたんだね。」
ことの顛末は車が信号を無視して私たちに突っ込んだらしい。私は晴太が横に突き飛ばした事により芯を捉えられていなかった。そのおかげで私は生きていた。しかし当たっていたのは確かで私は吹っ飛ばされてさらに首から落ちた事により生死の境を彷徨う羽目になったのだ。
そして晴太は私を庇った事により直撃し、さらに飛んだ方向から来る車に撥ねられて即死だったという。そしてその身体は見るも無惨なまでにズタボロだったという……
そして今……私は今雨の中を帰っている。
「亜紀はこの道使えば早いんじゃないの?」
友達が指し示すのはあの事故のあった交差点。私は雨の日はあの交差点に近づかない様にしてる。
「通りたくないの……」
そして、私はあの時の事を未だな覚えている。あの子供達が歌ってる『とおりゃんせ』を……
「次は帰れなくなるから……」
「……?」
いかがでしたか?
雨の日の帰り道はくれぐれも気をつけて下さいね。